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煌空の輪舞曲 〜Ronde of the sky-universe Seare〜  作者: 暁ゆうき
第九章 メルセニアの亡霊
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狂気の果て 後編

 水路にかかる石橋から、水の流れるのを眺めていた。一瞬たりとも同じものではない水の流れ。目で追っていると、時折うねるような不規則な動きをしている。

 この無常観、純粋で原始的な自然の流れの前では、観念であるところの生死など、さほどの意味を持たないのではなかろうか。思うに、人は水の流れの中にあって、常に流されている。例え舵を取らなくとも、舵取りが上手くなくても、命はあるがまま、辿り着くべきところへ流れてゆくのではなかろうか。価値と呼べるもの、その優劣など無縁な場所へ──。


 深く透明な水の流れから現実へと戻ってくると、レゼリスは長いまつ毛を伏せながら、静かに呟いた。

「ドゥハルグ……何で、あんな事をしたんだ……」

 賊に手を貸し、殺戮を演じた。自分の知っているドゥハルグは、そんなことをする人間ではなかったはずだ。一体どうして、彼はここまで変わってしまったのだろう。

 そして──ドゥハルグは、あれからどうなったのだろう。公開処刑が中止になり、広場から連行され、政府関係の建物に連れ込まれるところまでは後を追うことができた。ドゥハルグの姿を見たのは、その時が最後だ。あれから一晩が経つ。彼は今どうしているだろう。あの建物の中で、何が行なわれているのだろうか。

「ああ、僕はこんなところで何を迷っているんだろう。こんな朝早くに、宿を飛び出して来たっていうのに……」

 考えるほど、何が正しいのかわからなくなってくる。今、流れに逆らわない行動とは何だろう、自分はどうすべきなのだろう。

「もう答えは出ているはずじゃないのか。まさか、このまま彼の思うようにさせておくのが一番いいなんて、そんなことないだろう? それが彼のためってことがあるかい? それは見殺しにするってことじゃないのか? 僕はそれで、何もしないままでいいのか?」

 レゼリスは繰り返し自分に問いかけた。少し肌寒い空気に、気持ちが研ぎ澄まされる。

「──だめだ。やっぱり放って置くことはできない。どうしても、もう一度会って話をしないといけないんだ」

 レゼリスはようやく決心して、ドゥハルグが消えて行った建物の方へと歩き始めた。行く先で門前払いを食ったとしても、あるいは捕らえられようとも、最後まで彼との面会を求めるつもりである。


 *  *  *、


 最初から本題に入るわけでもなく、審議などという回りくどい方法で色々と探りを入れてきた。それだけ、自分に興味があるということで間違いない。悪い気はしないが、ドゥハルグはますますじれったくなってきた。

「なあ、もういいだろう。いい加減、話を進めようぜ。何故あんたは俺を助けた? ただ話したかった、てのはもう無しだぜ。……あるんだろう? 処刑直前の男が助かる程の理由が」

「うむ、そうだな。こちらもそろそろ、本題に入ろうと思っていたところだ」

 そうしてバルナザームは用済みとばかりに、手にしていた冊子をテーブル上に投げ捨てた。

「……あるいは察しの通りであろうが、此度はぜひともうぬに引き受けて欲しい仕事があってな……」

 額飾りの奥にある瞳が、妖しげな赤い光を放った。それは人間の眼の光ではない。恐怖と魅惑に満ちた眼光である。そこにあるのは、深い闇に引き込もうとする危険な誘惑である。懐の深い闇の抱擁とは、時に人の心を惹き付け、魅了し、虜にするものだが、しかしドゥハルグは決してその程度で心を奪われるような弱い信念の男ではなかった。

