第13話「今度こそ村おこし」
村が溶岩に飲まれます。
コンちゃんの能力でダムを作って、そんな溶岩をストップ。
でも、村が溶岩に飲まれて、コンちゃんの祠も沈みます。
コンちゃんすすけて、ちっとも動きません。
コンちゃん死んじゃうの?
「起きろっ!」
まだ真っ暗なのに、いきなり起こされました。
「は、はい?」
真っ暗な部屋に店長さんの真剣な顔。
「店長さん、まだ眠いです」
「いいから、起きて、コンちゃんも起きて!」
店長さんコンちゃんを起こしてます。
「何をするのじゃっ!」
あ、コンちゃんの寝起きは危険です。
「早く家を出てっ!」
「え!」
窓の外、なんだか赤い。
「噴火がひどくなったんだ!」
「え!」
わたしとコンちゃん、一緒になって窓の外を見ます。
山のてっぺんの火柱がすごい事に!
今まで一本しかなかった火柱が何本も上がってます。
それに火柱の高さも、なんだか高くなってるみたい。
「ミコちゃんは?」
「あ、ミコちゃんは押し入れです」
「なんで?」
「社に帰りたくないって、押し入れに篭ってます」
「もう」
店長さんムスっとして押し入れを開けます。
「ミコちゃん起きて!」
「お、起きてます!」
「早く逃げるんだ!」
「嫌です、それは私を社に帰す作戦です」
「もう!」
店長さん怒ってミコちゃんの腕をつかまえました。
そのままお姫さま抱っこ。
いいなあ、わたしも今度、あの手を使おう。
「ポンちゃんもコンちゃんも早く出ろっ!」
店長さんの声にわたし達、家を出ました。
流れて来た溶岩が村を飲み込もうとしてます。
お店はもう、溶岩に飲まれちゃいました。
わたしたちギリギリセーフ。
「ミコちゃん!」
店長さんの大きな声に、ミコちゃん小さくなってます。
「ミコちゃん噴火を止めて!」
「え、えっと、出来ないんです」
「な、なんで……」
「その、昨日帰れって言われた時からもうどうにもならなくて」
「え……昨日言ったから、あんなになったの?」
「店長さん私の気持ち全然わかってません! あそこは寂しいんです!」
店長さんが黙っちゃいます。
代わりにわたしが、
「ミコちゃん、あれ、止められないんですか?」
「なんだか昨日思い切り泣いたら地脈が押さえられなくなって……」
村にも溶岩が迫ります。
コンちゃんが、
「ポン、おぬし村人を起こして回るのじゃ! 避難させるのじゃ!」
「うん、コンちゃん、でも、どこに?」
「公民館でよかろう、ミコも……」
みんながミコちゃんを見ます。
でも、ミコちゃん小さくなってて、とても使い物にはなりそうにないです。
ともかく村の人達を避難させないといけません。
『助けて!』
あれ、なんだか頭の中に声がします。
『助けて、タヌキさん!』
あ、これはご神木さんです。
駐車場の隅に植えられたご神木さんにも溶岩が迫ってます。
わたし、とりあえずスコップで掘り起こして、バケツに入れて脱出。
「ポン、なにをしておるのじゃ!」
「コンちゃん聞こえないんですか?」
「?」
「わたし、ご神木さんの声が聞こえます」
「木がしゃべるものか」
「わたしには聞こえるんです」
ミコちゃんがわたしを見ながら、
「ポンちゃんはこの木と話が出来るのですか?」
「うん、なんだかわたしには声が聞こえるみたい」
「この木はなんですか?」
「うん、村のご神木の枝なの」
ミコちゃんバケツに入ったご神木の枝を見ながら、
「この木なら、私の代わりに山の神ができます」
「なら、わたし、この木を植えに行って来る!」
みんなの目が、溶岩だらけになった村に、そして流れの先に向けられます。
「うむ、わらわもダムを完成させて溶岩を止めてみせよう」
コンちゃんの体からオーラ。
空をふわふわとダンプや岩、瓦礫が飛んでいきます。
店長さんは視線をミコちゃんに向けると、
「じゃ、俺とミコちゃんは村の人達を公民館に誘導」
役割分担完了。
わたし、頑張って山に登ります。
早くしないと全滅だもん。
近くで見る噴火は迫力満点です。
とりあえず社の近くに穴を掘ってご神木さんを植えなおす準備。
「ねぇ、ご神木さん」
『なんですか?』
「ご神木さんは、山を鎮める事ができますか?」
『はい、でも……』
「でも?」
ご神木さんの言葉に、なんだか嫌な予感。
穴掘りやめて振り向いたら……
噴火の火柱が龍みたいになってます!
