ー完熟の章 4- 俺の貢献は天ぷらそば
災い転じて福と為すと言う言葉がある。
この場合は、怨霊転じて福の神と成ると言ったところなのだろうか?うーん。
「てか、恨みをこの世に残して、怨霊になって、大変だったて人物自体、聞いたことないんだけど?」
「ええええ?!さすがに私でも、彦助の馬鹿っぷりには、ドン引きするわ。あんた、世間を知らないのにもほどがあるわよ?」
椿が、この世で一番の馬鹿を見たかのような驚きの表情を作っている。なんだ?そんなに俺は、やばいのか?
「もしかしたら、ひのもとの国の人間で、このことを知らないのは、産まれたての赤子か、彦助殿くらいかも、知れま、せんよ?」
まじかよ。俺の頭の悪さは、ひのもとの国、一番クラスなのかよ。
「彦助って、天神さまって知っているんだぶひいか?」
「天神さまってのは確か、ううん、菅原ぶんた?」
「だれよ、菅原ぶんたって。菅原道真でしょうが」
「ちょっと、ボケただけだよ、気にすんなって。で、菅原道真って、学問の神さまだったっけ。九州の大宰府に飛ばされたってやつだろ。それくらい知っているさ」
「なんで、そこまで知ってて、菅原道真が怨霊から神さまに転じたってのは知らないんだい?私は不思議でならないよ」
「そんなこと言われたって、日本史の教科書には、菅原道真が怨霊になりましたなんて、1字1句も書かれてなかったんだぜ。それで知らないのが馬鹿だって言われても、俺の責任じゃないと思うんだよな」
「日本史のキョウカ書?ううん、よくわからない本を読んで、勉強してたん、ですか?彦助殿は」
秀吉がそう尋ねてくる。よくわからないというか、まあ、この時代の人間にとっては、そうなんだろうけど、現代では日本国内で高校生たちが普通に勉強に使ってる本なんだけどなあ。
学術レベル的には、現代の時代ってのは日本の歴史上、最高レベルだと思っているんだけど、ほんと、この時代に飛ばされてから、まともに日本史の教科書が役に立った覚えがないんだけど。
この国の教育は大丈夫なのか?まあ、元の時代に戻れるかわからんので、心配したところで無意味なんだけどな。
「彦助は博識のようでいて、聞いてみたら、中身が全然、間違っていて全くもって当てにならないんだぶひい。唯一、役に立ったことなんて、天ぷらそばだけなんだぶひい」
「俺の価値って、もしかして、今のところ、天ぷらそばを皆に教えたことだけ?」
「非常に言いにくいんですが、彦助殿から教えてもらったことで役に立ったことと言われれば、その通り、です」
「弥助は、先ほどの、八百万の神々について、心を洗われた気分だったのデスガ、彦助さんが椿さんに神道の解説を聞きまくっているあたり、ひょっとして弥助を騙そうとしているのではと、今は疑っているのデス」
「お、俺は、弥助を騙したりなんかしてないよ?デウスも、ひのもとの国では、神さまのひとり。これは変わらない真実デス」
「神さまはひとり、ふたりとは数えずに、1柱って言うのよ。でも、そんな細かいことは置いといて、彦助の言い分は正しいから、弥助を騙そうとしていないってことは確かだと思うよ」
なんか、椿から謎の肩入れをしてもらっているが、ますます、本当は適当なことを言っていたなんて言いづらくなるだけなんで、結構、心がずきずきとしていたりする。
「ふうむ。彦助さんはともかくとして、熱田神宮の巫女である椿さんたちがそう言うのであれば、弥助は疑うのはよすのデス」
「ま、まあ。済んだ話はいいじゃないか。ところで、天神さまが元は怨霊だったての話を詳しく教えてくれよ」
「まあ、自分の知らないことを、ひとに素直に聞けるところは、彦助のいいところだよね」
ん?そんなもんか?知らないことをひとに聞くのは普通だろ。逆に知らないままにしておくほうが、あとあと、自分のためにならなくね?
「そうでもないわよ。知らない、わからないのに、知ったふりをするひとなんて、結構、いるものよ」
「菜々も、知らないこととか、わからないことは、椿や風花によく教えてもらっているもんねー」
「菜々。あんたは聞くのはいいけど、自分で調べてみることもしなさいよ?私と風花だって、いつでも相手をしていられるってわけにはいかない時もあるんだからね」
「ええ?自分で調べたって、調べ方自体が間違ってたら、時間の無駄じゃないー?それなら最初から聞いた方が早いじゃないー?」
それもそうだよな。自分で調べてみて、それで解決するならまだしも、結局、分からずじまいだったら、ただの時間の無駄遣いだもんな。菜々さんにしては、良いことを言うもんだな。
「んー。菜々にしてはめずらしく説得力のある言い方ね。誰からそんな要らない知恵を学んだのかしら。まあ、いいわ。で、天神さまの話にもどるわね」
俺は、うんうんと椿に対してうなずく。
「菅原道真は、藤原時平と朝廷内の出世争いで、ライバル関係にあったわけね。で、藤原時平は菅原道真の悪評を朝廷内に流すことによって、彼を九州の大宰府に転勤させることに成功したのよ」
「だけど、菅原道真ってやつは文才に優れていて、そのまま天満宮ってところで天神さまに祀られるほどになったんだろ?」
「最終的にはそうだけど、そこまでの過程を飛ばしすぎなのよ。なんで、彦助は、その大事な過程がすっぽり抜け落ちてるのかしら?」




