魔法説明
この世界の住人は皆魔力を持っており、例外なく魔法を行使できる。呪文は必要としないが、その代わりに魔法陣が必要である。魔法陣を魂に刻むことによって始めて魔法が使えるようになるのだ。この魂に刻まれた魔法陣を魔力で再現することにより、魔法は発動する。
大半の人は、生まれながらに1つ適性(火・土・水・風・光・闇・無)を持っている。これを魔質と呼ぶ。訓練により自分の魔質を別の魔質へと変えることができるが、自分に近い魔質ほど習得が容易である。火と土、水と風が各々近い魔質とされている。
また、上記の魔質に適性のないものは総じて上位格魔法保持者である。
下位格の魔法とは属性魔法と特殊魔法のことを指す。
この内の属性魔法とは基礎魔法・派生魔法から構成されている。
基礎魔法とは火・土・水・風・闇・光の魔法のことを指し、もう1つの派生魔法とは、文字通り基礎魔法から派生したもので、灼熱(火)・重力(土)・氷(水)・雷(風)の魔法のことを指す。これら10個の魔法は、最下級・下級・中級・上級・特級に分かれており、各々の階級に魔法は1つずつしか存在しない。
唯一勉学によって習得できるのが、この属性魔法となる。
ただし、光属性はその性質が魔力というより神力に近く、自分の魔質が光でなければ使うことは叶わない。また逆に、光の魔質の者は他の魔法を一切使えないことも大きな特徴だと言える。
さて、次は特殊魔法だ。
これは無属性の魔法で実に様々な魔法が存在する。その数、数百とも数千とも言われており、未だに新しい魔法が発見されることもあって正確な数字は不明である。
属性魔法が最下級、下級……と区分されている様に、特殊魔法もN、R、SRの3つに分けられている。SRになる程必要魔力量が増え、逆に使用できる人数は少なくなる。
そして、この魔法は後天的に習得することことはできない。生まれながらに魔法陣が魂に刻まれているためだ。つまり同じ無属性であろうと、生まれた時に持っていなければ、一生使用することはできないのだ。
特殊魔法の最大の特徴は攻撃魔法は存在しないことだろうか。収納・転移・結界・清浄といった便利な魔法が主となる。
また、属性魔法と同じ下位格の魔法でありながら、世間一般では特殊魔法の方が上だとされている。なぜなら、特殊魔法保持者は勉学によって属性魔法を使えるようになるが、逆はできないからである。
下位格魔法
属性魔法――①基礎魔法(火・土・水・風・闇・光)
②派生魔法(灼熱・重力・氷・雷)
特殊魔法(無)
属性魔法一覧
火魔法
最下級〈灯火〉、下級〈火球〉、中級〈火柱〉、上級〈爆炎〉、特級〈滅殺炎獄〉
土魔法
最下級〈小穴〉、下級〈土球〉、中級〈土柱〉、上級〈土石流〉、特級〈泥海地獄〉
水魔法
最下級〈清水〉、下級〈水球〉、中級〈水柱〉、上級〈水渦〉、特級〈圧殺水獄〉
風魔法
最下級〈微風〉、下級〈風球〉、中級〈風柱〉、上級〈竜巻〉、特級〈絶断風獄〉
光魔法
最下級〈照明〉、下級〈回復〉、中級〈解毒〉、上級〈解呪〉、特級〈浄化〉
闇魔法
最下級〈暗視〉、下級〈影移動〉、中級〈影収納〉、上級〈精神汚染〉、特級〈傀儡〉
灼熱魔法
最下級〈加熱〉、下級〈熱球〉、中級〈灼熱柱〉、上級〈灼熱嵐〉、特級〈極小太陽〉
重力魔法
最下級〈軽減・1㎏〉、下級〈増減・己〉、中級〈増減・指定〉、上級〈増減・範囲〉、特級〈極小黒球〉
氷魔法
最下級〈冷却〉、下級〈氷球〉、中級〈氷柱〉、上級〈氷嵐〉、特級〈永遠氷獄〉
雷魔法
最下級〈静電気〉、下級〈雷球〉、中級〈雷柱〉、上級〈雷嵐〉、特級〈無限雷獄〉
特殊魔法例
(SR)長距離転移
(R)短距離転移、隷属、誓約
(N)清浄、契約、収納、付与
上位格の魔法の代表は固有魔法だ。
これは世界唯一の魔法であり、保持者の魔質もまた世界唯一となる。固有魔法保持者は大変珍しく、世界規模でみても5000人に満たないレベルである。総人口が10億を超えるこの世界に於いて、実に20万人に1人という割合となる。
異世界人の大半は固有魔法保持者であり、“大災厄”の際に召喚されたのは、これが主な理由だと言われている。
では次に、固有魔法以外の上位格の魔法について説明しよう。
特定種族が持つ種族固有魔法と、神獣が持つ世界魔法が有名だろう。
種族固有魔法の代表としては竜種が持つ竜魔法、神獣が持つ神聖魔法などが挙げられる。フェンが持つ天空魔法も魔天狼の種族固有魔法である。
