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ー芳醇の章 7- 運命の再会

 俺たちは男5人と女性3人でぞろぞろと、カブキ者の服が売っているという店に向かうことになったわけなのだが、果たして、こんな大所帯で尋ねていっていいものかと思案してしまう。


「ついたッスよ。ここが津島の町で一番、流行りものが置いてある店ッス」


「へー、ここが傾奇専門店ってわけかあ。おいみろ、田中。しめ縄が置いてあるぞ」


「ほんとだぶひい。色とりどりなのがあって、目移りしちゃうんだぶひい」


 しめ縄は、赤と白、黒と黄色、紫と緑といった、2色を結い合わせたもの等がある。しっかし、これは見事に目立つなあ。


 田中がさっそく店主と相談し、しめ縄を何本か腰に巻こうとしている。弥助やすけが着つけの手伝いをしながら四苦八苦しているのであった。


弥助やすけ、しめ縄は腰で大きく、ちょうちょ結びにするッス。派手さがさらに際立つッス」


 女衆も物珍しさゆえか、いろいろと物色をしている。店主に聞くところによると、女性用の小物なども置いているらしい。


「うわあ。この胸の開き具合。すごいじゃないのー。こんなの着たら、おっぱい丸見えだよー」


「お若いお嬢さんたち、着てみないかい?女もかぶいて見せるってのがこの店の信条だ」


「ですが、さすがにこんなに胸が強調される服はちょっと。ねえ、椿さん、着て見てはいかが?」


「いやよ!彦助ひこすけがまたエロい顔して、私の胸を凝視するに決まっているでしょ」


「あれー?胸を見られてるって自覚はあったんだー。椿は無頓着なわりには、彦助ひこすけくんの視線は感じてたんだねー」


 え、いつもこっそり、椿さまのご立派さまを見ているのがばれていた…だと。


「弓の訓練の最中だって、隙あらば、凝視してるんだよ。こんなの着たら、どうなることかわかったもんじゃないわ」


 ええええ。ばれずに眼福、眼福とチラ見してただけなんだけど、俺、そんなに凝視してた?


「見られて減るもんじゃないから、いつもは相手にしてないんだけど、さすがにこんなのは着れないかな」


 があああん。俺は、俺は。この先、一体、どうやって、ご立派さまを盗み見すればいいんだ。俺はがっくりと肩を落とした。いや、こんなアクションとってるから、ばれるんだよ。しっかりしろ。これからは堂々と見ればいい。


「うーん。相撲取りの着るような浴衣の上から、しめ縄をしても、どうにも色が映えないッスね。おっちゃん、服も試着させてくれッスよ」


「僕の身体のサイズにあう服があるぶひいかねえ。服の前を閉じれない気がするんだぶひい」


「そういうのは、前を開けとくッスよ。羽織るように着て、前を開けて、しめ縄をするッス」


 田中は利家としいえの着せ替え人形にされているようだ。そして、ひでよしと言えば、こっちのほうはこっちのほうで


「うわあ、ぶかぶかなの、です。上着が長すぎて、地面につきそうなん、です」


「きっちり着込まなくていいッス。帯で締めて、上のほうで長さを調整するッス」


 利家としいえが店内せましとばかりに、飛び跳ねている。よっぽどカブキ仲間が増えるのが嬉しいのか、楽しそうではある。


 俺も何か試着させてもらおうかなと、店内を探ってみることにした。


「あれ?この服、どっかで見たことあるぞ、って、あああああ!」


「お、旦那。いいものに目つけたじゃないか。それは南蛮渡来から流れてきた服でな。それに刺繍をほどこして、さらにかぶいてみたってわけさ」


 その服は俺が現代から着てきた、制服じゃねえか!盗まれて、どこいったかと思えば、こんなところに売られていたのかよ。


「おっちゃん。この服、俺んだよ!」


「ああ?何、馬鹿なこと言ってやがる。新手の俺の俺の詐欺か?因縁つけてんじゃねえよ」


 俺は、おそるおそる、制服を手にもつ。ああ、この肌触り、匂い、そして、この黒い色。こんなところにお前は流れ着いたのか。


 俺はつい、その制服を抱きしめてしまう。ああ、もう会えないとおもってたよ。さあ、俺と一緒にお家に帰ろう。


「あんた、それが気にいったのかい?」


 店主がそう俺に尋ねてくる。


「ああ、これは俺の分身だ。手放すことは出来やしない」


 俺は、制服の上着の後ろを見る。そして、愕然としてしまった。


「なんじゃこりゃああああ。天上天下唯我独尊ってえええええ!」


「おう。苦労したぜ。俺の作品の中では、ここ一番の出来だ。どうだ、かぶいてるだろお?」


 かぶかなくていいんだよ!俺の青春がつまった制服に、こいつ、なにしやがる。くっそ、この糸、はぎとれねえかな。だめだ、職人技で縫い込まれてやがる。こんなものに、日本の誇るオーバーテクノロジーなんか、発揮しなくていいんだよ。


「おい、おっちゃん、この服いくらすんだ?」


 仕方ない。面影は大分なくなったが、思い出の品であることは変わらない。ここは元々、自分の物ではあるが、買い取ることにしよう。


「お、買う気になったのか?でも、旦那。金は持っているんかい?」


「ううん。あんまり持ってないけど、一応、聞かせてくれ」


「そいつは、10貫だ。年季の入った職人による刺繍に南蛮渡来の品だからな。びた一文まける気はないぞ」


 10貫!現代の日本円に換算すれば、100まんえーーーん。高々、元が数万円のものが、どう生まれ変わったら、お前、100万円になってんだよ。


「くっ。金がない」


「なんだ、冷やかしかよ。金が出来たら、また来るんだな」


 店主はあきれた顔をして、向こうできゃあきゃあ言っている、女性陣のほうに向かって行った。


 くっそ、すまねえ。俺の制服よ。いつか、出世したら、買い取りしてやるから、売れずにそのまま残っていてくれよ!

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