ー爛漫の章 5- 結婚観
結婚かあ。俺も将来、するんだろうか。相手は誰になるんだろう。
「風花さんは確か今年で20だったぶひいか?結婚するとしたら、適齢期なんだぶひい」
「はい。今年で数えで20になります。世の中の女性に比べれば、結婚するには遅いくらいですね」
「はやい娘はだいたい16で結婚しちゃうもんねー。わたしも18だから、そろそろ相手みつけないといけないんだけどなー」
戦国時代の結婚ってのは、早いんだな。ろりこん万歳な時代だぜ。もちろん、俺はろりこんじゃないので、年上でも全然おーけー!
「風花さんと菜々さんは、相手とかいないのデスカ?」
「いたら、とっくに結婚してるさー。なかなか、いいひとっていうのはいないもんだよー」
「見合いっていうのはないのか?風花さんには話が来ているっていうし」
「私は武家の方や、神社の宮司から、お声はかかっています。家が祭祀に携わっていることもあり、身分が高いひとから求婚されます。けれど」
けれど、なんだろう。
「戦国の世ですが、私は好いた殿方がいいのですよ。家格にとらわれることなく、私を好きになってくれる殿方がいればいいのですが」
「家格かあ。そんなに家の差って大きいものなのか?」
俺の言葉を聞き、椿が口を開く。
「正妻になるのであれば、家格ってのは大事なんだよね。妾ってなら、そういう縛りはあまりないけどさ」
ふうん、そうなんだ。
「妾は、いやです。だって、好いた殿方に会えない日があると思うと気が狂ってしまいそうです」
風花さんは、おっとりとした見かけと違って、結構、ものをはっきりと言うもんなんだなあ。
武家に嫁ぐってなれば、もしかしたら、そいつが妾を作るかもしれない。それで、風花さんが相手されなくなれば、それが嫌なんだろう。
じゃあ、宮司相手ならどうなんだ?
「宮司さんですか?懇意にされている家からの申し出なので、悪い気はしないのですが、何分、相手の方と反りが合わないと言うか、好みが合わないというか」
「嫌いってことぶひいか」
「そうはっきり言われましても、私、困ってしまいます」
その割には笑みを浮かべている。風花さん、おそるべし。
「じゃあさ、仮にだよー。ここにいる男4人連中なら、どいつがいいのー?」
菜々さん、ナイス質問!
「お前ら、おもしろそうなこと言ってるな、お兄さんも混ぜてくれよ」
げっ。信盛のおっさんきた。
「あれー。このひとって誰だっけー」
「この人は、佐久間信盛さまだぶひい。今回の寺攻めで総指揮をとっていたんだぶひい」
「ああ、たまに兵士たちの訓練を見にくるひとだねー。こんにちわー、信盛さまー」
「おう、こんにちは、お嬢ちゃん。で、この中の5人の中だったら、だれを選ぶかって話だっけ」
勝手に話の中にはいってくんじゃねえよ、おっさん。
「信盛さまも参加するのー?じゃあ、風花、だれがいいか決めてー」
「んん。そうですか。この中からですか」
風花は、俺たち5人の顔や身体をじっくり見つめる。その視線は舐めるかのようでもあり、俺はつい身体がぞわっとしてしまう。
「田中さんですかね」
田中は、よっしとばかりにガッツポーズを作る。くっそ、なんでこんな豚野郎がいいんだ!
「異議あり!異議あり」
「はいはいー。なんでしょうか、敗れた彦助選手は」
「田中のどこがいいのか、わかりません」
「お前には、俺の魅力なんかわからないんだぶひい。美男子の匂いがぷんぷん香っているんだぶひい」
「田中さんは美男子ではありませんよ。豚さんです」
風花がはっきりと言う。ざまあ!
「でもですね。私は、ふくよかな殿方が好みなんですよ。ほら、この締まりのないお腹なんか、さわりごこちが最高なのですよ」
そう言って、風花は田中のお腹をたぷたぷと触っている。田中がうらやましいぜ。この時ほど、田中を憎いと思ったことはないぜ。
「うへえ。負けちまったかあ。お兄さん、自信は、あったんだけどなあ」
「あはははは。信盛さま、残念だったねー」
「信盛さまは、出世しそうですけど、遊女が好きそうですし。あと、お妾さまも、大層、つくりそうですしね」
「いやいや、俺は浮気はしないタイプだよ。遊女は、まあ、好きだけど」
うふふと風花がほほ笑む。
「私は、ひとりの人に縛られたいし、縛りたいと思うのですよ。信盛さまが私を妾にされても、懐剣で刺してしまいそうです」
「妾っていうが、俺はまだ正妻もいないんだぜ。自慢にはならんか」
はははっと信盛は笑う。おっさん、いい歳して、嫁さん、いないのかよ。
「やっぱ、嫁にするなら好いたやつと一緒になりたいからな。まあ、こんなんだから、この歳になっても、嫁がいないんだが」
「信長さまの一部の軍とはいえ、総指揮をとられる方が、結婚されてないとは、いけないことではないのですか?」
「殿にも再三、結婚しろ、結婚しろって言わてるんだがな。俺、ぼんっきゅっぽん!が好きだからさあ。なかなか、そういう娘がいなくて難儀してるわけ」
おっさんになびく、ぼんっきゅっぽん!がいるわけねえだろ。現実みろ、現実。お前みたいな、おっさんなんか、がさつな椿でも娶ればいいんじゃねえのか、と思う俺であったが声には出さなかった。何されるか、わかったもんじゃねえ。




