登場キャラクター紹介
ライトノベルを読む感覚で、お気軽に『地政学』や『マクロ経済学』の基礎を学べる作品として、ご閲読頂けますと幸いです。
■上泉大和 カミイズミ・ヤマト
生真面目で礼儀正しく、心優しい好青年で、防衛高等学校に通う魔法騎士。家族愛・郷土愛・愛国心に溢れた若者で協調性も高いが、シニカルな一面も併せ持ち、堅苦しい性格のため友人は少ない。
剣術、魔法、軍学、政治学、すべてが100点満点中75点前後という中途半端な成績で、いわゆる器用貧乏。しかしながらユニークな視点と思慮深さを併せ持つため、一部の教官からは気に入られている。好きな学問は、マクロ経済学、史学、国際関係論。
ヒノモトを代表する軍人の家系・上泉の一族だが、下総上泉家という分家の生まれで、社会的地位はそれほど高いわけではない。
セルマや深雪のことを大事に思ってはいるが、未熟者の自分に女性はまだ早いと考えているため、ふたりのアプローチにはややそっけない。
■セルマ・オールステット Selma = Ahlstedt
ヒノモトに帰化し、防衛高等学校に通うウェーデン出身の槍使い。上泉家に仕える優秀なメイドで、ヤマト専属の侍女を務める。どんな形であれ、ヤマトの側に居られれば良いと考えている一途な女性で、その愛情はかなり重い。
とてもノンビリかつ、おおらかな性格で「にへらー」と締りのない表情で笑うことから、一部の男子生徒たちの間では「にへら姫」と呼ばれ、密かな人気を誇っている。
家事全般が得意で、魔法や護身術にも長けている才媛。地政学・史学・ミクロ経済学に通じているほか、四ヶ国語を自在に扱うマルチリンガルでもある。国防や外交に関しては、元外国人ならではのシビアな視点を持つ。
正規の訓練を受けているため、若い女性としては充分に強いが、体力や筋力は女性相応で、その白兵戦能力は正規兵に遠く及ばない。しかしながら魔法の技量や優れた戦術眼を考慮すると、戦闘能力総合は高いと言える。
■立花深雪 タチバナ・ミユキ
ヒノモトでも名高い武門の家柄・立花家の令嬢で、防衛高等学校に通う魔法の弓使い。
氷の矢の魔法を弓でブーストするという特殊な戦闘スタイルを確立しており、矢筒を持たない身軽な移動砲台の役割を担う。広範囲・広射程をカバーする攻撃魔法の使い手は稀少なため、戦場では重宝される。
ヤマトとは幼馴染で、館が隣接している下総上泉家と立花家は家族ぐるみの交流がある。幼少の頃、ヤマトの父が言った『将来は深雪ちゃんにお嫁に来てもらうか』という軽口を真に受け、当人はヤマトの許嫁のつもりでいる。
一見して礼儀正しく慎ましいお嬢様だが、性格は根暗で陰湿。その独占欲の強さから、ヤマトのことをなんでも把握しようとする姿勢はやや病的で、その愛情はとても重い。
■ウェンディ・エクルストン Wendy = Eccleston
上泉家に教育係として雇われたメアリー合衆国の司教で、通称・ウェンディ先生。
名目上は神学の先生だが、内実は国際情勢や海外文化をヤマトたちに教授するのが目的。表面的には礼儀正しいが実はかなりの曲者で、司教でありながら神の存在や宗教のあり方に極めて懐疑的。
父母の巡礼の旅に同行して世界中を渡り歩いた経験があり、見聞が広く世界情勢に通じている。
子供のような背丈とその若い容姿から学生に間違われやすいが、実年齢は三十代との噂もある。
戦闘スタイルは、司教と言うより格闘家であり、巨大なガントレット型の魔導兵器を操る。その椀甲に魔力を込めて放つ攻撃は文字通り一撃必殺の威力で、大鬼すら一発で沈めると豪語する。神聖魔法・格闘術共に一流の域に達しているため、前衛職としても後衛職としても立ち回れる万能型。
■奥平比叡 オクダイラ・ヒエイ
十代目・奥山休賀斎の号を継承した剣豪で、その勇名はヒノモトに轟く。
