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ー稽古の章 6- 騎馬隊って反則

 朝飯後の準備体操も各々、終わり、槍の訓練の時間となる。槍の訓練では、100人一組となり、槍の基本的な使い方や、槍をつかっての陣形の組み方や、陣形の替え方を学ぶものらしい。


 100人が広場に集まり、まずは、半分の50人ずつに分かれる。そこからさらに半分の25人に分かれる。足軽隊の一列は25人から30人程度が扱いやすいとのことからの配慮らしい。それに合わせて足軽組頭の30人長という階級があり、足軽組頭が1列を管理運用するわけである。


 実際の戦闘では25人一組で2列で50人。それを一塊として運用するわけだ。


 もっと小さい単位で用いることもある。下級兵士の1個上の階級は足軽長であり、この階級では10人の長である。したがって、10人一組単位で長槍隊を組むこともある。まあ、全部、田中太郎に聞いたことなんだけどな!


 もうひとつ有用なことを聞いてもいる。


「なあ、田中。足軽の訓練は、槍、弓、相撲、水練、それと精鋭部隊は鉄砲って言ってたけど、馬はないのか?」


「馬かあ、馬は幼いころから乗ってないと、合戦では使えないレベルだぶひぃ。そんなことに長時間使うくらいなら、槍と弓の訓練をすれってことぶひぃ」


「そういうもんなのか?武田っていう最強騎馬軍団があるんだろ。それに対抗するなら同じく騎馬か鉄砲だろ」


「オウ。彦助(ひこすけ)殿、着眼点はいいのデス。でも、あなたは高速で動く騎馬兵を撃ちぬけマスカ?」


「ああ、ゲームでも無理だったな、そういや。それを一発一発、弾込めながら狙うって、無理だわ」


 俺がいた時代には、ファーストパーソンシューティングというジャンルのゲームがあった。それほど得意というわけではなかったが、ゲームの世界での撃ちあいですら、難しいのだ。現実世界じゃ、動く的なんて当てるのはもっと無理だろう。


「ゲームっていうのがよくわかりませんが、そういうことデス。織田家が保有する鉄砲は50から100丁程度です。同時に撃てるのが100発程度なのデス。足軽相手には使えるのデスガネ」


 あれ、おかしいな。じゃあ、信長はどうやって鉄砲隊ごときで、武田の最強騎馬軍団を破ったんだ。当てれないんじゃ、何丁、鉄砲を準備しても意味ないじゃん。俺は頭の中をハテナマークで一杯にしながら、思案にくれる。


「そんなことより、長槍の訓練をするだぶひぃ。騎馬は長槍などを使って止めるのが織田家のやり方なんだぶひぃ」


「た、田中さんのいうように、馬を実践で扱える人間はそうは居ま、せん。ですから数は限られます。ですが、騎馬隊が脅威なのは変わらないの、ですが」


 ひでよしが田中の補足をする。


「騎馬の突進力は、すさまじく、真正面から轢かれれば、こちらも被害が大きいです。足軽10人くらいは軽くふっとばされます」


「おいおい、そんなもん、どうやって止めるんだよ。兵力に換算すれば1騎馬イコール足軽10人だろ。50人で隊列組んだって、騎馬5人にやられちまう」


「そ、そこは根性でとめ、ます」


「うわ、出たよ、根性論。そういうの一番ダメだと思うんだよな」


「実際は、木の杭を使うんだぶひぃ」


 田中はそういうと、腕の太さはあろうかという、丸太を手にする。それを槍のように構えて言う。


「これを50人で、剣山のように前方に突き立てて、馬の突進を止めるぶひぃ」


「うへえ。腕ごと持っていかれそうだな。それ大丈夫なの?」


「大丈夫なように訓練をするのデス。なんのための時間デスカ」


 そりゃ、ごもっともだ。正論すぎて涙がでてきそう。どうか馬さん、こちらにこないでください。


「最近は、超長槍が開発されているぶひぃ。木杭の代わりになりそうだという噂だぶひぃ」


「へえ。そんなすごい長槍なのか?」


「なんと通常の2メートル半の槍の倍以上長い、6メートル半の槍なんだぶひぃ」


 俺は盛大にずっこける。なんだよそりゃ。


「ただ長くなっただけじゃねえか、そんなのどうだっていうんだ」


 田中はカチンと来たらしく通常の2メートル半の長槍を俺によこす。そして、田中本人は、通常の槍の先に、さらに1本、槍を縄で結び、俺と対峙する。


「さあ、勝負だぶひぃ。どっちが優れているか見せてやるぶひぃ」


 そう言われ、俺は槍を構える。そして田中をみると、その長さの異様さにおどろく。


「お、おい、それ反則だろ。俺の槍なんて絶対とどかねえじゃねえか」


「うるさいぶひぃ。僕を怒らせた罰だぶひぃ。しごいてやるんだぶひぃ」


 俺は、散々、田中に約5メートルに伸びた長槍で一方的に叩かれる。


「いてえ、いてえ。文句言ってわるかったって。ごめんよ、田中!」


「お前は少しはしおらしくしてろぶひぃ」


「やれやれ、弥助(やすけ)は思うのデス。いつも彦助(ひこすけ)は一言多いと」


「た、田中殿、彦助(ひこすけ)殿。そろそろ、部隊の訓練に入りま、しょうよ。周りの視線が痛い、です」


 俺たちがじゃれあっているうちに、他の兵たちは隊列の訓練を行っている。おっとやべえ。遊んでたら信盛(のぶもり)のおっさんがとんでくるかもしれない。くわばらくわばら。



 しかし、通常の槍の2倍の5メートルでなにもできなくなるんだ。信長が開発している6メートル半の長槍ってのはどうなるんだ。足軽が兵隊の基本となる、この時代において、超兵器になるんじゃないかと、俺はおっかなびっくりであった。

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