5−2 「予兆 〜古代メナストの胎動〜」
一階に下りて台所を見ると、クエインはすでに食卓に着いていた。テーブル上にはトマの作った彩り豊かな料理が並べられている。
アーシアとクエインが二人で暮らしていた頃は料理は分担して作っていた。クエインは一人で暮らしてきた人物なので料理はできたし、家庭的なことがまるで苦手そうに見えるアーシアもクエインのおかげでそれなりに調理をこなすことができるようになった(ずいぶん時間はかかったが)。
トマが作る料理は意外にも非常に美味で、時には手の込んだ本格的な料理が出されることもある。トマ本人曰く、料理人を志したこともあるらしい。人間誰しもひとつくらいは取り柄があるものだ。
「アーシア様、ご存知ですか?」
食事の最中、召使いトマがアーシアに尋ねた。
「何?」
「各国の古代学者が一同に会して、大規模な情報交換会をするらしいですよ」
「ふぅん……」
学者たちは古代技術の研究に執念を燃やす。学術的興味、探究心、研究対象としてのロスト・エラは非常に魅力的だ。
それに対して、ロスト・エラの研究、分けてもメナスト・テクノロジーの研究は無意味だとする意見も多い。古代のテクノロジーを研究したところで、その当時の技術や魔術を復元することは事実上不可能とされているからだ。根本となる部分の、古代の強力な魔晶エネルギーを扱う術が失われているために、ロスト・エラ当時の技術を甦らせることが不可能になっている。今のシーレの人間にはメナストを扱う資質がほとんどないためだ。
だが、シーレの人間は古代技術を解析して結晶化を始めとする独自の魔晶エネルギー利用技術を開発したわけだから、必ずしもそれが人間の生活に無関係というわけでもない。古代のレプリカたる技術ではあるが、研究は確かにシーレに新たなる発展をもたらした。
「……で。それって、各国の提携とは違うの?」
「はい。研究者じゃなくて学者たちの情報交換ですから」
「それなら、問題ないかも。ね、おじい様」
「……そうじゃな」
クエインが話し始めた。
「ロスト・エラ当時の遺跡やら遺物やらは、ごく僅かではあるが今のシーレに残されておる。だが、それを発見して研究したところで、今のシーレの人間たちには用途すらわからん。古代術しかり」
ロスト・エラの名残が残されている大陸もある。それは当然研究者たちの格好の研究対象だが、それ以上の物でもない。クエインには憂いがないわけではないが、自分のように古代術の運用法を知っている者さえいなければ、ロスト・エラの技術が応用され、軍用に利用されることがないこともわかっている。
「神石とか発見されても、どうすることもできないわけだし」
「なんですか、コアって」
トマがそれを知っているはずもない。
「金属球体よ。メナストに反応する、超テクノロジーの」
アーシアは簡潔にそう言った。魂を宿すことで、転生術の媒体ともなる金属球体。説明すれば長くなるし、実際は謎が多くてクエインもアーシアもコアの全てを知っているわけではない。
「まあ、あれはロスト・エラの遺物ではない。超古代の産物だと言われておる」
「ややこしいんですね」
複雑怪奇な古代の遺物たち。トマには理解しきれなかったようだ。
「まあ、とにかく、特に問題はないってことですか……」
そう言ってから、トマは自慢の料理をフォークで口に運んだ。
* * *
「ごちそうさま、トマ」
「あ、食器は置いておいていいですよ。僕が片付けますから」
食事が終わり、ゆるりとした時間が流れだした。
「あなたはいい旦那さんになれそうね」
アーシアが背後から語りかける。トマは食べ終わった食器を大体洗え終えたところだった。
「そうですか?」
「うん」
「アーシア様に褒められると何だか照れます」
いつも彼女にからかわれてばかりのトマ。急に褒められて困っている様子である。彼ほど純粋な男も珍しい。
