表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/364

ー戦乱の章 2- 戦(いくさ)の準備をしよう その2

「そもそも、握り飯だけじゃなくて、干飯(ほしいい)も、ちゃんと準備しておくんだぶひい」


「おにぎりを干しておけば、干飯(ほしいい)になるんじゃね?」


 田中はふうううと嘆息してやがる。


「おにぎりの状態だと、中の部分が乾燥しないんだぶひい。めんどくさがらずにザルでご飯を干しておくんだぶひい」


 俺はへいへいと田中に応え、おにぎりにしない分のご飯をザルに移して風当りのいいところに保管しておく。この良い天気だ、半日も放置しておけば、良い感じになるだろう。


弥助(やすけ)さん。兵糧丸を作りま、しょうか。米粉、そば粉、きなこ、ハチミツ、山芋、黒ごま、鰹節を持ってきて、ください」


「何か兵糧丸に新しい味を試してみたいデスネ。ついでにショウガと梅干を混ぜてみまセンカ?」


弥助(やすけ)、やめとけなんだぶひい。どう考えても、不味くなりそうな組み合わせになるんだぶひい。伝統にならったもので作るんだぶひい」


「ええ?新しい味に挑戦する姿勢は悪くないと思うんだけど。試しにやってみないか?」


 田中はまたもやふうううと嘆息しやがる。


「もしも、くそ不味いものができたら、彦助(ひこすけ)、お前は責任持って、全部、食べてくれるぶひいか?三日三晩、そのくそ不味い兵糧丸を喰ってもらうけど、それでいいなら作ってもいいんだぶひい」


「ええ?弥助(やすけ)も責任取って、一緒に食べるべきじゃね?まるで俺が発案者の如く、責任を取らせるのは間違っている気がするぞ?」


弥助(やすけ)は不味いのは食べたくありマセン。彦助(ひこすけ)さん。ワタシが作った分まで処理してクダサイ」


「ちょっとまてよ、弥助(やすけ)。それじゃ、新しい味を試すのはやめだ、やめ!やっぱり、伝統の味は守るべきだぜ」


「ひでよしくん。わいにも兵糧丸の作り方を教えてくれまっか?干飯(ほしいい)は、よく喰っていたからわかるでやんすけど、兵糧丸は作ったことはないんやで」


「え?(よん)さん、兵糧丸作ったことないの?」


「そらあ、そうやで。普通は(いくさ)と言えば、自分とこ以外の領地の畑から野菜とかを引っこ抜いて食べるんや。わざわざ、下級兵士が自分でご飯を準備すること自体がないんやで?」


 言われてみれば、そうだった。信長が変なだけだった。相手の領地からの略奪を禁止してて、それで、俺たち下級兵士たちに3日分の兵糧を作っておけって話だわな。他は違うんだったわ。


(よん)さん。とりあえず、弥助(やすけ)さんが持ってきた材料をすり鉢に入れて、すり棒でこねてくれ、ますか?で、粘りがでましたら、こぶし大に丸めてください。そのあとはセイロで蒸しますので何個か作ったら、もってきて、ください」


「わかったんやで!美味しい兵糧丸を作ってみせるんやで。ほっぺたが落ちるような味わいを出して見せるんやで」


 (よん)さんは、ふんふんふーんと鼻歌まじりにすり棒を回している。


 俺は少し不安な気持ちになりながらも、(よん)さんの作業を見ていることにする。


「こぶし大ってこれくらいやんな?」


 (よん)さんがリンゴよりも大きな塊を作る。


「ちょっと、(よん)さん、大きすぎ、ですよ。私の手の大きさくらいでお願い、します」


「なんや、そんな小さいのでいいんでっか。それならそうと早く言ってくれや?」


 (よん)さんがリンゴ大の兵糧丸を半分にちぎって、丸くこねている。


彦助(ひこすけ)、手が止まっているんだぶひい。しっかり働けなんだぶひい」


「おっと、悪い悪い。(よん)さんがまた何かしでかすんじゃないかと心配でさ。つい、そっちのほうに眼が向いてたわ」


 俺は再び、おにぎりを握る作業に戻る。おにぎりの具は鰹節に味付けしたものと、梅と、今回、新たに塩昆布も試してみる。うひょお、美味そう。ちょっと食べてみていいかな?


彦助(ひこすけ)、つまみ食いするなら、僕も味見をしてやるんだぶひい。1つ寄越せなんだぶひい」


 俺は、塩昆布が入っているおにぎりを半分に割り、田中に渡す。田中は、はぐはぐとおにぎりを口に含み、茶をずずうと飲んでいる。


「お?この具は昆布ぶひいか?茶にぴったりなんだぶひい」


「そうだろ?ちょっと、調理場に行ってきて、塩昆布を分けてもらったんだよ。それをおにぎりの具にしてみたわけよ」


「さすが、食にはうるさい彦助(ひこすけ)なんだぶひい。僕の分のおにぎりに、塩昆布が具のやつを握っておいてくれだぶひい」


「ああ、いいぜ。しっかし、魚を火であぶったものを具にしたいんだが、夏だからなあ。痛むのが早くて具に使えないのが残念だぜ」


「そう言えば、前に鮭のあぶり身をおにぎりの具にしたいって言っていたぶひいね?僕は食べてみたいんだけど、夏場に魚はきついぶひい。まあ、干し魚の身でもほぐして入れてみるってのはどうぶひいか?それなら日持ちもすると思うんだぶひい」


 干し魚かー。調理場を覗けば何かあるのかなあ?俺はそう思い、調理場の方に田中と一緒に足を運ぶことにする。


「イワシにイカに、メザシの干し物かあ。お、海老があるじゃん。海老を具にするのもいいんじゃねえか?」


「海老ぶひいか。それは美味そうなんだぶひい。あとイカなんかもいいんじゃないぶひいか?味噌に漬けたものなら、日持ちもするんだぶひい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