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ー戦乱の章51- 孫子の兵法は難しい

「ん?兵は拙速を尊ぶって言うのは、策がつたないものでもすばやく攻め込むほうが、結局はうまくいくことが多いって例えだ。覚えておいて損は無いぜ?」


「あっ、信盛のぶもりさまだぶひい。おはようございますだぶひい」


信盛のぶもりさま、おはようございますでやんす」


「お、おはようございます、信盛のぶもりさま」


 俺たちはいきなり現れた信盛のぶもりさまに頭をぺこりと下げる。信盛のぶもりは、まあまあと手をかざし


「そんなにかしこまらなくていいぜ?なんだ?お前ら、朝から孫子の兵法で話合ってんのか?感心、感心」


 信盛のぶもりさまは俺たちに頭を下げなくていいと手振りで告げると、棒と天幕に使った布をどすんと置いている。


信盛のぶもりさまは孫子の兵法には詳しいんだぶひいか?」


「ああ?そんなに詳しいってわけじゃないぞ。まあ、殿とのなら、詳しいんだろうけど、俺はさわりくらいしか知らん。あと知っていることと言えば、自分を知り、敵を知れば百戦危うからずくらいだなあ」


「自分を知り、敵を知ればでやんすか?ううん、よくわからないでやんすねえ」


「まあ、自分とこの兵隊の戦力、士気、状態を知ったうえで、敵の情報を仕入れておけってことさ。そうすれば、100回戦ってもまず負けることはないってことさ。まあ、そんな上手くいくさが運ぶことなんてないんだけどな」


「そうなんですか?自分の強さと相手の強さの差がわかってれば、基本、大丈夫なような気がするんだけどじゃなかった、するんですが」


 俺はなるべく失礼に値しないように口調に注意してしゃべる。昨日は塙直政ばんなおまささまに注意されたしな。少しはちゃんとしゃべれるようにしとかないとな。


「うん?いくさって言うのは水が流れるごとしで、常に変化するもんだ。敵が真正面から何も考えずにぶつかってくるわけじゃあない。それこそ、罠を仕掛けているかもしれない、伏兵を配置しているかもしれない。敵の戦力だけで推し量れるほど、いくさは甘くはないんだ」


「あと、天候とかもあるぶひいねえ。急に雨が降ってきたら、いろいろ大変なことになりますぶひいもんね」


「そうそう。雨が降ったら、地面がすべりやすくなるし、虎の子、鉄砲も使えなくなるしな。まあ、彼我の戦力を知っておくことは大事だけど、そればかりに囚われたらダメだってことだ」


 俺は信盛のぶもりさまの言いに、なるほどなるほどと耳を傾ける。


「まあ、昨日のいくさは、そもそもが相手の倍の兵力をこっちが持っていたから、意外とあっさり決着はついたわけだけど、今日からは城攻めだ。あちらの兵力は残り1000と予想しているが、中々に難しいいくさになるだろうなあ」


「こっちが2倍の2000で、あっちが残り1000ですけど、城攻めって言うのは、そんなに厳しいんっすか?」


「ああ、厳しいなあ。なあ、お前たち。城攻めって言うのは日が昇ってから沈むまでが勝負ってのは、わかっているよな?」


 ん?どういうことだ?信盛のぶもりさまが言っていることがよくわからないぞ?


彦助ひこすけは城攻めは今回、初めてだったぶひいね?まあ、僕も初めてぶひいけど、信盛のぶもりさまが言いたいことは大体わかるんだぶひい。砦攻めには何度か参戦しているぶひいからね」


 まあ、俺は寺攻めしかやったことがないからなあ。そういえば、あの時も夕暮れ時には攻めるのを止めていたっけ。んで、朝から一気に攻め込んで昼過ぎには落としたんだったよな。


彦助ひこすけくん。昨夜、夜襲について、わいら、話あっていたでやんすか。それを思い出せば、答えはすぐにわかるでやんすよ?」


 昨夜の夜襲の話か。そもそも、夜襲自体がありえないって話だったよな。そうか、そうだ。答えが俺にもわかったぜ!


信盛のぶもりさま。夜は何も見えないから、城攻めはできないってことっすね!だから、夕暮れまでしか攻め込むことができないんっす」


「そうそう。てか、お前、口調が利家としいえそっくりだな。そのしゃべり方、直したほうがいいぞ?利家としいえのは愛嬌があるから許される部分があるが、お前のは、失礼だ」


 しまった。っす言葉はやはりダメだったか。若者言葉は使えないってのは本当なんだなあ。


「まあ、それは置いておいてだ。城攻めって言うのは、あちらも退路がない分、必死になるんだ。そこを攻め落とさなきゃならん。まあ、のんびり囲んで士気が落ちるのを待つのも手なんだが、俺たちには敵が多い。時間をかけずに落とさなきゃならん。で、落とそうにもお日様が沈むまでの時間で済まさないとならないのがつらいところだ」


「城と砦を比較するのはあれぶひいけど、砦を一気に落とせなかったときは、こちらの士気が下がる一方でしたぶひい。力攻めをした分だけ、こちらの傷兵が増えるので、なかなかに厳しかった記憶がありますぶひい」


「そういうことだ。だから、お前ら、しんどい戦いにはなるが、成果が出るように頑張るんだぞ?じゃあ、俺は朝めしでも喰うから話はここまでだ。お前らもたっぷり喰っとけよ?」


 信盛のぶもりさまはそう俺たちに言うと、自分のもと居た場所に戻っていくようだ。ああ、俺は未体験の城攻めにこれから参戦するわけか。これは気合入れていかないといけないなあ。

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