「まあ、男としてあまり頼りにはならなそうだけどね」
(ほら、やっぱり一言多い……)
これが、いつものパターンである。
「ふふ、嘘だってば。いつもありがと──」
……ドクン。
瞬間、アーシアの両眼が見開かれる。
「……!」
それは不意に襲ってきた、得体の知れない感覚だった。
「何? 今の感じ」
疼く様な発作に加えて、重圧感と底の知れない力をも感じた。
「どうしたんですか? アーシア様」
トマが心配そうに、彼女の顔を除きこんだ。
「アーシア、お前も感じたか」
そう言ったのはクエインである。彼も感じたのだ、魔力の流動を。
どこか遠くで膨大な量のメナストが発生したのかもしれない。余りにも一瞬の出来事であったけれども、妙な胸騒ぎは続いた。
アーシアは家の外に出たが、見える範囲に変わった様子は無い。異変を感じた方角の空をじっと見つめていると、クエインも家から出てきた。
「おじい様、今のは何かしら」
常人は何も感じないが、二人は確かに膨張したメナストが波動となって伝わってくるのを体感した。どこかで爆発的な魔晶エネルギーの発生が起きたに違いない。しかしそれを発生させるだけのテクノロジーが、今のシーレにあるとも思えない。
「今のは……。いや、まさかのう」
「一体どうしたんですか、お二人とも」
食事の後片付けを終えたトマが、何事かと思って出てきた。
「何もなければいいんだけど」
感じたメナストの強大さに一抹の不安を覚えながら、アーシアは遠くの空を見つめ続けた。
* * *
──果たして、その数日後。
アーシア達の元に、帝都からの使者がやってきた。
「クエイン様、ロシオウラ様がお呼びになっております。お迎えに参上しました」
帝都から来た官吏が用件を述べた。
「むう」
「おじい様、行った方がいい気がします」
「迎えが来るなんて。帝都で何かあったんですかね」
そう言いながら現われたのは、クラシックなエプロン姿が妙に似合っているトマ。ほうきとちりとりを装備したその姿は、さながら手だれの使用人であった。
「帝国軍部はアフラニールへ進攻するための準備を整えているらしいですからね。またアーシア様の力を借りたいとか言い出すんじゃないですかね」
トマの眉間にしわが寄る。それは中央政府の勝手な都合や国同士の問題にアーシアを巻き込んでほしくないという、彼の切なる気持ちの表れであった。
「いいえ、呼ばれたのはおじい様であって私じゃないわ」
「むう……これは只事ではなさそうだ。アーシア、すまんが一緒に来ておくれ」
「はい」
クエインの願いを聞き届けたのち、アーシアはトマに語りかけた。
「そういうわけだから、トマ。くれぐれも留守番よろしくね」
「うええっ。僕、また残されるんですか」
「ごめんなさい。でも、あなたしかいないの。お願いよ」
両手を合わせて頼み込むアーシア。
「本来、ご一緒しないといけない立場なんですよ? 僕の役目は……」
「それは知っているわ。でもさ、ほら。行き先は帝都だし、中央の官吏が同伴だから、多分大丈夫よ」
「うーん、まあ、仕方がないですね。わかりました」
トマはしぶしぶといった面持ちではあったが、承諾した
「ありがとう。先方には私から話を付けとくから心配しないで。……あと、すぐに戻ってこれるとは思うけど、もしマリーちゃんが来たら相手してあげてね」
漆黒のマントを翻し身にまといながら、アーシアがそう言った。
「支度はお済みですね。では、こちらへどうぞ」
帝都からの使者がアーシアとクエインを誘い、二人はそれに従う。街の外縁から幾らか離れた平地に、魔晶飛行艇が泊められていた。
「へえ、見るからに新しい船ね。ずいぶんと小さい」
「完工したばかりの、小型高速艇です。帝都まで短時間で行けますよ」