世界魔法も種族固有魔法と言っても過言ではないが……個体によって持っている魔法が異なるために別に分類されている。カトレアの持つ〈氷嵐ノ世界〉とサラシアレータの持つ〈灼熱ノ世界〉が良い例だろう。
上位格魔法
固有魔法――人種が操る魔法。
種族固有魔法――特定種族が持つ固有魔法。
世界魔法――神獣が持つ魔法
ここからは下位格・上位格にも分類されない魔法の紹介だ。
その1つが種族魔法である。
この魔法の最大の特徴は、魂ではなく肉体に魔法陣に代わる紋様が刻まれていることだ。その紋様に魔力を注ぐことで発動可能となる。
他の魔法と違い、魔法陣を魔力で描く必要がないため、手足を動かすかの如く容易に発動が可能である。ルーファが普段から使用している〈飛翔〉や〈人化〉も種族魔法だ。
紋様は魔力を込めれば浮かび上がるが、使用していなければ目に見えるものではない。
かつては、自分の肉体に紋様を刻み、本来持ちえない種族魔法を得る実験も行われたが、使い続けると肉体が崩壊し、死に至ることが判明したため、現在では肉体に直接紋様を刻むことは禁止されている。
最後に、この世界の中核となっている技術・刻印魔法について述べよう。
刻印魔法とは、魔法陣を物質に刻み、その魔法陣と同属性の魔石を組み込むことで、魔力のある者であれば誰でも発動することのできる魔導技術のことである。この技術を用いた物を魔道具と呼ぶ。ただし、魔法陣によって必要魔力量が異なり、魔力の少ない者では単独で発動できないこともあるので注意が必要だ。
魂ではなく物体に魔法陣を刻むことで、改造することができ、非常に汎用性の高い技術となっている。例えばドライヤー。これは、風と灼熱の最下級魔法〈微風〉と〈加熱〉が使われている。
ヴィルヘルムが使用していた転移陣も刻印魔法である。ただし、転移系刻印魔法は国家機密となっており、その技術は公開されていない。短距離転移陣は各主要都市に配備されているが、長距離転移陣となると王城やそれに準ずる重要施設にしか配備されておらず、その警護も厳重である。技術的に遅れている国では、転移陣を保持していない国もあるほどだ。
防衛の関係上、長距離転移の特殊魔法保持者も国で保護されている。短距離転移であれば、悪用しない旨を誓約魔法で誓約し、民間で働くことも可能である。
最も魔導技術の進んでいる国は竜王国ドラグニルだ。そして最も遅れているのが、人族至上主義を掲げるアグィネス教の支配圏である。皮肉なことに教義の大黒柱である“人族至上主義”が技術力の遅れに繫がっている。
まず、長命種がいない。いや、いるにはいるが皆奴隷である。長命種が多くいる国に比べて、技術者の育成に時間と資金が多く必要なのである。
次に、叡智ある魔物などの種族魔法を持つ者がいない。例えばカメラ。これは〈思念伝達〉と〈念写〉を利用した魔道具である。念写は特殊魔法であるが、思念伝達を持っているのは魔物か神獣・聖獣ぐらいだ。つまり、種族魔法を利用した研究自体ができないのだ。
最後に、アカシックレコードの存在、これに尽きる。はっきり言ってこれは詐欺だとしか言いようがない。
“大災厄”以前に栄えた魔法帝国の技術は現代より遥かに進んでいたのだ。そう、竜種にしてみれば閲覧し放題なのである。
基本、彼らは技術などに興味はないが、一言、ヴィルヘルム様のため、と言えば喜んで協力してくれる。ただし、勇者召喚魔法の復活を警戒しているヴィルヘルム本人により、固有魔法の刻印化の方法は教えないように言われているため、深く関わってはいない。
その結果として、竜王国ドラグニルと関わりが深いドラグニル以北の国は技術力が高く、アグィネス教の勢力が強い中部から西部にかけては低くなっている。ただし、大陸最西端にある獣王国リーンハルトはドラグニルと技術交流を行っているため、一定の水準を保っている。
ルーファが向かった迷宮王国カサンドラはリーンハルトの北方に位置し、リーンハルトの友好国でもあるため、技術力は平均的であるといえよう。
国によって技術力の差が、現世と近世程に開きがあるのが現状である。
光魔法の最下級〈照明〉は特殊魔法にもあります。
光魔法の〈照明〉は弱いとはいえ聖なる光でもあるため、アンデッド避けになります。ただし、自分自身が発光するため読書には向きません(笑)
特殊魔法の〈照明〉は照明弾のように打ち上げるタイプのものです。魔道具の照明は光魔石が希少なこともあり、全て特殊魔法が使用されています。