表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/364

ー熟成の章 3- 夢を預ける者 夢を守る者

 俺は自分の産まれてから今までの価値観を粉々に砕かれる音を聞いた気がする。


「ひでよし、利家としいえ。お前たちはなんで、そこまで自分の命や他人の命を軽く、捨てることができるんだよ!」


彦助ひこすけ。それは違うッス。俺は自分の命と皆の命が軽いなんて思ったことはないッスよ。でも、男は、死んでも守らなけばならないものと、それとは別に死んではいけない時があるッス」


「そうです。彦助ひこすけ殿。私もそうです。私には叶えたい夢があります」


「ひでよし、お前は、腹いっぱい白い米のメシを毎日、家族といっしょにたべるんだろ!」


「でも、その夢を叶えるには、信長さまに死んでもらっては、叶えることはできま、せん。私は信長さまを守るためなら、命は惜しくはありません」


「なんだよ、それ。矛盾してるじゃねえか。生きたいなら生きれよ。信長なんか関係ねえ!ひでよし、お前が生きたいと思えば、逃げてでも生きれ」


「それはできま、せん。彦助ひこすけ殿には、夢があるんですよね?」


「ああ、一国一城の主だ。それがなんか関係あるのかよ」


「信長さまが死ねば、彦助ひこすけ殿の夢が潰えます。私は親友である彦助ひこすけ殿の夢が叶わなくなるのは、いやなの、です」


「なん、なん、ななな」


 俺は口から言葉を上手く、発せなくなる。


「もし、私が戦場で命を散らすことになった場合は、彦助ひこすけ殿、私の夢を、私に代わって成し遂げていただけま、せんか?」


「お、俺がかわりになって、も、いみが、ない、じゃないか!」


「いいえ。意味はあります。男が男に夢を託すのです。それを託された男には、その夢を叶える義務があり、ます。命は散れども、夢は消えません。いつか、きっと、誰かが代わりに成し遂げてくれるのです」


「それが、信長だって言うのかよ、お前たち、2人は!」


 いきどおる、俺の右肩をぐいっと掴むものがいる。だれだよと思い、俺は右を向く。そして、振り向きざまに、横顔をつっぱりで吹き飛ばされる。


「田中、てめえ、何しやがる!」


 つっぱりをかましてきたのは、田中である。


「1国1城の主になろうとしているやつが、ぴいぴいわめくんじゃないんだぶひい!いいか、彦助ひこすけ。ひでよしがお前に夢を託すと言っているんだぶひい。なら、託されてやるの一言くらい言えないのかだぶひい」


 俺は、顔を斜め下に向け、ぐっと唸る。


「だけどよ。だけど、俺は親友のひでよしの命をもらってまで、夢を叶えるとかそんな覚悟は、ない」


 ちっと田中が舌打ちをする。


「1国1城の主になるのが夢だと聞いたときは、この馬鹿は本当になる気なのかと、少しでも期待した僕が馬鹿だったぶひい」


「え?田中、それ、どういうことだよ」


「わからないだぶひいか。お前の夢を叶えるためなら、僕たちが力を貸してやるってことだぶひい」


「なんで、お前ら、俺の夢のために、そこまでしてくれるんだよ」


弥助やすけは思うのデス。彦助ひこすけさんは水臭いのデスヨ。彦助ひこすけさんの夢は、みんなの夢なのデス。もちろん、ひでよしさん、田中さん、もちろんワタシの夢は、みんなの夢デス」


「命を賭けて、みんなの夢を叶えるんだぶひい。僕たち、親友じゃないのかだぶひい。親友の夢くらい、叶える手伝いをさせるんだぶひい」


 俺は、皆が言わんとしていることが、なんとなくわかってきた。


「へへっ、そういうことかよ」


 皆が皆の夢を叶えるために、命を賭け合う。その集大成が、信長の存在ってわけかよ。ああ、わかったよ、神様、俺がやらなきゃならないことがわかったぜ。


「俺の一国一城の主の夢は、なしにしてくれないか」


「え、彦助ひこすけ殿、それは一体、どういうこと、ですか?」


「まあ、続きを聞いてくれ。俺には新しい夢ができた」


「ふうん。どうせ、くだらないことだろうぶひいけど、聞いてやるんだぶひい」


「俺は」


 ここまで言い、一度、大きく息を吸い込む。


「俺は!ひでよし、田中、弥助やすけ。お前たちが夢を叶えるようになることが、俺の新しい夢だ」


「オウ、弥助やすけには、よくわかりまセン」


「俺は、ひでよし、田中、弥助やすけ、それに信長の命を守ってやるって言ってんだよ。夢を守るために命を守る。それが俺の夢だ」


「大きく出たッスね。ひでよしたちだけじゃなくて、信長さまも守るって言うッスか」


「ああ、利家としいえ。お前の命も、俺が守ってやるぜ。利家としいえも叶えたい夢が、もちろんあるんだろ?」


「そりゃ、当然ッス。でも、彦助ひこすけ、お前にそれができるッスか?」


「今はできない。そりゃ、訓練しはじめて、まだ3週間で、先日のいくさが初陣だったからな。自分の力の無さを痛感したばかりだぜ」


「ははっ。こいつは面白いッス。それなのに、皆を守って見せると言うッスか!」


 利家としいえが豪快に笑っている。へっ、笑っているがいいぜ。将来、俺は、すげえことをしてやるからな。


「俺に期待してくれよ。悪いようにはしないからな。きっと、皆の夢を守れる男になってやるぜ」


「こりゃ、良いッス。さすが、信長さまが見込んだだけの男では、あるッス。皆に夢を預けられる立場ではなくて、守る立場ッスか。その夢、叶うかどうか、しっかり見させてもらうッスよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