国の科学技術の粋を語るような、官吏の自慢げな口調である。そんなもの、私の妹の速さと比べれば大したものではない。アーシアはそう思ったけど、口にはしなかった。
(張り合っても仕方ないわね。それに、あの子はこっちに居るの凄く疲れるみたいだし)
移動手段としてリシュラナを頼れば、驚くほどの速度で目的地に着けよう。だが、リシュラナがこの世界に召喚されて活動するのには相当な消耗があるので、距離的・時間的な限界が存在する。それに、自分の都合で気安く妹を頼ることは、なるべくならしたくなかった。
アーシアとクエインを載せると、船は間もなく上昇を開始した。
魔晶船の動力源は魔晶石より生じるエネルギーである。地球の航空機のような速度は到底出ないが、プロペラが推進装置なので垂直離着陸ができ、滑走路が必要ない。
この新造船は速度性能を特化させているらしく、そのスピードはアーシアの想像よりもずっと速かった。これだけの性能がある船を建造できるなら、トラシェルムの造船技術も捨てたものではないようである。
アーシアは窓から横目であっという間に遠のいていく陸地を眺めた。ここは広大なトラシェルム大陸。自分たちの生まれ育った村はもう存在しないが、それでもこの大陸は自分の故郷には違いない。
──見れば、大きな川が流れている。
「水の流れ、か」
だが、それは天然の川ではなかった。水を循環させるために作られた、人工的な水路である。
「何を見ておるのじゃ?」
隣の席に座っているクエインが、アーシアに声を掛けた。
「うん……」
適当な返事をした後は、クエインの方を向こうとはしなかった。彼女は相変わらず窓の外に目を向けている。窓に反射して映った彼女の表情は、いつになく物憂げだった。
「シーレでは、空のことを海って呼んだりするけど、本当の海ってどんなかな、って思って」
「……海か。文字や絵では見れても、実物は見れないじゃろうな」
海が存在しないシーレでは、自然的な水の循環が限られている。そのため水は重要な資源であり、都市部の水路は見事なまでに管理されているが、人里離れた農村に住む人々や、それほど豊かではない地方で暮らしている人々は、今も自然の水源に頼っている。水道技術が進んだ現在でも、井戸から地下水を汲み上げたり、美しい小川の清水を使ったりして生活している場合も多い。
だが、山から流れ出た水が川になっていても、また湖から流れる水があっても、それが行き着く先がない。海を失っているシーレでは、水の流れ出る場所がないのである。
「……地上世界は存在するのかしら。キャニノゥの、魔晶素の雲の下に」
「キャニノゥはあらゆるものの存在を許さない、メナストの飽和層じゃ。我々に大地の存在を確かめる術は無かろう」
クエインはそう言ったが、アーシアはこの時、まだ見ぬ大海原に想いを馳せていた。
* * *
それから飛行すること、しばらく。
巨大な城塞都市、帝都トラシェリアが見えてきた。
アーシアにとっては、しばらくぶりの帝都である。
帝都第二層の中央港に、二人を乗せた魔晶艇は着陸した。
「また、ここに来る事になるとはね」
巨大な港には数え切れないくらいの船が停泊している。
でもそこは軍港ではなく、一般の空港だ。一応アーシア達の乗ってきた船は軍艦なわけで、それが一般の空港に着陸するのは少し解せない。
「今、軍港は戦争の準備で大変なんですよ。造船が進んで軍艦がドッと増えたものだから、とてもじゃないけど手狭になってきたんです。軍港は今は拡張工事の真っ最中で、やむなく一般の港を利用しました」
役人の一人がアーシアにそう説明した。
居住区にあるこの中央港からだとかなりの距離があるが、二人はそのまま直接城に向かった。帝都中央を分かつ大水路に架かるセディナ橋を渡り、政庁施設や軍事施設のある帝都の第一層へ。正面からトラシェリア城内へと入った。
城内は事の外慌しい。さっきの役人の言ったとおり、アフラニール公国に対する戦闘準備が進んでいた。今度はトラシェルム側が攻勢にでようというのだ。
