エゴの無限回廊
静かな部屋で圭介は3人を待っている。
米村が3人を部屋に入れる。
『お待ち致してましたよ。』圭介は3人に声をかける。
『私達に何の用ですか?』優子が最初に口を開いた。
圭介は少し笑みを浮かべ3人に向かって話しかける。
『よく、お気楽に食事出来るなと思いましてね。』
『いきなり何ですか?』今度は由子が圭介の言葉に怒りを表す。
『まぁ、そう熱くならないで、座ったらどうです?』
圭介は3人をソファーに促す。
『さっきの事はどういう事なんだ!』大友は圭介に食ってかかる。
『まぁ、コーヒーでも飲みながら話しましょう。
米村さん、コーヒーをお願い致します。』
3人の前にコーヒーが並べられる。
『では、ご説明致しましょう。なぜお気楽に食事出来るのかと
聞いた事ですが・・・』
『皆様は今回何もせずに、しっかり夕食だけは頂いていますよね、
他の皆さんは全て問題を解かれているにも関わらず・・・』
『あれは条件があったからでしょ!』優子が言う。
『本当にそれだけでしょうか?条件が自分に合わなかったから?』
圭介が3人に聞く。
『そうですよ!』由子が言う。
『でもよく考えて下さい。よく話し合って決めたんですよね、
その結果、あなた方は他の3人から選ばれて
外されたんじゃないんですか?』
『選ばれて外された?』3人は圭介の顔を見る。
『そうです、選ばれて外されたんです。頭脳明晰ではない、
頼りにならない、しっかり者ではない、だから選ばれて外されたんですよ。しかも話し合いという結果でね。違いますか?』
3人は黙って俯いている。
圭介は更に追い討ちをかけるように、
『それとも仲間の1人でも、あなた方が頭脳明晰、頼りになる、
しっかり者だと言いましたか?しかも話し合いの結果ならば、
あなた方以外の全員そう思っているという事でしょ?』
3人はもう反論すら出来ない。
俯く3人に圭介は『彼等はForceを使ったんですよ。』と言う。
『フォース?』由子が言うと、
『そうです、フォースです。あなた方はフォースはFourth、
則ち4人のと言う意味でこの大会を捉えていたかも知れないが、
本来この大会のフォースとはForce、力と言う意味なんですよ』
『力、どういう意味なんだ』大友が圭介に聞く。
『いい質問です、彼等はあなた方をふるい落とす力を使ったんです。』
『ふるい落とす力?』優子は理解出来ていない様子だ。
『そうです、あなた方を解答する権利がないと決めた力です。』
圭介は続ける。
『私は12人のうちの誰かがそんな事は出来ないと反論してくると
思っていましたが、誰も言ってこない。
堂々と信頼ある仲間をふるい落としていく。』
また3人は黙り込む。圭介は熱弁し、
喉の渇きを潤す為にコーヒーを飲むと、
『これはエゴです、この大会も私のエゴではじめました。
信頼とはどういうものなのか、見てみたかったというエゴです。』
『今の社会はエゴが全てを動かしている社会です。
政治家、官僚を見ればわかるでしょう。私欲の為、名誉の為に
突き進んでいる。エゴが子を生み、育て、立派なエゴを作る、
そしてそのエゴがまた子を生む。エゴの無限回廊ですよ。』
圭介は話を進めていく。
『私は信頼関係が築きあげられていれば、少しはエゴは無くなると
思っています。相手を思う心が強くあれば、自分の欲求だけ、
私欲を満たすだけの狭い心は無くなると思っています。
多少の競争社会は必要ですがね。
強い信頼を見る事で私のエゴを無くして欲しかった。
その為に100万円出すのは惜しいと思いません。
だから私はあなた方をここへお呼び致しました。
エゴを壊して欲しいと思ったからです。』
『どうすればいいの?』由子は圭介に聞く。
『新たにチームを作るのです。あなた方3人1組で。』
圭介の言葉に3人は顔を見合わせる。
『俺達でチームを?』大友が言う。
『そうです、エゴに打ち勝つ為にもエゴによって
ふるい落とされた皆さんの力、Forceの結晶でね。』
圭介は続ける。
『3人1組のチームが4組出来ます。』
『でも、みんなが納得しますか?』優子がいうと、
圭介は、『最後の封筒はこの旗の下で見つけられたはずです。』
そう言うと、3人の前にあのZ旗を出した。
『色は4色です、新しいチャレンジャーが
出てきてもおかしくないはずです。』
『賞金はどうなる?』大友が聞くと、
『あなた方が優勝すればもちろんあなた方にお渡し致します。』
『悪い話ではないな。』大友は優子と由子を見つめて言う。
『私達はふるい落とされた者同士だからね。』優子が続く。
『やりましょう、皆さん』由子は大友、優子を見つめて言う。
『では、よろしいですね。このチームの結成は、
明朝私からご説明致します。』圭介が言うと、3人は無言で頷いた。




