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ー完熟の章 3- 三種の神器

「まあ、彦助ひこすけの馬鹿は、この際、無視するとして、続きを言うわよ」


 俺は、右ストレートを喰らった左頬をさすりながら、椿の話の続きを聞くことにした。


「ひのもとの国の神さまは恋愛に関しては、意外とだけど、たくさん物語があるわけ。だから、恋愛成就のご利益を宣伝している神社も多いのよね」


「なるほどね。神社の恋愛成就のお守りって、なんで、どこいってもあるんだなあと思ったら、そういう理由があるわけかあ」


「まあ、昨今は見合い話からの結婚も多いぶひいけど、好き同士で結婚するひともいるから、そういう人たちにはうってつけのご利益なんだぶひい」


「あれ?でも、熱田神宮って、恋愛成就のご利益はないわけ?」


 椿が俺の言いにううんと唸る。


「熱田神宮は天叢雲剣あまのむらくものつるぎ、別名・草薙剣くさなぎのつるぎと呼ばれている、三種の神器のひとつを御神体として奉っているのね。だから、どちらかというと、恋愛うんぬんよりは、いくさの戦勝祈願とか、そっちのほうが主軸になっているのよ」


 ふうん、なるほどなあと思う。


 天叢雲剣あまのむらくものつるぎとか草薙剣くさなぎのつるぎと言えば、ゲームではよく出てくるから、無知な俺でも知っているくらいだ。


 それが、まさか、自分の地元の熱田神宮で御神体として奉られているとは思わなかったわ。


「じゃあさ。熱田神宮にいけば、その草薙剣くさなぎのつるぎを実際に見ることができるわけ?」


「何、言ってるのよ。三種の神器って言うのは、みかどが所持しているに決まっているじゃない」


 え?どういうこと?


みかどみかどである証明は、三種の神器を持っていることなのよ。それなのに、その本物がまあ、正確に言うと違うんだけど、あるわけがないじゃない」


 ふーん。じゃあ、本物があるわけじゃないのに御神体として奉ってるのかあ。なんかややこしいな。


「御神体の草薙剣くさなぎのつるぎは、実際に無いんだけど、鎌倉の幕府を開いた、源頼朝みなもとのよりともさまや、足利の幕府の祖、足利尊氏あしかがたかうじさまが剣を奉納されているの」


「ああ、その2人なら知っているぜ。いざ鎌倉とか、1000人で10万の軍勢を退けったってやつ」


「いざ鎌倉はあっているけど、1000人で10万人とやりあったのは、楠木正成くすのきまさしげッス。おしいけど違うッス」


 利家としいえのやつが、俺につっこみを入れてくる。


「あれ?そうだっけ。ううん」


「まあ、彦助ひこすけにしては物知りッスね。普通の農民上がりにしてはッスけど。楠木正成くすのきまさしげ足利尊氏あしかがたかうじの仲間でもあり、のちのライバルッス」


「あの辺の時代ってややこしいんだよなあ。朝廷が南北に分かれたりとかだったっけ。誰がどっちの勢力に加担してたとか、もう忘れちゃった」


「まあ、俺でもよくわかってないッスから、彦助ひこすけがわからないのは当然ッス。三種の神器が話に出たついでに言うッスけど、その神器も南北両方で、分かれて持っていたッス」


「あれ?じゃあ、天皇が2人いて、神器を分かれて持っていたってことは、天皇としての証明はどうなるんだ?」


「なかなかするどいッスね。どっちにもみかどとしての証明品を持っていたから、どっちも正統なみかどだと主張したんッスよ、あの時代は」


「んん?話がよくわからん。三種の神器を全部、もっているからこそ、天皇として正統だって言えるんじゃねえの?」


「そうッス。だから、あの辺の時代のみかどの正統性は判断が難しいんッスよ。まあ、面白いことに、統一されたときに南北両方とも正統だったってことで話は済んでいるッスけどね」


「ふーん。まあ、どっちも正統って言われるなら、恨みっこなしで良いんじゃねえの?」


「そうッス。まさに恨みっこなしなんッスよ。恨みを生み出さないことが、ひのもとの国では大事なことなんッスよ」


「恨みを生み出さない?だって、南北に分かれて、実際に争いが起きたんだし、恨みは絶対に残るもんだろ?」


「ひとは恨みを残して死ねば、怨霊になるッス。でも、恨みを解消すれば、怨霊にはならないんッス」


 恨み?怨霊?関連性がいまいちわからないぞ。


彦助ひこすけ殿は、世間からよっぽど隔離されていたの、ですね。こんな常識すら持ち合わせていないとは、さすがに思いも知りません、でした」


 あれ。ひでよしに、俺、こき下ろされている気がするぞ。


「幽霊さんが成仏できないのはこの世に未練があるから、です。でも、幽霊さん全員が怨霊というわけではありま、せん。恨みを抱いたひとが怨霊になるの、です」


「怨霊っていうものになったからと言って、何か困ることでもあるのか?」


「大有りッス。厄介なものになると、国が亡びるくらいにやばいッス。だから、みかどが恨みを残さないように、どっちも正統だってことにしたんッス」


「神社って言うのは、そういう、恨みを残して死んだ人を神さまに奉っているとこもあるのよ」


「え?椿。そんな恨みつらみな人を神さまなんかにしていいのか?」


「当然じゃない。そうすることで、その人は浮かばれるんだから。そして、ご利益のある神さまに産まれ変わるんだから、神社としても儲けものなのよ」


 ううん。日本の恨みメカニズムがよくわからん。恨みを残して死んだ人が、神社に神さまとして奉られたからと言って、善人、いや、善神になるものなのか?

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