ー絢爛の章 4- 弥助(やすけ)のちょっとした昔話
「ここまで長々と説明をしてきだんだけど、残念なお知らせがあるんだぶひい」
「え?なになに」
「刀でも長物は、そこそこ値が張るから、下級兵士はほとんど槍なんだぶひい。わかってると思うけど、槍の長さに対して、刀で対抗するのは、戦ではお勧めしないんだぶひい」
「ええ!じゃあ、俺の情熱の行き場をどうすりゃいいんだよ!」
「ファッションとして、刀を持つのは悪いことではないと思いマスヨ。持っているだけで身分の高さが証明されますカラネ」
「そう、ですね。実際には使わないんですけど、ひのもとの伝統として、身分がそこそこある兵士は携帯して、いますね」
そういや、先日の戦で、50人長が刀を腰につけてたな。
「ファッションかあ。ううん。買う買わないは置いといて、とりあえず、見にいってみようぜ」
「まあ、見るだけなら無料だし、いいかぶひい。僕も鎧を見繕ってもらおうなのかぶひい。貯金もたまってきたことだし」
「え、田中さん、あなた、遊女通いしてるくせに貯金してたのデスカ。弥助は驚きなのデス」
「遊女狂いのお前と一緒にするなぶひい。週に2回行くなんて、馬鹿の極みなんだぶひい」
ひでよしが、あっ!と声を上げる。
「そうですよ、すっかり忘れていましたけど、彦助殿を男にする会はどうするの、ですか!」
一生、忘れててよかったのに。ひでよし、お前はなんてことを思い出すんだ。
「まあ、それも町に出てから、ついでに見繕ったらいいのではナイデスカ」
「それもそうなんだぶひい。午前は、メシでも食べながら、鍛冶屋によって、風呂に行って、それから遊女を見て回るんだぶひい」
「遊女と遊ぶにはお風呂に入るのはエチケットです、からね。臭い男は嫌われてしまい、ます」
「あのさあ。お前ら、なんでそんなに遊女遊女なの?」
え?と3人が俺の顔を見てくる。あれ、なんだ、俺のほうがおかしいのか?
「まあ、女の味を知らないからしょうがないんデショウネ」
「猿顔のわたしが言うのもなんですが、彦助殿は、女を知ると猿になりそう、です」
「まあ、いい女は譲ってやるから、心配するなだぶひい。初めては思い出になるから、腕のよさそうな女性を紹介してやるんだぶひい」
「だから、俺は行かないって言ってるだろ。いい加減、お前ら、諦めてくれ」
まあまあと3人が俺を諭す。やれやれと思いながら、俺たち4人は、着物を着込み、駄賃を持って町に出かける。
俺たちは、津島の町の屋台で軽く朝食をすませる。田中は喰い足りないと団子屋で10本ほど、団子を買い込んでやがった。ひでよしと言えば、小柄な体型に似合わず、大食いだ。軽くと言ってたわりには、ご飯を3杯おかわりしてやがる。
「なあ、お前らの基準で軽食っていうのは、団子10本とか、ご飯3杯おかわりのことを言うのか?」
「は、はい。これで腹8分目ですよ。変、ですか?」
「なんだ、彦助。団子が喰いたくなったのか?1本くらいは分けてやるんだぶひい」
まあ、くれるっていうのならありがたくもらっておこう。ちなみに団子は1本2文だ。現代でいえば200円と言ったところであろうか。
「弥助は、この中で一番、身長がでかいのに、あんまり喰わないんだな」
「訓練がある日は食べマスヨ。でも、休養日は、軽くで済ませているんデス。ただメシではありませんカラネ」
「こいつは、いつも金欠なんだぶひい。一体、どこの遊女に貢いでやがるのやらだぶひい」
田中はやれやれといった顔つきだ。
「そういえばさ、田中と弥助は、付き合いは長いのか?」
「そうデスネ。知り合ってから、かれこれ2年たちマスネ。今ではとってもフレンドリーデスガ」
「そういや、弥助は知り合ったころは荒れてたんだったぶひいね。兵舎で同室にされた当初は困ったもんだったぶひい」
「へえ。この中では一番、温厚そうに見える、弥助が荒れてたのか。一体、どんな感じだったんだ?」
「なんか髪の毛がちりちりで爆発したみたいな髪型をしていたんだぶひい。あのころは、斬れる短刀とよばれてたくらいだぶひい」
なんか、弥助の過去が知れて新鮮だなと思える。ここ2週間、同じ宿舎で顔を見合わせていただけあって、慣れてきたのかな。
「オウ。あれはアフロヘアという、私の国では流行の髪型だったのデス。田中さんもしてみてはいかがデスカ?」
「あんなの嫌だぶひい。あれが流行る国って、一体、どんな文化なんだぶひい」
弥助はオウ、シット!っと叫ぶ。俺もアフロヘアの良さがわからん。すまん、同情はできん。
「ひでよしさんは、アフロヘアはいかがデスカ。今なら弥助が50文でセットしてあげるのデス」
俺は、ひでよしのアフロヘアを想像し、口に含んだ茶を吹きだしてしまった。
「あ、あの。一体、どんな髪型か想像できないんですか、それでわたしは女性にモテモテになれるので、しょうか」
「ウーン。それは保証できかねマスネ。女性は外見で判断することは少ないと言われていますカラ」
「では、猿顔のわたしでも可能性があるということ、でしょうか。それは安心でき、ますね」
まあ、たで喰う虫も好きずきって言うからなあ。もしかしたら、将来、この猿顔がすてき!抱いて!って言ってくれる女性が現れるかもしれない。望みは捨てることはないと思うぞ。強く生きろ、ひでよし。
まあ、そんな女性、よっぽどじゃないと見つからないだろうけどな!




