ー完熟の章 2- いざなぎ いざなみ
そもそも、現代からこの時代に俺を転生させた神さま、いや?もしかして、女神さま?ううん、こんな世知辛い世の中に飛ばしてくれたんだ。悪魔かも知れない。
とりあえず、神さまとしておこう。その神さまが、俺にチート能力を与えないどころか、可愛い彼女を作る仕事まで放棄している可能性が出てきたわけだ。
んん。神さま。放置プレイはお辞めください。織田家に仕官できたことは感謝いたしますが、仕事だけでは、つらいのです。
やはり、仕事も出来て、彼女がいて、その彼女とは行く行くは結婚したいのですよ。まだ、数えで19歳の若造ですが。
「オウ、彦助さん。ワタシはデウスを信じることで彼氏は出来たのです。あなたも入信すれば、きっと、素敵な彼氏ができるのデス」
ちょっと、黙っとけ、弥助。そして、俺の心を読むのは辞めろ。
「とりあえず、まだ、朝、米俵を担ぎながら、食パンを口にくわえた美少女と、町の角でぶつかるようなイベントは未消化なんだ。きっと、神さまがそういうフラグを準備していてくれいるはずなんだ」
「食パンをくわえた美少女がいるかどうかはつっこまないとしてだぶひい。もし、その娘とぶつかったと仮定すんだぶひい」
「ん。田中。お前にしては珍しく、俺の妄想を止めないんだな」
「たまには付き合ってやるのも悪くないと思ったんだぶひい。で、話の続きなんだぶひいけど、彦助が20キロの米俵をかついでるって話だぶひいよね」
「ああ、そうだ。それで、食パンをくわえた女の子とぶつかるんだ。そこから恋が芽生えるっていう筋書きだ」
田中がううんと唸っている。
「でも、お前。いつもへろへろになりながら、米俵を担いでいるくせに、そこに娘がぶつかってきたら、どうなるか想像がつかないんだぶひいか?」
「え?どういうこと?」
「田中さんが言いたいことがわかりま、した。彦助殿は、ぶつかった衝撃で、米俵を落としてしまうの、です」
「まあ、20キロの米俵を担いでるもんな。そりゃぶつかりゃ、米俵なんて、落としちまうわ」
「その落とした米俵の行き先が問題なの、ですよ。彦助殿が、その米俵の下敷きになるならともかくと、して」
あっ!このシチュエーション、やべえじゃねえか。
「何かの間違いで、その美少女の上に米俵を落としちまうって、田中は言いたいわけか!」
「そういうことなんだぶひい。人身事故もはなはだしい、悲惨な結末が待っているんだぶひい」
「うっわ、こわ。出会いのイベントのはずが、いきなり、美少女とのお別れになる可能性だってあるじゃん。神さま、このイベント、禁止!」
「オウ、彦助さん。神さまに一度、願ったことは取り下げできないのデス。それが神さまのルールなのデス」
「神さま、融通、利かなさすぎだろ。って、デウスのことかよ。八百万の神さまなら、きっと訂正可能だろ。そうだろ、椿」
椿がいきなり、俺にそう問われ、ううんと唸る。
「確かに、ひのもとの国の神さまは、融通は利くほうではあると思うんだけど」
よっし。それなら、オーケー。さすが、日いずる国の神々だぜ。
「彦助は少し、ひのもとの国の神さまについて、あまり詳しく知らないようだから言うけど、古事記って読んだことある?」
「古事記?日本の神さまについて、いろいろと書いてある本だったっけ。確か、天照が、この国の最高神だって話だろ?それが天岩戸に隠れて、なんか、力持ちの神さまが、その入り口の岩をどかしたってやつ」
「ああ、そんな話も載っているね。さすがに、馬鹿の彦助でも知っているわよね。それはさすがに常識だから」
なんか棘のある言い方にカチンときそうになるが、ここは黙って、話の続きを聞こう。
「古事記って言うのは、詳しく知らないひとには意外かも知れないけど、神さまが他の神さまと恋愛して、結婚して、子供を産むとか、そういうのが結構、書かれているのよ」
ふんふん、そうなんだ、それは知らんかった。てっきり、嘘か本当かわからん話をまとめただけのものかと思ってたわ。
「このひのもとの国を作ってくださった、伊弉諾尊と伊弉冉尊も聞いたことあるわよね。あれも、男神、女神との恋愛が元なのよ」
「いざなぎと、いざなみの名前は聞いたことあるけど、そんな話まで載ってるのか」
「まあ、その2柱が天沼矛を海に突き刺して、かき混ぜて、本州、淡路を含めて八州を作ってくださったわけ。そのあとは、ごにょごにょして、子供が生まれたりとか」
「ん?ごにょごにょって何?」
椿は急に顔を真っ赤にして言う。
「うっさいわね。そんなこと、気にしなくていいのよ。とりあえず、古事記には、そういった、神さま同士の恋愛が描かれてるわけなのよ」
「で、ごにょごにょって何?」
「彦助。それを真昼間から、女性に聞くのは失礼なんだぶひい。子供を作る方法は、神さまも人間も変わりないんだぶひい」
「ああ!まぐわいか」
俺は、そう叫んだと同時に、椿に右の拳からの顔面ストレートを直撃させられたのである。
「こいつ、本当に、学習しないわね。一度、痛い目にあったらいいのに」
痛い目なら今、まさに喰らいましたけど。




