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ー戦乱の章16- 出陣の朝

「よおし、お前ら。槍と弓は持ったか?ちゃんと兵糧も忘れずに携帯したか?」


 信盛のぶもりさまが兵400の前で号令をかけている。俺たち5人は、鎧姿に新兵器の3間半の槍を右手に持ち、それぞれ腰袋や肩下げに兵糧を詰め込み、列に並んでいた。


 俺こと彦助ひこすけ、ひでよし、田中、弥助やすけよんさんは信盛のぶもりさまの隊の一員である。


 利家としいえ河尻かわじりさまは、信長の親衛隊で利家としいえは直属の50人を率いている。聞いた話だと、赤母衣あかほろ衆って言う、エリート集団だそうだ。


 河尻かわじりさまも黒母衣くろほろ衆と言う、兵200のエリート集団である。ああ、俺も出世したら、赤母衣あかほろ黒母衣くろほろ、どちらかに入りたいぜ。


「赤、黒母衣くろほろ衆は馬に乗れる人たちが入るんだぶひい。僕たちは槍や弓を使う足軽部隊だから、そんな精鋭部隊には敵の大将の首級くびを取るくらいの功績がなければ、入れないんだぶひい」


「なーるほど。じゃあ、坂井大膳さかいだいぜんの奴の首級くびを取れば、俺でも、黒母衣くろほろ衆に入れるってわけだな。これは燃えてきたぜ」


「でも、信盛のぶもりさまは中詰めの任務が多いですから、池田恒興いけだつねおきさまとか森可成もりよしなりさまの先鋒の隊ではないと、機会が巡ってこない気もするのデス」


「ええ?じゃあ、俺たちの部隊は先陣を任されることは無いってことなのか?今からでも、池田さまと森さまの部隊に入れてもらえるように配属替えしてもらおうぜ」


「先鋒を任されると言うことは、それだけ命の危険が高まるということなんやで?信盛のぶもりさまの隊は新人育成も兼ねているって聞いてるやで。そんな危険な任務を新人引きつれてたんでは、きついんやで」


「ふーん。失礼だけど、信盛のぶもりさまはいくさが苦手だから、新人引き連れて、中詰めを任されてるってこと?」


「そうじゃないぶひい。中詰めってのは、先鋒を後ろから支える部隊なんだぶひい。彦助ひこすけ、よく考えるぶひい。先鋒が満足に戦えるのは、中詰めの信盛のぶもりさまを信頼できるからこそ、安心して戦えるんだぶひい」


 なるほど、なるほど。野球で言えば、遊撃手ショート三塁手サードの後ろに左翼手レフトが控えているようなもんか。後ろに球を逸脱しても、左翼手レフトがいれば、安心だもんな。


信盛のぶもりさまはいくさが苦手なわけではありマセン。全体を支える中核部隊なのデスカラ、むしろ、いくさ運びは上手いと言っていいデショウ。赤、黒母衣くろほろ衆は精鋭部隊ではありますが、信長さまの親衛隊デス。実質の信長さまの軍隊としての強さは、信盛のぶもりさまが居てこそなのデスヨ」


「じゃあ、その信盛のぶもりさまの部隊に配属されている俺とかは、信長にとっては超重要な奴ってことになるわけ?へへへっ。頼りにされるのは悪い気分じゃないぜ!」


「信長さまに仕官して3か月の新人の彦助ひこすけが何を言っているんだぶひいか。お前はよんさんと変わらないくらいの期待度なんだぶひい」


「ええ?さすがに、よんさんと同じだと言われるのは、心外だ。文句のひとつも言いたくなるぜ。これでも訓練は真面目にやってきてるんだ。よんさんより、数多くの敵兵の首級くびを取ってやるんだ!」


「でも、問題は今回は混乱する清洲城を攻める、言わば奇襲作戦のようなもの、です。呑気に敵兵の首級くびを取っているような時間があるの、でしょうか?」


 ひでよしがそう、疑問を俺たちに投げかけてくる。確かに、ひでよしの言う通りだ。坂井大膳さかいだいぜんが守護代の織田信友に反旗をひるがえしての、この混乱だ。


 一刻も早く、坂井大膳さかいだいぜん首級くびを取らなきゃ話にはならない。そこんとこ、どうなるんだろうな?


 そう、俺たちが首をかしげて考えているところに、信盛のぶもりさまが集まる兵たちに向かって言い放つ。


「今回は敵将の首級くびは取り放題だ!だが、雑兵は放っておけ。いちいち、下級兵士の首級くびを取ってんじゃねえぞ、お前ら。狙うなら、将の首級くびを狙うんだ」


 なるほど、なるほど。敵の足軽の首級くびは取らなくていいから、将の首級くびを狙えってことだな。


「今回の奇襲で、坂井大膳さかいだいぜんの誅殺に失敗したとしても、敵の将の首級くびを上げれば、織田信友の戦力はがた落ちになるぶひいね。功もほしい奴らの分も含めて、よくよく考えられているんだぶひい」


 感心する俺と田中である。さらに信盛のぶもりさまが続ける。


「今回のいくさで、敵将の首級くびを取ったやつには、恩賞として、金子きんす1枚が、殿とのから与えられることになっている。俺たちは中詰め部隊だが、奇襲作戦だ。混戦となる可能性が高い。新人のやつらにも、大いにチャンスはあるから、期待しておけよ!」


 信盛のぶもりさま率いる、400の兵たちが一斉にうおおおお!と声を上げる。俺もその熱気に包まれ、思わず、喉がはりさけんばかりに鬨の声を上げちまうのであった。

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