大太刀『大般若長光』の使い手で、盾を持たない一刀流。ヤマトの父親である上泉金剛とは無二の親友同士で、若い頃は前衛の比叡・後衛の金剛として活躍した。
政治学全般に通じているほか、軍略にも秀でた文武両道の軍人。剣の腕はヒノモト随一で、数々の戦功を挙げた歴戦の猛者。多くの若手軍人たちの憧れでもある。
若いパーティにおける『御守り役』であり、保護者的なスタンス。見た目は厳つく愛嬌もないが、とても心根の優しい人間であり、親友の息子であるヤマトには人一倍の愛情を注いでいる。
国防軍の行動に著しい制限を課す国防法が原因で、一人息子の『ムサシ』を亡くしており、現在はその法改正に働きかけている。
■藤林長良 フジバヤシ・ナガラ
防衛高等学校に所属している忍者で、暗殺術を得意とした棒手裏剣の使い手。隠密行動、諜報活動、錠前破り、罠看破、薬や毒の調合など何でもこなす器用な逸材で、戦場においては策略を駆使した後方攪乱も行えるクレバーなタイプ。反面、個人戦闘力はあまり高くなく、ポジションは後衛が定位置。
性格はドライ。やや横着でズボラな面も目立つが、自分の役割だけはキッチリとこなす職人肌。コミュニケーション能力が高く、人間関係の距離を適切に保つ術を身に付けているが故に、他人と深い交友を持とうとせず、顔は広いが親友と呼べる存在はヤマトのみ。
伊賀忍軍の上忍三家のひとつ藤林家の長子であり、長男。幼い頃より忍びの術を叩き込まれている生粋のエリート忍者で、厳しい教育と訓練を課せられながらも、両親に溺愛されて育った。
常に沢庵漬けを携帯しており、時と場所を選ばずバリボリと貪ることがある。
■藤林五十鈴 フジバヤシ・イスズ
防衛高等学校に所属している戦闘スキル特化型の忍者で、ナガラの妹。
細身で小さな身体からは想像もつかないほどのパワーとスピードを誇り、その白兵戦能力は校内でもトップレベル。高い身体能力と優れた反射神経を活かした近接戦闘を得意とする。反面、忍者としては不器用な部類で、諜報・隠密活動・罠作業・鍵操作などは苦手。
そのストロングな戦闘スタイルとは対照的に、性格は非常に内向的。引っ込み思案で人見知りなため、友人と呼べる存在はヤマトの妹であるシナノのみ。ヤマトに対し淡い恋心を抱いているが、その内気な性格が災いして全くアプローチできていない。
伊賀忍軍・上忍三家のひとつ藤林家の次子で、厳しい教育と訓練を課せられながらも、両親には溺愛されている。
その高い戦闘能力に比例してか、実はかなりの健啖家。
『現実主義騎士の地政学』
平和。
それは争いのない世界。
尊ぶべき理想。
しかしその理想の世界を実現するためには、現実という壁を乗り越えねばならない。
平和を勝ち取るために、力を行使せねばならぬときがある。
平和を維持するために、避けて通れぬ戦いがある。
理想と現実は相反するものではないが、両者の間には深い溝が存在するのだ。
「セル、後詰めの指揮は頼んだよ」
「はい。承りました、ヤマト様」
若者の言葉を受け、少女は恭しく一礼する。
その表情は僅かに憂いを帯びてはいるが、すぐに気を取り直したかのように明るい笑みを作って見せる。彼女の主人に対する想いは、憂慮よりも信頼のほうが勝るのだろう。
「歩兵は衡軛の陣形を維持したまま、オールステット兵長の指揮に従い前進」
ヤマトは矢継ぎ早に号令を発する。
その指示は淀みなく、一切の迷いが無い。
「騎兵および、竜騎兵は全力で我に続け!」
その凛とした声が暗い森に響くと、兵士たちは一斉に鬨の声を上げる。ヤマトを先頭とした騎兵部隊は、敵軍追撃のために全力で進軍を開始した。
彼らは戦い続ける。
愛すべき国家を守るために。
愛すべき家族を守るために。
そして……愛する人を守るために。