ー戦乱の章54- 熱田の3人娘
「え?田中、今、風花さんからもらったお守りとか言わなかったか?なんで、お前が風花さんからお守りをもらってんだよ!」
「え?彦助殿は、お守りをもらえなかったん、ですか?私は菜々さんからお守りをもらい、ましたよ?」
「え?彦助さん。お守りをもらえなかったんデスカ?弥助も菜々さんからお守りをもらいマシタヨ?」
「ちょおおおおと、待て!なんで、お前たちはお守りをもらってんだよ。俺、何ももらってないぞ?どういうことだよ」
「安心するんやで、彦助くん。わいも誰からもお守りをもらってないんやで!彦助くんは、何も気にする必要はないんやで?」
「な、なにも慰めになっていないような、気がするんですが、てっきり、彦助殿は椿さん辺りからでも、お守りをもらっていると思っていました、けど、違うんですか?」
「もらってねえよ!風花さんからも、菜々さんからも、ましてや椿からも、何も、もらってねえよ。四さんがもらってないのは当然として、なんで、俺だけのけもんなんだよ!」
ちっくしょう。一体、どういうことだよ。なんで、俺だけ仲間はずれなんだよおおおおお!
「はっくしょおおおん!ああ、なんか、彦助から悪口を言われているような気がするわ。これは、やっぱり、彦助が戻ってきたら、一発、ぶんなぐらなきゃいけない気がするわ」
「ふふふ。椿さん。女性が、はっくしょおおんってクシャミは如何なものかと思いますよ?男の方のような気がしますわ」
「椿はたまに、女性なのか男性なのかわからなくなる時がよくあるよねー。せっかく、ご立派なものを胸にぶらさげてるんだから、少しはおしとやかになればいいのにー」
「う、うるさいわね。胸は好きでこんなに大きくなったわけじゃないわよ。大体、たまになのか、よくなのかどっちなのよ」
「ふふふ。まったく、こんな大きなものをぶら下げているのは、犯罪なのですわ。わたくしが揉んでさしあげますわ」
「えー!風花だけずるいよー。あたしも、揉ませてー」
「ちょ、ちょっと、風花、菜々。往来のど真ん中で、何をしだすのよ。ちょっと、やめなさいって!」
「あら?椿さん。何か地面に落としましたよ?って、これはお守りですか?もしかして、これ、彦助さんの分じゃないんですか?」
「あー、本当だー。これって、3人で、あいつらが今回の合戦で無事に戻ってこれますようにって、みんなで作ったやつだよねー。あれれ?椿、彦助くんに渡してなかったのー?」
「う、うるさいわね。つい、渡しそびれただけよ!あいつときたら、他の女性の胸ばかり見てたから、イラッとして、一発、ぶん殴ってやったら、つい、お守りのことを忘れてただけよ」
「あらあら。それは大変なのですわ。彦助さん、今頃、自分だけ、お守りをもらえてなかったことに気付いたのではないですか?それで、椿さんがくしゃみをされたのですわ」
「なるほどー。そういうくしゃみかー。でも、渡す機会なんて、いつでもあったたような気がするんだけどー。ちなみに、あたしは、ひでよしくんと、弥助くんに、ぱぱっと渡しちゃったよー。なんか、遊女さんたちの前で盛ってたみたいだけど、お守りを渡したときは、眼が泳いでいたねー」
「なんて間の悪い時に渡すんだい、菜々は。そりゃ、遊女って言っても、女性なんだ。他の女性が贈り物なんてしたら、気分がいいもんじゃないでしょうに」
「ふふふ。そうですわね。菜々さんは、もう少し、その辺りが気になるようになったほうがいいと思いますわ。わたくしは、田中さんと2人っきりの時に、渡しましたわ」
「え?風花。いつの間にそんな仲に田中と発展したわけ?お世辞にも田中は、色男に見えないんだけど」
「ふふふ。椿さん。田中さんは良い人ですよ?そう、悪く言うのはよしてください?でも、田中さん、慌てふためいていましたね。本屋さんで春画の前で唸っているときに渡しましたから。中々に面白い反応を見れました」
「風花もいじわるだねー。今夜のオカズを探しているときに、そんなことされたら、男なら誰でも慌てふためくと思うよー?」
「だって、絵とは言え、他の女性の裸を見るのは、わたくしだって、イラッとしますわ?ちょっとした、いたずら心ですわ」
「田中も災難ね。こればかりは田中に同情してしまうわ。風花、いつから田中と付き合っていたのよ?」
「何を言っているんです?わたくしは田中さんと、お付き合いはしていませんわよ?でも、田中さんは何か思うところがあるように見えますけど。今度の戦で必ず功をあげてくるぶひいいいい!って息巻いていましたわね」
「それ、きっと、田中くんが功を上げて、風花に自慢してくる流れだよー。そして、そのまま、告白してくるんじゃないー?」
「わたくしとしては、功を上げるために、そんな危険なことはしてほしくないのですわ。お守りを渡したのは逆効果になってしまったのですか?」
「やれやれ。風花みたいな美人から何かもらったら、男なら誰でも息込んじゃうに決まっているじゃない。ちゃんと、田中に、頑張らないように言ったほうが良かったかもよ?」
「ふふふ。さて、それはどうでしょう?案外、わたくしは田中さんに安全でいてほしいとも、がんばってほしいとも思っているのかも知れませんわ」