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ー 亡国 ー
――― 終わったのか。
硝煙の匂いが漂う中で。
折り重なる死体を見渡しながらぼんやりと思った。
生き残った事に対する安堵感。
血の匂い、それにまじる鉄の匂いを嗅ぎながら
死んでいった者に対する罪悪感が生まれる。
俺は自分が生まれて生きたこの国を愛していたとは思わない。
別に愛していなかった。
否応なしに俺を戦場に押し込んだこの国を。
恨んでいたはずだった。
ーこの瞬間までは。
何もかも無くなるのか。
そこにあった景色も。
俺たちが生きていたこの国も。
戦争の中で一生懸命生きていた民も。
そう思った瞬間に生まれた苦い感情を
俺は忘れることは出来ないだろう。