表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Force  作者: 本願寺 裕真
57/73

信念

『これでよかったんですよね。』


優子は由子にそう言うと、由子の替わりに大友が


『既に賽は投げられたんだよ。』と言う。


由子もまた今回、仲間から離れた事で後戻りは出来ないと思っていた。


由子は自分が一幸が自分の事を見直してくれると


信じて敢えて、離れたのだ。


ずっとお気楽な主婦というイメージを払拭したかった。


私にもやれば出来るというものを見せつけたかった。


多分それは今も強がっている大友や戸惑っている優子も


同じ気持ちだと感じていた。


誰しも、褒めてもらいたい、人より少しでも良く見られたい気持ちは


必ずあるもので、それをエゴと思われてもいい。


それが当たり前の事なのだから。


『優子ちゃん、私も最初は勢いに任せて、

ふるい落とされた悔しさから、本多さんの話に乗ったわ。

でも今は自分を信じて行動してる。そして精一杯やっていれば、

その気持ちはお友達にもきっと伝わるから・・・』


優子はその言葉が嬉しかったのか、少し涙を浮かべ頷いた。




浩平達は町に入った。もちろん岸谷や香織、優子達も


町に入ったに違いない。


町に入った浩平は驚いた。


本当にここは無人島なのだろうかと錯覚するくらいに。


定食屋や小さい個人経営のスーパー、クリーニング屋まで


全て道の両側にひしめき合って建っている。


しかもこの島の住人がまるごと消えた感じがするくらいに、


町並みはそのままで。


浩平達は1軒の駄菓子屋に入る。


浩平の住んでいる近所の大型スーパーで見かける


駄菓子や初めて見るようなくじまで小さい店の中、


ところ狭しに押し込められている感じに見えた。


そして店の奥に人影を見つけた。


『あのー、すいません。』


浩平は声をかけたが、返事はない。


浩平はもう一度声をかけ奥に入る。


『何だか気味が悪いな。』


健吾は周りをキョロキョロしながら見ている。


『どなたかいませんか?』遥も恐る恐る声を出す。


『うわっ!』


浩平はいきなり大きな声を出した。


その声に健吾も遥も驚き、店の中から出て行った。


『なんだよ!ここは!』健吾は精一杯の強がりで言う。


遥ももう泣きそうな顔をしている。


『おい、健吾、遥、来てみなよ』店内から浩平が呼ぶ。


『今度は何だよ。いったい!』


もう健吾はふて腐れながら店の奥に入って行った。


『浩平、何だよ?』健吾が言うと、


『おばあちゃんだよ。』浩平は健吾に言う。


『おばあちゃん?住んでいるのか?』健吾が聞くと、


『あぁ、おばあちゃんだよ。蝋人形のな。』


『蝋人形?』健吾は近づく。


『本当だ、蝋人形だ!』健吾は浩平の顔を見つめる。


『笑っているかわいいおばあちゃんだな、最初は怖かったけど。』


浩平は健吾に言う。


『でも、何なんだ。この町はここにあるお菓子は、

全て本物だけど人は蝋人形って?』健吾が言う。


『何かのテーマパークみたいだな。』浩平はそう言うと、


『あれ?遥は?遥、もう大丈夫だぞ。』返事がない。


浩平と健吾は店から出るとそこに遥の姿はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