「私のしたことは、結局、戦争の手助けか。また人が死ぬのね」
アーシアは苦々しげに言った。
「トラシェルムは降伏を勧めておるようじゃがな。ミュリオン様は覇王といわれた先帝に比べると温厚で、野心の少なき方のようじゃ。好んで戦争をしはせんじゃろうな」
「陛下がそうでも家臣はどうかしらね。陛下は若いから、実権は無いみたいなものじゃない」
「しっ、そういうことはもっと小声でしゃべるのじゃ」
クエインが、歯に衣着せぬ物言いのアーシアに釘をさした。城内では滅多なことは口にしない方が良い。
「まぁ、ロシオウラ様がいる限りは安心じゃろう。トラシェルム戦役の際、あの人は誰しも畏怖した覇王ベルギュント様に最後まで仕え、忠義の諫言をしていた。先帝ベルギュント様は策を好まない方であったが、ロシオウラ様の言うことだけは聞いていた。誰もが、下手に物申せば首が飛ぶと恐れておったのに、ロシオウラ様は物怖じせずに自分の意見を述べた」
「ふうん」
「ロシオウラ様は政治家だったが、軍略に関しても右に出るものはいなかった。そのために彼のおかげでリ・デルテアはいくつもの国をほとんど損害なく手に入れ、電撃的に侵攻することができたのじゃ」
「すごい人なのね。でもその割に大陸統一に随分時間がかかったじゃない」
そんなことを話していたときである。向こうから巨漢の騎士がやってきた。軍部の最高責任者、ナーバ元帥であった。
「元帥閣下、ご機嫌うるわしゅう」
すれ違う直前、クエインが挨拶をした。しかしナーバは一瞥しただけで、何も言わずに通り過ぎてしまった。
「あんまり歓迎されてないみたい」
「認めるのが嫌なんじゃろうて」
「それじゃ、きっと私のことを化け物か何かだと思ってるでしょうね」
二人の到着を聞いた摂政ロシオウラが、多忙の合間を見計らって自ら二人の前にやってきた。
「おお、クエイン先生。アーシア殿も一緒か」
「ずいぶんと城内が騒がしいですな」
攻勢に出ようという準備だけではない。どうやら防衛戦に備えて、防空強化も怠っていないらしい。先の戦いで空戦と国防における遅れを痛感したのだろう。国内全体で対空防御力の強化も推し進められていた。
「忙しくて、人手が足りんくらいですよ。戦争準備というやつは手間と金がかかって仕方ありません」
ロシオウラは二人に歩調を合わせながら、色々と現状を語った。
「わしの部屋で話をしましょう。あまり人に聞かれたくないですしな」
三人はロシオウラの自室に入った。そこは思ったよりも質素で、家具などもすべて木製であった。本棚には難しい本がところ狭しと並べられている。
「さて、先生ならばもうお気づきになられてるかもしれませんが」
二人に椅子を勧めながら、ロシオウラはすぐさま本題に入った。
「先日、不思議な現象が起きましてな。事の仔細を聞くに、ただ事ではないと思いまして」
確かに数日前、クエインとアーシアは妙な感覚を覚えた。何かが起こったと思ったが、あれは気のせいなどではなかったのである。
「どうも古代の力に関係しそうなものだったので、先生にお越しいただいたわけです」
ロシオウラはそう言った。しかし、わざわざクエインを呼び寄せることまでしたのは恐らくロシオウラに別の思惑があってのことだろう。もしかしたら、ロスト・エラの研究をあきらめていないのかもしれない。
クエインはそこまで見抜いたが、今はそれを追及する場合ではないと考えた。
「して、どんな現象が起こったというのですかな。教えて下され」
「実はですな、情報を収集した結果、イヴェロム大陸で光の柱が天に向かって昇ったのを目撃したという知らせが入ってきたのです」
クエインはそれを聞くと、大きく目を見開いた。
「むむっ、何と! やはり……只事ではなかったか」
「おじい様、それって……?」