「なるほど、仕事の話か。そうだろうと思っていたぜ。……でもよ。悪いが、仕事の話ならお断りだ」

「ほう。返答次第では、うぬに残されるものは、冷たい死の抱擁のみである。にも関わらず、我が頼みを聞きもせず、頑なに断るというのか?」

「ああ。あいにくだが、そうだ。あんただって、そんな脅しが無駄だってことくらい、わかってんだろう? ……俺はもう死ぬ予定の男だし、こっちから助けてくれなんて頼んじゃいねえ。これ以上の長生きは、もう御免だね」

「おい、閣下のご慈悲をないがしろにするつもりか、貴様は。このままでは再び死刑を受け、今度は誰の目にも触れず、死んだことすら知られないかもしれんぞ。それは貴様の本望ではあるまい?」

 宰相の従者が忠告にも、ドゥハルグは耳を貸さなかった。今の彼の認識は、処刑を免れて牢屋で夜を過ごし、そのせいで少しだけこの世にとどまる時間が延びた、程度に過ぎない。今の彼にはもう、自分が生きているという自覚はほとんどない。ドゥハルグという人物はもうあの時、処刑台の上で死んでいるのだ。

「もう行き着くところまで行っちまったし、この上、生き恥をさらすつもりはない。今度こそ、まっすぐ地獄に行きたいところだ。何なら、反逆罪とかで今すぐ殺せばいい。必要なら、あのラーテルロアの一件を持ち出すことだってできるんだろう?」

 ただ静かに、自身の諦観を語るドゥハルグ。だが、そんな彼の様子を見て、バルナザームは何やら急に笑い始めた。

「……何が可笑しいんだ」

「血を好む死神の、相当なる豪傑を予想していたのだが……。いやはや、ここまで愛らしい男とは思わなかった。死を望みし死神、まるで玩具欲しさに駄々をこねる子供のようではないか。しかも、死に方にまでこだわっていたとはな。……全ては、純粋さの成せる業であろうなあ……ククク」

「てめえ! ふざけるな!」

 暴れて宰相に飛びかかろうとするドゥハルグを、周囲の兵士が慌てて取り押さえた。自由を奪われている身体とは言っても、彼の発揮する力は並外れている。彼が冷静になるための時間を十分費やしてから、バルナザームは改めて説得を開始した。

「では、死神よ、問おう。口では死を望みながらも、うぬのその目はまだ死んではいない。明らかに、希望が残されている者の目だ。あるいは、本当は何か心残りがあるのではないのか?」

「そんなもの、あるかよ。俺には、ガキの頃から家族はいない。ずっと自分一人の力で生きてきたんだ。だから、見送ってくれる人間も、残す人間も……」


 言葉を紡ぐ途中で、どうしても脳裏に一人の人間の顔が浮かんでくる。その友人の哀しみに満ちた顔を吹き消すために、彼は歯を食いしばりながら言葉を繋げた。


「……いねえ」

「そうか……。いいだろう、まず我もそう簡単に説得できるとは思ってはいなかったところだ。自分の信念を貫く男、そこは予想通りである。だが、予想が外れた部分もある。例えば、死を免れた一命の恩。うぬは全く感じておらぬようだが、これに関しては本来、義を重んじるうぬらしくはあるまいぞ」

「……昔とは違うからな、もう義理人情に愛着はねえ。……だが、まあこんなんでも一度は捨てた命だ。こうしてまだ生きていることに、若干の巡りあわせを感じなくもねえ。あんたに助けてもらったつもりはこれっぽっちもないがな……」

 そう言うドゥハルグの態度と表情は、当初よりも柔和になっている。それにより、実際には全く恩義を感じていない、というわけではないことがわかる。

「よかろう。ついでにひとつ付け加えておくが、うぬが死を望みて悪事を働いたことは、会って話をする以前からわかっていたことである。それくらいの推察が出来ぬ我ではない」

「じゃああんたはそれがわかっていた上で、俺を殺したくなくて助けたっていうのかい? あんたのようなお偉いさんのことだから、俺を助けるなんてのは酔狂だとばかり思っていたが」

