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Force  作者: 本願寺 裕真
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全てが終わる日

『この島の秘密を知ったものは生きては帰さん!』


本多圭一郎は甲板に立ち、漁船のあとを追う。


『見ろ、恭介!お前のおかげで多くの人間が死んでいくのだ。』


本多圭一郎はそう言うと、恭介の髪を掴む。


『お前の思い通りにはいかないさ。』


恭介はそう言うと、圭一郎の靴に唾を吐くと、


圭一郎は顔面を紅潮させながら、『こいつ!』と


言い放ち恭介をの腹を蹴りあげる。


恭介は甲板の上で蹴られたお腹を押えて蹲っている。


『吉本さん、早く!』香織が急かせる。


『だめじゃ!これが精一杯じゃ!

これだけの人数が乗っているのだからじゃな!』


吉本は言う。吉本の顔にも焦りが伺え、


額から汗がじんわりと溢れ出てきているのがわかる。


『こうすれば少しは早くなるんじゃないか?』


大友は荷物を海に捨てる。


それに従うように、皆、自分の荷物を捨てる。


『福田さんはカメラを回し続けて!』


田中雅美はそう言うと少しでも多くの荷物を捨てる。


『雅ちゃん、任しとけ!』


福田はそう言うと親指を立てる。


『ほら、もうすぐ追いつくぞ!逃げろ、逃げろ。』


本多圭一郎は笑みを浮かべて言う。


『もう、お前の好きにはさせない!』


恭介はそう言うと、ポケットからスイッチを取り出す。


『今度は何を爆破するつもりだ?もう島からは離れたと言うのに。』


本多圭一郎は笑いながら言う。


『槙野さん、良いですよね?』


『もちろん。恭介さん、栄一博士の敵討ちを!』


恭介は持っていたスイッチを押す。


島から何発もの花火が打ち上がる。


『あはは、俺への祝砲か!』本多圭一郎はあざ笑う。


『Force、力は真の正義のの為に使うんですよ。』


『みんな、伏せろ!』吉本は言う。


次の瞬間、大型遊覧船の船体下部から大きな爆発音が響きわたる。


大型遊覧船が大きく揺れ傾く、圭一郎は倒れる。


恭介は圭一郎の上にまたがると圭一郎の胸倉を掴む。


『これで正真正銘、あんたの終わりだ!』


『お前、まさか・・・。』


花火とともに大型遊覧船の至る場所から、火柱があがり


船体は大きく揺れている。


米村は爆発の衝撃で既に気を失い倒れ、


槙野は逃げようとする加納を腕を掴み放さない。


火柱は更に勢いを増し、大型遊覧船を包んでいくと、


多くの船員は脱出用の船に乗り始めている。


今ここで悲劇が起きている事も誰も知らずに。


『もう満足だろう?本多圭一郎。』


恭介は満足感に満ちた笑みを浮かべ圭一郎に問いかける。


『私が築き上げたものが・・・。』


『ここまで育ててくれた事は感謝はしている。』


『圭介・・・。』


『だが、父と母の事は一度も忘れた事はなかった。』


圭一郎は観念したのか全身の力が抜けていくのが


恭介にはわかった。


船体は真ん中から裂けはじめ、既に沈みかけている。


『槙野さん、ここまでありがとうございます。

もうこの船から脱出してください。』


恭介が槙野にそう言うと、槙野はにっこりと笑みを浮かべ


『私も一緒に栄一博士のもとにいきますよ。失うものはないから。』


『駄目です!これは完全に私事です。』


『恭介さん、それならばお供する事も私事です。』


恭介の眼から、止めどなく涙が溢れだしていく。


『槙野さん、槙野さんにはこの島の事を伝える使命が残っているんです。』


『伝える使命は既に彼らに任せていますから・・・。』


そう言うと、Force参加者の乗った小型漁船を見つめる。


その瞬間、槙野のすぐそばで大きな爆発音とともに


炎が包み込んでいった。




『何とか巻き添えはくらわなかったみたいじゃな。』


吉本はそう言うと大型遊覧船のほうを見る。


既に遊覧船は3分の2が沈んでいる。


『お前はそれでよかったのか!』岸谷は叫ぶ。


『どうして?どうしてなの?』香織は泣き崩れている。


『何なんだよ、これは!』


浩平は言葉にならない気持ちで溢れている。


みんな泣き崩れている。


『TVの前の皆さん、見て下さい。これが彼が伝えたかった

本当の真実です、命にかえても伝えたかった真実なんです。』


雅美はそう言うと、あとは言葉にならなかった。


ただ泣き疲れるまで、泣き続けた。

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