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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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サクサク読める短編集

最初からやり直そう

作者: 2626
掲載日:2026/03/03

 人体不老化技術が進んだ結果、人類の平均寿命は三百歳となったが、人口爆発は起きなかった。

既に人工子宮が一般化していて、そちらで生産した方が誰にとっても幸せで効率的だったからだ。




 ツギノ・ユーは反抗期の少女である。

すっかり平和になった世界の、ある国の立派な首都で生まれ育った。

彼女は幼い頃はとても良い子だったけれど、10代中頃となる頃にはすっかりグレてしまっていた。


 「おいクソババア!」

彼女は乱暴に母親を呼び、「どうしたのユーちゃん!?」と急いで駆け寄ってきた母親を足蹴にした。

「何でアタシの電子通貨(財布の中の金)を勝手に消したんだよ!」

転んだ母親を何度も踏みつけながら、彼女は怒りをぶつける。

「そ、それは……だってユーちゃん、そのお金はユーちゃんが勝手にウチの生活費から抜き取ったから……!」


 その時、ユーの父親が帰ってきたけれど、母親を足蹴にしている光景に仰天して、慌てて間に割って入った。


 「何てことをするんだ、ユーちゃん!」

「うるさい!金だけ寄越せよ!邪魔!」

「駄目だよユーちゃん!だってユーちゃん、悪いお友達と夜中に遊ぶだろう。どうか頼むからそんなことは止めてくれ。どうにか戦争は無くなったけれど、悪い人が無くなった訳じゃないんだ。もしもユーちゃんに何かあったら……」

「うるさい!うるさい!みんな死んじゃえ!」

喚いている彼女は怒りのままに玄関から飛び出そうとして、会社から帰ってきたばかりの姉キミコとぶつかった。

「きゃああっ!?」

キミコはぶつかった弾みに転倒するが、ユーは一瞥しただけで舌打ちしてそのまま外に出て行ってしまう。


 「ユーちゃん……!」

父親は慌てて後を追いかけたけれども、ユーの姿はもう何処にも無かったのだった。




 ユーは数日の間、街で悪友達と遊び歩いて家に帰らなかった。

悪友達と遊ぶのは本当に楽しかった。

お金が足りなくなれば気の弱そうな子供やおっさんから巻き上げれば良いだけなのだから。


 煩い家族のことなんてすっかり忘れた頃に、彼女がたまたま家に帰ると――。


 「ツギノ・ユー、十六歳。性別、女。誕生日、六月二十二日。間違いありませんね?」

黒服を着たいかにもヤバそうな人間達が、彼女の家にいたのだった。

「はい、間違いなく私達の娘ユーです」

ユーの両親が頷くと、彼女は瞬く間に彼らによってぐるぐる巻きに拘束され、口には何かのチューブを突っ込まれてしまった。

「ではこれから『やり直し』の措置に移行します。何か保存しておきたい記憶はありますか?」

黒服の人間の中の一人が、彼女の両親に聞くと――。


 「ありません。私達のユーは、キミコに大怪我をさせるような子じゃない」

「それに、ユーの大事な記憶は私達も持っています。今度こそ間違えないように、愛情を持って育てますから」


 どう言うこと、とユーが目を見開いた時だった。

黒服の人間の中で最も立場のあるらしい男が、屈み込んでユーに説明した。

「喜びたまえ。君は赤ん坊からやり直すことが決まった。

散々不良として家族に迷惑をかけ、害した君だけれども、家族は君を見捨てなかったのだよ。何とも素晴らしい家族愛だ。

君ときたら姉を傷つけ入院させ、そのことを幾ら家族が連絡しても知ろうともしないで軽犯罪を犯しつつ遊び歩く、実に下等な人間なのに……」

ユーは咄嗟に何かを叫んだが、それは声にならない叫びだった。


 「君には『特別措置』が適用される。本来ならば公益の観点から『削除』されるはずだったのだが、君の家族がどうしてもと言うのでね。君の体を嬰児に一度退化させ、記憶も消去するのだよ」


 その間も、ユーの両親は優しい顔でユーを見つめている。

「大丈夫だからな、ユー。赤ん坊のユーを今度こそ間違えないようにちゃんと育てるから」

「ええ、ユーは何も心配しなくて良いのよ。キミコだってユーともう一度家族になれるのだから、喜ぶわ」


 そんな。

 そんな。

 そんな。


 ユーの目から涙がこぼれ落ちた。


 助けて、助けて。


 彼女は必死に叫んだけれども、呻き声にすらならなかった。

麻酔があっと言う間に彼女の意識を奪ったのだ。


 そのまま彼女の体は人工子宮などのある世界政府管理の生産エリアに移送されていった。

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