ー絢爛の章 6- 鍛冶屋に到着
俺たちは談笑しながら、町を練り歩く。件の鍛冶屋はもうそろそろらしい。俺はワクワクしながら、町を行く。
鍛冶屋が並ぶそこは、とんてんかん、とんてんかんと槌を振るう音がそこかしから聞こえる。俺は、周りを見ながら、ふと気づくことがある。
「なあ、田中。あれは何を作っているんだ?」
「ああ、あれは、鍬とか鋤なんだぶひい。鍛冶屋さんには、武器だけじゃなく農具を作るひともいるんだぶひい」
へええと俺は思いながら、鍛冶屋のおっさんが槌で鉄を叩く姿を見る。この時代にはすでに鉄製の鍬とかがあったんだなあ。そういや、高校で習ったっけ。
「鉄の鍬は、木のものと違って、畑を耕しやすいんです、よね。でも、値がその分、張るため、手が出にくいん、ですが」
「信長さまは、生産力を上げるために、鉄の鍬とかを農民に無料で配っているんだぶひい」
「えええ。信長さまって、どんだけお金を持っているん、ですか。相当な量になります、よね」
「生産力が上がれば、その分、信長さまにもお金がまわってキマス。投資としては、正しいことをしているんデスヨ」
「じゃあ、信長さまの領土が広がれば、その分、鉄製の農具が広まるってこと、ですから、農家の人たちも食べるものが増えて、嬉しい限り、ですね」
信長って、こんなところにも金を使っているんだな。俺たちにも給金を払ってくれているし、良い奴だぜ。
「さて、武器を作ってる鍛冶屋さんのとこについたんだぶひい。くれぐれも、彦助は失礼のないようにするんだぶひい」
「ん、失礼なことってなんだよ」
「弥助は思うのデス。彦助さんは歩く、無礼ものなのデス」
そんなに俺は礼を欠いていますかねえ。そんな俺をほっとくように、田中が鍛冶屋の入り口に入っていく。
「おおい、金兵衛。冷やかしに来てやったんだぶひい。でてくるんだぶひい」
「ああ?誰だよ、俺の制作意欲の邪魔をしにきたやつは。って、田中かよ。今日は何のようでござる?」
のっそりと、鍛冶屋の奥から、小男だが体格はがっしりとした30手前の男がやってくる。
「なんだ、今日はたくさんのお客さんだな。まあ、汚いところだが、中に入ってくれ」
鍛冶屋の中に通された俺たちは、そこら中に立てかけられた槍や、刀、鎧に目を配らせる。
「うひょおおお。刀だ、刀。やっと巡りあえたぜ」
「ん、なんだ、お前。刀がほしいのでござるか?」
「ああ、そうだぜ。やっぱり戦国時代って言えば、刀だろ」
ふうんと金兵衛は言い、じろりと俺の身体を見てくる。なんだ、俺はそんな趣味はないぞ。
「背丈は170センチメートルと言ったところか。だが、刀をもつほどの身分には見えないでござるがな」
「な、なんだよ。身分が低くちゃ悪いのかよ」
「おい、彦助。まずは、名を名乗れって言うんだぶひい」
おっと、しまった。つい、刀を見てて、肝心の挨拶をまだしてなかった。
「俺は、飯村彦助って言うんだ。金兵衛さんだったっけ。今日は、俺に似合う、刀を見にきたんだよ」
「ふうん。飯村の彦助か。まあ、田中がつれてきたんだ。期待はしてないでござるよ」
俺はぞんざいに扱われ、むきいとなってしまう。
「金兵衛。あんまり言ってやるなっていうぶひい。これでも立派な客なんだぶひい。あと、この猿みたいな顔してるのが、ひでよしなんだぶひい」
「ひ、ひでよしです。お初にお目にかかります。何か買うわけではないですが、よろしくお願い、します」
「おお、ひでよしっていうのか。そこの無礼な彦助よりは人間ができてそうだな。まあ、物色していってくれでござる」
なんか、俺とひでよしで差を感じるんですけどお。
「まったく、彦助さんは、初対面に対して、失礼なのデスヨ。信長さまに対しても変わらないんですカラ」
「ほんと、いつも冷や冷やさせられるんだぶひい。おい、金兵衛。僕に合う、鎧を見繕ってほしいんだぶひい」
「ん、田中、お前、金はできたでござるか。客なら客とちゃんと言えでござるよ」
金兵衛は、木箱を運んできて、田中の前にドスンと置く。
「信長さまが発注している、新作の鎧だ。まあ、知っているとは思うでござるが、胸から胴にかけて鉄の板一枚で出来ているでござる。重量自体は軽くなっているが強度に関しては、以前のもとはさほど変わらないでござる」
「さすが金兵衛なんだぶひい。どれどれ」
田中は木箱から鎧を取り出し、まじまじと見ている。俺からみたらさほど、何かが変わっているようには見えないんだけどなあ。
「お望みとあれば、少々、値は張るが、胸の鉄板の厚さを変えてやろうでござる。矢は完全に防げる程度には仕上げるでござるよ」
「え、そんなこと出来るのかよ。俺も欲しいな。矢は怖いからなあ」
金兵衛は、ふむと息をつく。
「鎧というものは、まっ平ではなく、湾曲させるでござる。湾曲させる理由はわかるでござるよな」
ううん?という顔を俺はする。やれやれと言った顔の金兵衛が告げる。
「矢や槍っていうのは、まっすぐな板とかは、貫通しやすいでござるよ。だから、ある程度、矢が入ってくる角度が浅くなるように湾曲させるのでござる」
なんか、どこかで聞いたことあるな。第二次世界大戦のどこかの国の戦車が、傾斜装甲とかなんやらで、敵の砲弾を弾くとかなんとか。それと似たようなもんなのかなあ。