「決して酔狂などで救ったのではない、と明言しよう。シーレ最強の傭兵と謳われるうぬに仕事を依頼できる好機が訪れたのは、我にとっては僥倖ぎょうこう以外の何ものでもなかった。この国出身であるうぬの勇名は、日頃から誇りに思うところでもあったが、ここで実際に言葉を交わし、よりその思いは強まった。価値のある人間を死なせる理由などない」

「口説き文句も上手なようだが、男相手じゃあな。どうかと思うぜ」

「我が言葉に耳を傾けよ、ドゥハルグ。うぬは狂人とは違う。死に取り付かれた憐れな死神に過ぎぬ。何時においても、死は容易く、敢えて死に急ぐこともあるまい。ここはその命、しばし我に預けてみるつもりで、我が依頼の内容でも聞いてみぬか? あるいは、より良き死に場所となり得るぞ」

 死に場所、という言葉にドゥハルグは反応した。目の前の妖しい男がどれだけ自分のことを理解しているかは測りかねるが、少なくとも口にする内容に関しては、ドゥハルグの枯渇しきった好奇心やら生存欲求やらを刺激するくらいの魅力は持っていた。

「……そうかい。じゃあ、試しに話してみなよ。聞くだけは聞いてやるさ。受けるかどうかは、それから決めさせてもらうがね」

 ドゥハルグの言葉を受け、バルナザームは満足げに頷いてから、静かに依頼の内容を語り始めた。


 ──メルセニア極北空域にある離島群は、厳しい自然環境と落差の激しい入り組んだ地形により、居住地としては適さないため、資源目的以外ではほとんど見向きもされずにきた場所である。

 ところが、近年重点的に行なわれてきた領土調査によって、離島の渓谷にロスト・エラの遺産と思わしき巨大な建造物が発見された。

 それ以来、断続的に内部の安全確保と探索が並行して行なわれてきたのだが、無数に巣食う凶暴な魔物達のせいで調査は困難を極め、建造物の全貌は未だに明らかになっていないという状況である。

 この遅々として進まない調査と魔物討伐に加え、さらに予想だにしない事件も起きた。建造物の中核まで進んだ調査部隊が、一匹の奇妙な獣と遭遇したのである。

 その魔物は強大な上に相当に知能が高いらしく、人の言葉を喋り、自らその名を語った。


『──我は神獣。神獣、ラフ・ラリングス。人間よ、命惜しければこの場所に関わる事なかれ。ここは汝らが手を出すべき場所ではない。今後、決して踏み入るべからず。さもなくば、我が全霊の力をもって汝らを屠ることになろう』  


 自らを神獣と名乗る魔物の登場。メルセニアがその正体を調査するうちに、それがただの魔物とは区別すべき桁違いな存在であることがわかってきた。

 世界に残された伝承、叙事詩と照らし合わせたところ、その生物がロスト・エラ以前から生き続ける伝説の神獣、ラフ・ラリングスで相違ないとの結論が出た。

 

「──と言うわけだ。我々としては、たとえ神獣に脅されようとも、古代文明の力を入手する機会を逃すつもりはない。いやむしろ、そのような獣が護るものだからこそ、その力を手に入れなければならぬ」

「そんな大昔の遺産を手に入れてどうすんだよ。あんた、失われたメナスト・テクノロジーを蘇らせるつもりじゃないだろうな?」

「うぬがそこまで知る必要はない」

「……まあ、いいさ。戦争でどの国が勝とうが、俺にとっちゃどうでもいい事だし、教えてくれなくても結構だぜ。肝心な依頼の内容は理解したつもりだ。その遺跡の魔物掃除と、ラフ・ラリングスを殺すのを手伝えってことだろう?」

