ー芳醇の章 2- 田中のもみごこち
男は何故、おっぱいに釘づけになるのであろう。俺は、田中の胸と椿のご立派さまを見比べる。やはり揉むなら女性のおっぱいだ。もんだことないけど。
「で、弥助くんは、なんで田中くんを羽交い絞めにしているんだい?」
菜々がそう、俺に尋ねてくる。
「弥助が信仰上の理由で、おっぱいを崇めているんだ。それで、試しに田中の胸を揉めってことになっているわけ」
「ふーん。よくわからないけど、揉んでみたらいいんじゃないのー?」
よくわからないで田中の胸を揉みたくないから、もめてるんだよ、菜々さんよ。
「でも、男同士といえども、互いに同意がなく揉むのはダメだと思うの、ですよ」
ひでよしが菜々に説明している。ふむふむと菜々がそれを聞いている。なんだかいやな予感しかしないぞお。
「よっし、菜々さんがここはひと肌ぬいであげよう。弥助くん。田中くんをしっかり抑えていてねー」
そういうなり、菜々は、田中に近づき、彼の胸を揉み始める。田中はあふうんと言う声を上げやがる。
「ぶひい。やめてくれだぶひい。乳首は弱いんだぶひい」
「ほう。田中くん。それは良いことを聞いたのー。ここ?ここ?」
田中があひいんと声を上げる。やめろ。男の喘ぎ声なんざ、聞きたくねえよ。
田中がしくしくと涙を流している。
「汚されちゃったぶひい。僕は菜々さんに汚されちゃったぶひい」
お前の胸の操なぞ、知らん。
「よっし、これで田中くんの胸の感触はわかったよ。あとはこれを彦助くんにとくとくと聞かせればいいんだねー」
「おい、やめろ。田中の胸の感触なんて、俺に聞かせるんじゃねえええ!」
「あ!彦助くんが逃げる。ひでよしくん、彦助くんを抑えて」
え、えと、ひでよしは戸惑う。だが、その戸惑いは一瞬のことであり、ひでよしはあろうことか、俺の腰を後ろからつかみ、逃げられないようにする。
「よくつかまえてくれたねー。じゃあ、田中くんの胸のもみごこちを言うよー」
やめろ、やめてくれー!
俺の絶叫を無視するかのように、菜々が俺に耳打ちしてくる。
「ふー。良いことしたあとは、気分が爽快なんだよー。彦助くんも喜んで涙を流してるし、1日1善だよねー」
これは嬉し涙ではない!断じて違う。悔し涙だ。俺は地面を額で殴る。どうか記憶よ、飛んでくれ。
「菜々、あんたまで何を馬鹿なことをしているのよ」
椿がそう言う。どうせ聞かされるのなら、ご立派さまのを揉んだ感想を聞きたかったよ。
耳の保養とばかりに、椿の推定Eカップの胸を凝視する俺であった。
「ん?彦助、どうしたんだい?私の顔になんかついてる?」
顔にはついていません。胸にご立派なものがついてます。はい。
なぜ神は俺に透視能力といチート能力を身に着けてくださらなかったのか。そうすれば、ご立派さまのおっぱいを着物越しに見れるというのに。
でも、まてよ。もし、その透視能力が女性にだけ発揮されるわけではなく、男にも発揮されるとしたらどうしよう。さらにその能力が暴走して、四六時中、服が透けて見えたりしたら。
地獄だ。この世の地獄が始まる。
いや、半分は天国か。天国と地獄を同時に垣間見ることになるのか。
俺は足りない脳をフルに回転させながら、実現することはないであろう未来に対して想いを馳せる。
「ちょっと彦助。何を唸ってるんだい?具合でも悪いの?」
椿の顔が、俺の顔に近づいてくる。うおっ、今、どんな状況だ?椿が俺の額に右手を、自分の左手を自分の額に当てる。ふおわ。ご立派なものが目の前なのでござる。俺は胸がドキドキするのが抑えられない。しかも女性特有のいい香りまでする。
「んん。熱が少しあるようだね。具合が悪いようだったら、宿舎に帰って寝ておくんだよ」
ぱっと俺の額から手を放し、椿は立ち上がる。ああ、ご立派が離れていく。
んふふーと菜々は含みのある顔をしている。なんだよ、何、見てんだよ、金とるぞ。
「椿は無防備なんだねー。そんなんだから、男があとからあとから寄ってくるんだよー」
「どういうことよ。あたしは頼んだ覚えはないよ。そんなこと」
「まあまあ、椿さん。あまり、殿方に無闇に優しくするのはやめた方がいいですよ。昨今は怖い事件もありますし」
「えっ、どういうことだよ、風花さん。辻切りでも津島の町には出没してるのか?」
「辻切りといいますか、火のついたろうそくを持った男がたまにうろついているんですよ」
「それは怖いんだぶひい。火つけ盗賊なんだぶひい?」
「まあ、その、なんといいますか」
椿さんがめずらしく、くもぐったような言い方だ。何か言いたくないことでもあるのだろうか。
「その男のひとは、ろうそくを振りかざしですね」
なんだ、何をする気なんだ。
「自分の身体にロウを垂らし、発狂するのですよ」
俺は盛大にずっこける。
「怖いんだぶひい。恐ろしいんだぶひい」
「どこからどう見ても、ただの変態野郎じゃねえか!」
俺は叫ばずにはいられない。
「え、そういうご趣味の方なのですか?そのひとは」
風花さんが不可思議な顔をしている。ああ、このひとは全く。どこまでも世間知らずな、お嬢様なんだ。




