第19話 支持の重さ
価格は、ゆっくりと下がった。
急落ではない。
だが上昇は止まり、配給の列は短くなる。
王都の暴動は鎮静化した。
新聞は割れた。
“王太子、英断”
“辺境の圧力に屈す”
私の名は、そのどちらにも書かれていない。
それでいい。
——
王城、非公式の私的会談。
エドガーは以前より疲れているが、目は澄んでいた。
「あなたの提案は通った」
「ええ」
「私は支持を失った」
「一時的です」
「分からない」
彼は笑う。
「愛される王でいたかった」
「まだなれます」
「どうやって」
「継続させてください」
沈黙。
「あなたは私を嫌いか」
唐突な問い。
「嫌いではありません」
「だが賛同もしない」
「理念が違う」
彼は頷く。
「あなたは恐れている」
「ええ」
「何を」
「先送りです」
彼は長く息を吐く。
「私は民の顔を見て決める」
「私は帳簿を見て決める」
「どちらが正しい」
「どちらも不完全です」
沈黙。
やがて彼は言う。
「また来い」
「必要なら」
——
レヴァンへ戻る。
城館前で小さなざわめきが起きている。
配給所に並ぶ民衆の中に、拍手が混じる。
大きくはない。
だが確かだ。
ガルドが腕を組みながら言う。
「王都は落ち着いたらしいな」
「ええ」
「お前のせいだと聞いた」
「そうでしょうね」
彼は鼻を鳴らす。
「嫌われ者が国を動かしたか」
「たまたまです」
「違うな」
彼は短く言う。
「逃げなかったからだ」
私は何も返さない。
支持率の報告が届く。
レヴァン内、わずかに回復。
王都内、賛否両論。
だが敵意は減った。
私は帳簿を閉じる。
「喜ばないのか」
セドリックが問う。
「支持は副産物」
「あなたは変わった」
「いいえ」
「以前なら、これを利用した」
私は少しだけ笑う。
「もう利用しない」
夜。
塔の上で風を受ける。
冬は深いが、秩序は崩れていない。
国家は制度を一つ持った。
備蓄義務。
市場安定基金。
徴税透明化。
まだ不完全だ。
だが前進。
セドリックが静かに言う。
「私はあなたを赦さない」
「知っている」
「ですが」
彼は続ける。
「私はあなたを評価する」
それは初めての言葉だった。
私は目を閉じる。
悪役でいい。
だがその悪は、もう孤立していない。
遠く王都の方角に、小さな灯が見える。
国家は揺れた。
だが倒れなかった。
冬はまだ終わらない。
だが今、初めて——
未来の設計図が描かれ始めている。




