ー戦乱の章18- 出世をしたらハーレムを作ろう
ふんふんふーんふーーーん。
俺は鼻歌まじりに意気揚揚と、行軍についていた。
「彦助殿。なんだか機嫌が良い、ですね?そんなに戦が楽しみだったの、ですか?」
「おう、ひでよし。そりゃ当たり前だろ。なんたって、本格的な戦なんて初めてだからな。この前からの前哨戦のような小競り合いじゃなくて、斬った張ったの壮絶な殴り合いになるわけだろ?俺にだって、敵将を討ち取る機会がくるかもしれないって思うと、わくわくしちゃうぜ!」
「能天気な彦助がうらやましいんだぶひい。僕は怪我をするのが嫌なんだぶひい」
「オウ、田中さん。奇遇デスネ。弥助も怪我をするのは嫌デスヨ」
「誰だって怪我するのは嫌なんやで。できるなら、お給金だけもらって、毎日、訓練してたほうが楽なんやで」
「おいおい。そんなんじゃ、一生、俺たち、下級兵士のままじゃんか!少しは出世しようとか思わないわけ?お前たち」
なんで、こいつらは出世したいって言う強い気持ちがないんだろうな?せっかく、出世ができる信長の下で働いてるって言うのに、夢が無さ過ぎだぜ。
俺がやれやれと言う顔つきをしていると、田中がうろんそうな目つきで俺の顔を見てくる。
「まあ、僕だって、出世はしたいんだぶひい。出世して、お給金が上がれば、お嫁さんだって出来る可能性が上がるんだぶひい」
嫁さんを作る前に彼女を作るべきなんじゃないのかな?
「ん?彦助。恋愛結婚がしたいんぶひいか?」
「そりゃそうだろ。好きな人と恋愛して、結婚する。それが1番に決まっているじゃねえか」
「弥助もそれが1番、良い形かと思うのデスガ、意外とデスネ、見合い結婚より、恋愛結婚のほうが離婚率が高いのデスヨ?」
え?まじ?
「でも、それってさ、見合い結婚のほうは、家と家の関係?ってやつが絡んでくるわけじゃん。ただ単に、そう言ったしらがみが強くて、離婚しづらいだけじゃねえの?」
「彦助殿。そうではありま、せんよ?恋愛結婚であろうが、見合い結婚であろうが、家と家の繋がりはでき、ます。結局、両家のご両親が関わらないってことは、ありません、よ?」
「そんなもんなん?恋愛結婚ってことは、大事なのは愛し合う2人の気持ちが大切なもんじゃん?親とか関係ないと思うんだけど?」
「彦助くんは考えが甘いんやで。恋愛結婚であろうが、見合い結婚であろうが、その家を継ぐってことですやん?2人だけの問題じゃないんやで、結婚というものは」
「あれれ?四さん。何か、その辺、詳しそうだけど、昔なにかあったわけ?」
「そりゃあ、27まで生きてきてるんや。好きな女のひとりやふたりは、おったわいな。でも、村から飛び出した、わいのような根無し草の行商人の嫁になってくれる女性がいなかっただけやで」
「まあ、その前に、信長さまの軍に所属している男は、というかほとんどは、農村の3男、4男とかの元々、結婚の2文字とは縁のない人間だぶひい。そういう境遇から考えれば、信長さまの兵士は結婚できる可能性がすごく高いぶひいね」
「兵士を続けている限りは、お給金がでるでやんすからね。今からしっかり貯金しとけば、ちょっとした財産だって築けるでやんす。そのお金で信長さまの領地で商売を始めるのも悪くないんやなあ」
「四さんは、将来、店の旦那にでもなりたいのか?」
「もう27歳やからなあ。長々と兵士をやっていけるほど、体力がもつかどうか、怪しいもんやで。将来のことは今からでも考えといて罰はあたらんやで」
人間50年の時代だもんなあ。四さんはその基準から行けば、人生の折り返し地点ってわけか。そりゃ、老後の余生のことを考えるのもしょうがない歳なのかもしれない。
だが、俺は数え年で20歳になったばっかりだ。じじくさいことは言っている暇は無いぜ!絶対に、出世して、1国1城の大名になってやるぜ!
「そういえば、彦助殿は、なんで1国1城の主になりたいん、ですか?私は、お腹いっぱい家族たちに白いご飯を食べさせたいから出世したい、ですが」
「うん?そりゃあ、1国1城の主になれば、領民は俺の言う通りになるだろ?そうなれば、キレイどころの女性は皆、俺のものになるじゃん。嫁さんだけじゃなくて、妾も作りたい放題。合法的にハーレムを作れるってわけじゃん」
ひでよし、田中、弥助、四さんが、はあああああと長いため息をついている。
「僕は、もし彦助が1国1城の主になっても、そんな領地には住みたくないんだぶひい」
「そうデスネ。弥助もそんな領主はお断りなのデス」
「なんだよ、なんだよ。まるで、俺が悪政を敷くような男になるような感じじゃん、それ」
「彦助くんは、絶対に、家臣の嫁とか、領民の嫁とかを無理やり手籠めにしそうでやんすね。そんな、色狂いの領主の下で暮らしたいとは思わないもんやで」
「ちょっと待て。お前たちは考え方がおかしい」
「どう、おかしいんだぶひい?せっかくだから聞いてやるんだぶひい」
「仮にだ。仮に、田中たちが、俺の領民や家臣だったとしよう」
「嫌だと言っているのに、無理やり弥助たちを領民にするのはやめてクダサイ」
「まあ、聞けよ、弥助。お前たちが俺の家臣だった場合だ。んで、お前たちに嫁がいると。だが、安心してくれ。お前たちの嫁に手を出すことはないと誓っていい」
「なんだか、怪しい話、です。まったく信用できない、です」
「よおおおおく、考えてみろ。田中は豚メン、ひでよしは猿メン、弥助はブサ面。四さんは、おっさんだ。そんな、お前たちに好き好んで結婚してくれる女性なんて、絶対に、俺のいちもつが反応するような女性なわけがない。これだけは、はっきり言えるぜ!」