千石島の歴史
AM11:45
別荘地に足音がした。4人が揃って帰ってきたのだ。
米村は4人が無事に帰って来た事を圭介に告げると、
『米村さん、お手数ですがお待ちしていた皆さんを広場に
呼んで頂けないでしょうか?』と圭介は言う。
米村は急ぎ、4組のもとに報告に行く。
圭介は広場に一足先に向かい4人を出迎える。
『皆さん、無事に戻られて何よりです。
しかしどちらに行かれてたんですか?』
圭介は戻ってきた4人に聞く。
『もちろん、旗を探していたんですよ。』
奈緒子がそう言うと4人はそれぞれの旗と問題の入った封筒を見せる。
そこに心配して待っていた8人と米村がやってきた。
『心配したんだぞ!』
『どこに行ってたんですか?』
『何してたの?』
広場では安堵の声が飛び交う。
その光景を見ながら、圭介が話しかける。
『皆様、先ずは無事に戻られてなによりです。
しかも偶然にも4組とも旗と問題を手に入れられたようですので、
まずは昼食を皆様全員と頂き、その後13時30分より解答を
致しましょう。』
『無事皆さん戻られて安心しました。』雅美は圭介に声をかけた。
その圭介の言葉に全員頷き、圭介と米村が準備させた
昼食会場でもある別荘地の中央に位置する大別荘に向かう。
部屋に入ると昼食は既にテーブルに25人分が準備しており、
圭介、米村、船長の加納、グローバルTVスタッフ、
そして参加者の12名が映画で見るような大きなテーブルに
座り昼食を頂く。
食事が始まって30分が経つ頃、おもむろに圭介は話をしはじめた。
『皆様にここでお話したい事がございます。』
食事をしていた全員の箸が止まり、圭介に注目する。
『この島、千石島の話を致します。この島は今は無人島ですが、
以前は島民1000人ほどの島でした。』
『本多様。』米村は圭介の話を制止しようとしたが圭介は続ける。
『その後ここの島民は全て移転し、今日のような無人島となりました。』
『何故、島民全員が移転したの?』香織が圭介に聞く。
『ここは本来自然豊かな島でした。時間もゆっくり流れるような、
それは穏やかな島でした。そしてこの島の自然を守る為に1組の家族が
島に訪れました。もちろんその家族は家庭的な島民に歓迎されたのです。』
圭介は話を続ける。
『その家族は島全体を調査し、全国でも有数の自然王国で
あると証明したのですが・・・』
『ですが?どうしたの?』奈緒子が聞く。
『そろそろお時間では?』米村が圭介に言う。
『もう少しいいでしょう?』圭介が米村に言うと、米村は黙り込む。
『どこの世界にも欲深い人はいる者で、広大な自然を破壊し、
大型娯楽施設の建設をしようと言う声にのり、この島を売ったのです。
もちろん反対する者も最初はいたようですが、
結局は金の力が強かったようです、そして誰もいなくなった。』
圭介は天井を見つめ、
『暗い話になってしまいましたね、続きは明日にでもしましょう。
30分後に広場にご集合下さい。』
そう言うと圭介は部屋をあとにした。
その圭介のあとを、田中雅美が追う。
『本多さん、この島の話はもしかしてお父さんが
絡んでいるんじゃないんですか?』
雅美もアナウンサーとはいえ、ジャーナリストの端くれだ。
本多圭一郎がこの開発に大いに関係しているのではないか?
『最後まで見届けてください。』圭介はそう言うと部屋に入っていった。




