GAME START
その頃、問題の入った封筒を見つけた浩平達は会場に急ぎ戻る。
すれ違う人達は一様に肩を落とし、また新しい封筒を探しに行っている。
『まだ間に合う、正解者は少ないはずだよ。』
会場の中央に立つ紺色のスーツの男性に案内されたテーブルに向かい、
浩平達は封筒を主催関係者に手渡し、解答した。
『間違いない、間違いなく正解だ!』
浩平達には自信があった。それ程簡単な問題だったのだ。
Force関係者が封筒を健吾から受け取ると、深いため息をつき
『無効です。』と一言いうと
浩平達に再び新しい問題の入った封筒を取ってくるように促した。
意味がわからない?優子も遥も呆然と突っ立っている。
4人とも現状を理解出来ない。
『何だよ、無効って!』健吾は主催関係者に食ってかかる。
『皆さん、司会者の話を最後まで聞かれましたか?
ここに来るまでは未開封で無ければ無効なんです。』
関係者から話を聞いて浩平達は愕然とした。
大多数の人達と同じ様に遅れまいと司会者の話を最後まで聞かなかった。
単純であり、致命的なミス。しかも答えに自信があったにも関わらず・・・
そして既に1組目の1次予選通過者も出ていると言うのに・・・
『また最初からやり直しだ・・・な。』
ここに来るまでにすれ違った人達と同じように、
浩平達は肩を落とし部屋を出て行った。
その約10分前・・・
岸谷達4人がテーブルに座ると、Force関係者が向かい側に座る。
『封筒の提出をお願いします。』と岸谷達に促す。
由子は手にした封筒を大事そうに手渡した。
Force関係者は封筒を開封する前に解答までのルールを説明した。
『制限時間は5分です、このタイマーが鳴った段階でお答えをお伺いにきます。
正解ですと1次予選通過です。では始めます。』
説明が終わると問題の入った封筒に鋏を入れ、封筒の中に入った
問題を岸谷に手渡すと同時にタイマーにスイッチを入れる。
タイマーが押された瞬間から、岸谷達4人は問題を食い入るように見る。
問題はこう書かれてあった。
『静寂に包まれた部屋の中、この静寂を壊す一人の人間がいます。
この人は何歳ですか?』
全員が問題を見た途端に固まった。
問題の内容を理解出来ない。
時間は刻一刻と過ぎていく。
この問題の中にヒントが隠されているに違いない。
もう一度ゆっくり読んでみる。
年齢はいくつなのか?
答えは問題文の中にあるのだろう。
時間は忍び足で岸谷達を追い込んでいく。
『もうさっぱりわからないわ。』と奈緒子がまず白旗をあげた。
一幸は問題文を唸りながら、何度も読み返している。
静寂を壊す人・・・
その人は何歳?
時間は迫る・・・
既にこの問題を解くのを諦めたのか奈緒子と由子は
考えてる岸谷と一幸の横でずっとおしゃべりをしている。
真剣に考えている一幸は我慢出来なくなったのか、
『由子、少しは考えなよ。』と
おしゃべり続ける二人に言い放った。
普段の温和な性格の一幸からは見られない一面だった。
確実に険悪なムードが漂う。
その光景を声が大きかったせいか、紺色のスーツの男が見つめている。
『奈緒子、静かにしないきゃ。係りの人見てるぞ』と
岸谷は奈緒子に言った時、頭の中のエンジンが点火した。
『あっ、なるほど!』
岸谷は思わず大きな声を叫んだ。
その岸谷の大きな声を聞いた紺色のスーツの男は、笑顔で岸谷を見つめている。
『わかったの?ほんとに?』
奈緒子はびっくりして岸谷を見つめている。
もちろん永田夫妻も岸谷に注目している。
タイマーが鳴り、岸谷達の目の前に座っているForce関係者は
『では、解答をご記入ください。』と岸谷の前に解答用紙を出すと
解答用紙に答えを記入した。
しばしの沈黙・・・
『多分、正解だろう、いや正解であってほしい。』
岸谷達は祈るような思いで待っている。
『おめでとうございます。では2次予選が始まるまで
しばらくの間、控室でゆっくりされて下さい。』
Force関係者はそう言うと、1次通過を意味する赤いバッジを4人に手渡した。
岸谷の書いた答えは正解だった。
『この正解を導くきっかけとなった
奈緒子と由子には控室で礼でも言おう。』と岸谷は思った。