「恐らく……、ファバース」
──ファバース。
その名前を、アーシアは本で読んで知っていた。ロシオウラもまた同様だった。ファバースはロスト・エラに関する語句とされているが、珍しく一般に浸透している言葉で、教科書に載るほど有名である。
「ファバース! 冥界の門と言われる、あのファバースですか?」
ロシオウラの問いに、クエインは頷いた。
しかし、実際のところ、ファバースに関する情報は乏しい。最も詳しいと思われる古書には「冥界の門」と書いてあり、そして「天高く光の柱を巻き起こす」という説明が記されていた。
また、ファバースはロスト・エラ以前から存在していた代物とも考えれられている。つまり超古代と言われる時代の、伝説上の遺物だ。そんな訳だから情報は足りず、具体的にはどのようなものかわからない。
「まさか、そんな古い代物が今なお存在し、機能しているとは」
ロシオウラは驚愕し、また一方で戦慄した。
「冥界の門というくらいです、あの光は何か、恐ろしいことがこの世界にもたらされるということなのでしょうか……」
「調べてみんことには、何が起こったのかわからぬが……」
クエインとアーシアがあの時に受けた感覚から察すれば、多少なりともメナスト……つまり魔晶のエネルギーを利用した何らかのテクノロジーによるものに違いない。そうなれば、ここはやはり学者であるクエイン自ら行くべきであろうか。
「しかし、調べるにしても、イヴェロム大陸は他国が領有権を主張しておる物騒な土地」
ロシオウラの言うとおり、まだまだ未開の土地とされるイヴェロム。小国が陣取っては小競り合いをしたりして、縄張り争いが絶えない。表立って兵を送ったりしたら面倒なことは避けられない。
「しかも、光の柱が昇ったとされる中央部は最も未開で危険とされている地域じゃ」
クエインは目を閉じ、腕組みした。イヴェロム大陸中央部は危険に満ちた場所で、人を送るならば最悪の結果も覚悟しなければならない。
「本来ならばわしが行くべきじゃが、あの大陸にはハスキュアンがある。わしは顔を知られすぎておるから行くことはできんな……」
ハスキュアンから逃亡してきたクエインだ。彼は未だに同国から狙われているから、イヴェロム大陸に行くのは死地に向かうようなものである。
「じゃあ、私が行きましょうか?」
はやる冒険心を抑えきれなくなったのか、アーシアがここぞとばかりに志願した。
「トラシェルムは戦闘準備で忙しくて、雑用に割ける人手もないでしょうから。私なら怪しまれずに普通の旅行客として調査に行けるわ」
「なるほど。それなら話が早いですな」
ロシオウラも納得したようだ。下手な人間に任せるよりよっぽど信用できるし、彼女の力ならば多少の困難を退けて任務を遂行できよう。
「多くの危険も伴うが……行ってくれるか、アーシア殿」
「任せて下さいな♪」
「これこれ。言っておくが、これは遊びではないぞ」
アーシアの軽いノリに、クエインが釘を刺した。……と、その時である。
コンコン、という部屋のドアをノックする乾いた音。ロシオウラがドアを開けると、そこには一人の文官が立っていた。
「何じゃ」
「皇帝陛下からのお達しです。アーシア様に、宮殿へ来るようにとのことです」
「そうか、ご苦労」
手早く用件だけを告げると、その文官は去っていった。
「アーシア殿、陛下がお呼びのようだ。宮殿へ向かってくれ」
振り向いたロシオウラは、アーシアに向かってそう言った。
「はい」
椅子から立ち上がると、アーシアは着衣を正した。
「わしはここで、ロシオウラ様と話をしておるよ。くれぐれも、陛下に失礼のないようにな。それから、敬語を忘れるでないぞ」
クエインが、自由奔放なアーシアに念を押す。
「わかってるって。では、行ってきます」
こうしてアーシアは城を後にし、ミュリオンの待つ宮殿へと向かった。