ああ、炎の龍さんがわたしの方に来ました。
熱いですよ、狸汁も嫌だけど、このままじゃ丸焼きです。
「あ、熱いから来ないで!」
「狸娘よ、何をしておる」
「噴火すると村が全滅で困るんです」
「ふむ……それで我を封じようと?」
あ、炎の龍さん、一度は止まったけど、じりじり近付いて来ます。
「だ、だってわたし、店長さんに恩返ししないといけないんです」
「ふむ……それで我を封じようと?」
とりあえず炎の龍さん止まってくれました。
「噴火……炎の龍さんも最初はよかったけど、村が……お家が燃えたら夜寝るところがなくなっちゃいます」
って、もう、焼けちゃいました。
そう思うとついつい涙がこみあげてきちゃいます。
「狸娘よ、私もこう、封じられてばかりではうんざりなのだよ」
「噴火ばっかりでも困ります」
「知らぬ」
「わーん!」
炎の龍さんじりじり接近。
わたし、バケツinご神木さまに抱きつきます。
『地の神よ』
「うむ、おぬしは森の神!」
『わたしはこの狸娘に助けられた……それに免じて』
「で、我は封じられてしまえと?」
炎の龍さん、首を伸ばしてきます。
はわわ、わたしもうチャーシュー状態。タヌキなんだけど。
『わたしに良い考えがある、みなが喜ぶ考えじゃ』
炎の龍さん止まり、そしてゆっくり後ずさり。
ご神木さんが、
『温泉になって沸くのじゃ、それなら皆、喜ぶ』
わたし、ご神木を植えて村にバックホーム。
ご神木さまの名案で噴火も収まりましたよ。
でも、村に近付くと、溶岩だらけ。
ダムは真っ黒で湯気が立ってます。
溶岩は完成したダムでストップ。
さすがコンちゃんパワー。
「店長さーん!」
「ポンちゃん!」
村のみんなは、村外れの高いところ、公民館にいました。
「店長さん、噴火が止まりました、ご神木さんのおかげです」
作戦大成功です。
えい、店長さんの腕に抱きついちゃえ。
これだけ頑張ったんだから結婚するしか。
店長さん嫌って言ったら、もう女の武器で勝負です。
「ポンちゃん……」
あ、でも、なんだか店長さんの顔、そんな雰囲気じゃないです。
店長さんの腕にはコンちゃんがぐったりしてます。
「店長さん、コンちゃんどうしたんです?」
「コンちゃんの祠、溶岩に沈んじゃったろ」
「!!」
「ダムが出来たらコンちゃん死んじゃうって言ってたじゃん」
「そ、そんな……」
「祠、溶岩に沈んじゃったから……」
コンちゃんすすけて、ちっとも動きません。
「コンちゃんっ!」
わたしが揺すったら、まぶたがゆっくり開きます。
「ポン……楽しかった……店長……」
コンちゃんの手が、店長さんの腕をつかみます。
「最後に……キスして……」
もう、かすれるような声。
わたし、店長さんを揺すっちゃいます。
最後にキスしてあげて!
「店長……」
「コンちゃん……」
店長さんとコンちゃんが近付いていきます。
コンちゃんが死んじゃう前に早くキスしてあげて!
わたし、涙うるうるしていると背中をトントンされました。
見ればミコちゃんが首を傾げてます。
『どうしたんですか?』
小声のミコちゃん、わたしも、
『コンちゃんは祠が沈んだから死んじゃうんです』
『え?』
『だから村にあった祠が沈んだから……』
『この間ポンちゃんが持ってきた人形は何だったんです?』
そういえば、そんな事もありました。
どっちが正解なんでしょう?
「こりゃ、ポン、今のひそひそ話、聞こえたぞ」
もうキスまで十センチくらいのところで、コンちゃん怒った顔してます。
「あ、わたし、祠のお稲荷さま壊したから、ミコちゃんの社で直してもらってる最中だったんです」
「くっ、具合が悪いと思ったら、そんな事がっ! あっ!」
店長さん、コンちゃんを抱いていた腕をほどいてます。
コンちゃん地面に落ちて、なんだか頭打って「ゴン」なんて音が。
頭を押さえたコンちゃん、痛みに体をくねらせてます。
店長さんこめかみに怒りマークが浮かべて、
「コンちゃん今の、お芝居?」
「う、うう……」
「ミコちゃんのせいで、村は全滅……」
「ほほほ……」
コンちゃんとミコちゃんの株暴落。
わたしの成績はほっといても……
「ぜーんぶ、ポンちゃんが来てからだよね?」
「え!」
「ポンちゃんが来てからコンちゃんも来たし……」
「そ、そんなぁ~」
「お稲荷さま壊して、結局ミコちゃん連れて来たのもポンちゃん」
「うう……悪気はなかったんです」
「もう山に帰って……」
わたしと店長さんの間に、いなり寿司が差し出されます。
「命が無事だったんですから、もういいでしょう」
「……」
「わたしが炊き出しで作ったんです、おにぎりもありますよ」
ミコちゃんが笑っています。
早速コンちゃんが飛びついて、
「きゃーん、いなり寿司!」
わたしも店長さんもつまみます。
甘くて美味しいですよ。
みんなで黙々と食べました。
村の人達も、ミコちゃんお手製を食べて泣くのも忘れてます。
でも……
「なにもなくなってしまったねぇ」
隣にうずくまっていた豆腐屋のおばあちゃんがつぶやきます。
その瞬間、また地面が揺れました。
公民館の脇に大きな水柱。
みんなびっくりして声を上げて、そんな水柱を見上げます。
落ちてくる水は……温かい……お湯ですよ。
店長さんわたしの頭を撫でてくれながら、
「この間、温泉でも出れば……って言ってなかったっけ?」
「!!」
「この温泉で、村おこしできるかも知れない」
温泉で村おこし。
パン屋さんも復活しました。
店長さんはパン工房。
ミコちゃんは家事当番。
コンちゃんはテーブルでお茶。
わたしはレジで頑張ってま~す。
みなさんも、山のパン屋さんにいらっしゃいませっ!
村はとりあえず大丈夫でした。
でもでも、わたしの恋は成就してませんよ。
ここはじっくりしっかり店長さんのハートをゲットするしかないでしょう。
コンちゃんのホームスチールには要注意なんだからっ。
って、なにかにおいます、新たな敵キャラ登場の予感ですっ!