「その通りだ。見かけによらず察しがいいな」

「俺に出来そうなことが他にねえからな。……だがよ、どうも引っかかるところがあるんだが」

「何だ?」

「実際問題として、神獣なんて相手と殺り合って勝てる見込みがあるのかってハナシだ。例え俺一人が頑張ったところで負け戦。参加者全員あの世逝きってのが関の山だろうぜ」

「その点ならば、心配はいらぬ。この作戦には、我も合流する手筈となっているからな。勝算なき作戦を立てたりはせぬ。神獣の奴を永久の闇に葬ることは不可能ではなかろうぞ」

「おいおい、あんた自分で何を言ってるのか、わかってんのかよ?」

「クク……さあな。戯言と思うもうぬの勝手である。いずれにしても、うぬらはただ善戦し、あわよくば神獣を弱めてくれればよい……それだけの話だ」

(何なんだ、こいつは……)

 その大言壮語が戯言でないとすれば。こいつは狂っている。

 ──否。ドゥハルグは面白く感じた。短い時間の中で、話し相手の力量を見抜いていた。神獣と呼ばれるような魔物を倒す方法──それがどういったものかは想像もつかないが、間違いなくこのバルナザームにはラフ・ラリングスを倒す確かな自信と策があるのだ。ドゥハルグはそう考え、漆黒のローブに身を包んだ、目の前の怪しい人物を見据えた。

「はん、宰相閣下さんよ、聞いてりゃあんた大した自信家だねえ。……だが、嫌いじゃないぜ。そういうの」

 ドゥハルグはにやりと笑った。

「ふふ……では、そろそろ結論を聞かせてもらおう。死神よ、この依頼を受ける気はあるか?」

「……そうだな」

 すでに、答えが出ていた。

 この時、ドゥハルグの気持ちはラフ・ラリングスという強大な魔物と対峙したいという欲求に支配されていたのである。

「まあ、面白そうだしな。……やってやるよ」

「そう言ってくれると思ったぞ」

「だが、条件がある。俺の望みはあくまで、その神獣と殺り合うことだ。全力で仕事はするが、やり方は俺の自由にさせてもらう。あとは俺が既に死んだ人間だと言うことを忘れないでくれ」

「かまわぬ。仕事をこなした後はうぬの自由だ。好きな道を選ぶがよい。神獣と殺り合って命果てるのも、戦いの中で生きてきた者としては本望であろうしな」

「それから、あとひとつある。報酬に関して、別に頼みたいことがあるんだが」

「言ってみるがよい」

「すまねえ。これは、あんたの地位を見込んで頼むんだが──」

 その時。

「──閣下、お話の途中、申し訳ありません。……少々、よろしいですか」

 やって来た衛兵が、二人の会話に割り込んできた。

「どうしたのだ、衛兵長。何かあったか?」

「はい。実は今、門前にこの傭兵との面会を求める不審な人物がやって来まして……。その男、何やら旅の詩人風の身なりで、素性を質したところ、自分はこの傭兵の友人だ、と言い張っておりまして。よほどこの男を助けたいのでしょう、罪状が無実無根だと騒ぎ立てたり、我々に食って掛かったりと、態度が大変無礼なので、ひっ捕らえて痛めつけてやろうとも考えていますが、いかがいたしましょう。閣下のご判断を承りたいのですが……」

