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ー芳醇の章 3- ふんどしの色は白に限る

「で、田中さんたちは、今日は一体、どうしたのですか?兵士を辞めて、大道芸の訓練でしょうか」


 風花さんが田中に尋ねている。田中、いいなあ。俺も風花さんに声をかけられたい。


「大道芸の訓練をしているわけじゃないんだぶひい。今日は休養日だから、津島の町を探索しに来たんだぶひい」


 おやおやと風花さんが言っている。


「なら、探索ついでに一緒に町を回りませんか?私たちも殿方と一緒なら、知らない方から声をかけられることもないでしょうから」


 え、いいの!風花さんなら大歓迎。俺は心が躍りそうになる。


「声をかけてもらって、うれしいんだぶひい。だけど、これから寄るところは、風花さんに見られると恥ずかしいんだぶひい」


「あらあら。田中さんが恥ずかしがるなんて、どんなとこなのかしら。俄然、興味が湧いてくるのですわ」


 あれ、そう言えば、この後、どこ行くんだっけ、確か。


「ううん。ふんどし屋さんに行くつもりだったんだぶひい。この前の合戦で、お気に入りのふんどしが裂けちゃったんだぶひい」


 まあ、と風花さんが声を出す。


「殿方の下着ですか。それは困りましたわ」


「別にいいんじゃないー?裂けたふんどしをつけるほうが、かわいそうだし、わたしも良いの探すの手伝うよー?」


 菜々がそう言う。ううん、女性というのは男性用の下着を見ることに抵抗がないのかなあ。まあ、ふんどし一丁で町を練り歩くやつなんざ、捨てるほどいるからなあ。いや、菜々さん、特殊だからなあ。


「そういえば、ふんどしでも、きやびらかなのをつけるのが最近、流行りみたい、ですね」


 ひでよしがそう言う。


「例えば、どんなのが流行っているんだ?ひでよし」


 俺は疑問に思い、そう尋ねた。


「ええとですね。漢字を一文字とか、金色の刺繍を凝らした紋様柄とかですか、ね。【漢】とか【海】とか、私も憧れてしまい、ます」


「ふむふむ。そういうのって、奇をてらいすぎて、すべってるやつとかいそうだなあ」


「中には【金】とか【女】とかもありますね、確かに。あれって、本人は面白いと思っているの、でしょうか」


 ひでよしがなかなかに辛辣なことを言っている。現代だと、【焼肉】とか【カルビ】なんていうティーシャツを着てるやつもいたなあ。誰だっけ。まあ、名前を忘れるんだ。たいした人物じゃないだろう、うんうん。


弥助やすけは知っているのデス。そういう派手好みなひとをカブキ者というそうなのデス。彼らは好きこのんで、派手な恰好をしているのデス。ほら、弥助やすけたちの主君の信長さまも、そうでしょう?」


「確かに、半ズボンみたいな袴に虎の毛皮を肩から腰にかけて、巻いてるけど、さすがにふんどしは普通だったじゃねえか」


「それもそうデスネ。しかも、色も普通に白でしたね。今朝、見たときは」


 信長は、きちょうなる人物を連れ込んで、俺たちの宿舎でいいことをしていたわけだが、その時、見たくはないが、信長のふんどしが白いことは確認済みだ。


「なんかイメージと違うよな。カブキ者なら、ふんどしも派手だと思うんだけどなあ」


「ああ、それは多分、信長さまが武士だからだよ」


 椿が俺たちの会話に入ってくる。


「ああ言う、偉い方っていうのは、いつ叱責を受けて、腹を切ることになるか、わからないからね。いつでも恥にならないよう、きれいな白いふんどしを身に着けるもんなんだよ」


 ふうんと、椿以外の皆が感心する。


「そんなムダ知識、どこで手に入れてるんだ、椿」


「以前、武士気取りの馬鹿が、とうとうと私に説明してきたんだよ。私だって別に知りたくて知ったことじゃないからね」


「ふうん。ふんどしの自慢話をしてくるような武士さんかー。誰だろー?」


「うーッス。ひでよし、何してるんッスか?この往来のど真ん中で」


 ん、この声は、確か、信長の腰ぎんちゃくの


「あ、利家としいえさん、どうしたん、ですか?今日は休養日でした、よね」


「そうッスよ。だから、今日は、おにゅうのふんどしを買いにいくことにしたッスよ」


「げっ、利家としいえさん。なんで、ここにいんのよ」


「お、椿さんじゃないッスか。おッス。おッス。元気にしてたッスか?」


 あれ?2人は親し気だけど、何かあんのか?


「なあ、利家としいえ。椿のこと、知ってるのか?」


「さんをつけろッス。まあいいか、非番の日まで偉ぶるほど、器が小さいわけじゃないッスから、見逃しておくッス。で、椿は以前、俺と付き合ってもらったことがあるッス」


 えええええと、皆が驚きの声を出す。


「どういうことなのー。椿。きみに男がいたなんて、初耳だよー」


 菜々が驚いている。それは俺も同じだ。よりにもよって、こんな優男のどこがいいんだ。伸長は確かに、175センチメートルと、この時代では高伸長に入る部類だ。顔もくやしいが、童顔のイケメンに近い。


「ちょっと、利家としいえさん!皆が勘違いするようなことを言うんじゃないわよ。ただ単に、ふんどし屋に行って、見繕うのを手伝って、そのお礼に、ご飯をおごってもらっただけでしょ」


 それって、立派なデートだと思うんですが、椿さま、わかっておられますか?


「んん?男女が一緒に買い物に行って、ご飯を食べたら、付き合うってことにならないんッスか?」


「そう、ですね。私は女性とつきあったことがないので、よくわからないですが、多分、間違ってないような、ううん」


 ひでよしが唸っている。まあ、俺も女性とお付き合いした経験はゼロだ。男女の付き合いの始まりがどこからなのかは、よくわからん。

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