 それから衛兵長は、さらに細かい来訪者の特徴を告げた。それを聞いたドゥハルグには、思い当たる人物が一人だけあった。

「……! レゼリス……」

 忽ち変化したドゥハルグの表情を、バルナザームは見逃さなかった。

「死神よ。どうやらその友人を自称する男の素性に、偽りは無いようだな?」

「ああ……間違いない。俺の……古くからの友人だ」

 そう語るドゥハルグの様子は目に見えておかしい。彼らしくもなく、全身で狼狽の色を表している。

「ふむ。まあ、そう案ずることはない。手荒な真似はさせぬ。何なら、今すぐ会えるように取り計らおうぞ」

「すまねえ、そうしてもらえると助かる」

「……衛兵長。聞いていたであろう。その男を、ここへ連れてくるのだ。……丁重にな」

 バルナザームの計らいで、両者の面会が許された。間もなくしてレゼリスがこの場に現れ、それと同時にドゥハルグを拘束していた器具の類は全てが外された。

 ドゥハルグには、宰相の依頼を遂行するという条件付きでの自由が約束されたのである。

「ドゥハルグ! 無事で本当に良かった」

「おう、レゼリスよ。とんだ無茶ぶりだな、全くお前にゃ敵わんぜ」

「それはこっちの台詞だよ! 何でこんなことになったんだよ。どうしてあの時、相談してくれなかったんだ。全く訳がわからないじゃないか」

 ドゥハルグにしてみれば、自分に関わるのをやめさせるように仕向けたはずが、思い通りにはいかなかった結果だ。まさかレゼリスがここまで大胆な行動をするとは、思いもよらなかったことだ。

「悪いな。その内、ちゃんと説明するからよ……許せや」

 ドゥハルグは申し訳なさそうに頭を掻いた。レゼリスは何だかんだ言って、ほっとした表情でその様子を見つめている。

(……ほう。これもまた、非凡な素材ではないか。資質者が二名か──、今日は本当に運が良いことだな……)

 この時、バルナザームは傭兵と詩人を交互に見て、特に一方のレゼリスの男性とは思えない美しい容姿と雰囲気に何かを感じ取り、また確信したようであった。


「よお、宰相閣下さんよ。一応言っておくが、こんなので貸しを作ったとか思わないでくれよ。元々、こいつは俺と違って、咎められるほどの罪はないはずだぜ」

「案ずるな。うぬの友とあらば、門前での騒動の罪など一切咎めずにおこう」

「……だってよ。良かったな、レゼリス」

「ありがとう。問題になることはわかっていたけど、予想以上に門番が取り合ってくれないものだからさ、つい熱くなってしまって……」

「気持ちはわかるけどよ、さすがに無理だろうが。この上、お前まで罪人扱いされちゃ目も当てられねえぜ」

「そんなの、覚悟の上だよ。いざとなったら忍び込もうとさえしていたからね」

 そんなことを言いながら、レゼリスは無邪気に瞳を輝かせている。

「……ったく、俺よりも命知らずなんじゃないのか、お前は。どんな肝っ玉してやがるんだ」

 ドゥハルグはお株を奪われた格好だ。

「そんなことよりもさ、結局のところ君の罪はどうなったんだい? すぐに帰れるの?」

「あー……と、それなんだが、話がちょっと妙な方向へいっちまってな。せっかく来てくれたところ悪いんだが、俺はこの閣下から仕事の依頼を受けたんで、しばらくこっちの世話にならなきゃいけなくなった。監視下っつーのかな、まだ釈放されたってわけじゃねえから、帰るわけにはいかねえんだ」

「えっ、……しばらくってどのくらい?」

「まあ、長くても数日ってところだと思うんだが……、とにかく仕事が片付くまでは自由になれそうもないんだ。お前の厚意に対しては、本当に感謝してるしてるんだが、こればっかりはな……」

「そう……わかったよ。そういうことなら、仕方がないね」

「すまんな、レゼよ」

「気にしなくていいよ。こうして君の無事がわかっただけで十分だし。今生の別れってわけでもないんだから、また会おうよ。僕はしばらくこの街に留まって、あの酒場で古臭い詩でも詠ってるからさ──」

 今生の別れ……実際は、それもあり得る依頼の内容である。しかし、それをレゼリスに話したら、また心配をさせることになるだろう。たとえ、これが話をする最後の機会であろうともだ。ドゥハルグは余計な事は言わずにおいた。

「……ああ。必ず行く」

 ドゥハルグが生きていることがわかっただけで、レゼリスは十分に満足だった。彼は笑顔を作ってから部屋を後にした。一方、ドゥハルグは引き続き、バルナザームと報酬についての交渉をしたようであった。

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