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悪役令嬢は嫌われることにした ~嫌われても辺境で黒字を出す~  作者: 桐谷ルナ


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第18話 王都の火

 火は、パン屋から上がった。


 王都南区。早朝の配給列で、価格改定の告知が貼られた瞬間、石が飛んだ。


 怒号。割れる窓。転倒する老人。


 小さな衝突は、午後には広場へ波及した。


 「値下げを!」

 「備蓄を開けろ!」


 王城前に群衆が集まり、衛兵の盾が軋む。


 レヴァン城館に急報が届いたのは、日暮れ前だった。


「王都で暴動発生」


 ハロルドの声が硬い。


「規模は」


「小規模。だが拡大の兆し」


 私は即断する。


「市場安定基金、前倒し案を提出する」


「王都が受け入れるか」


「受け入れさせる」


 セドリックが静かに言う。


「あなたは火に油を注いだ」


「火種は前からあった」


「ですが今はあなたの風だ」


 私は視線を上げる。


「ならば消す」


 ——


 王城、臨時評議。


 エドガーの目は赤い。


「南区で三十名負傷」


「死者は」


「今のところ、なし」


 私は机に書類を置く。


「基金の即時創設。辺境四領が一割供出で合意。代わりに価格安定策を即日発動」


「今さら条件か」


「今だからです」


 宰相が割って入る。


「辺境が価格を釣り上げた」


「三割供出の通達が先です」


 室内がざわつく。


 私は続ける。


「備蓄義務の法制化を宣言してください。来年以降の供出率を固定化する」


「来年の話をしている場合か!」


「来年の話をしないから、今年が燃える」


 沈黙。


 エドガーが低く問う。


「あなたは、私の支持を削った」


「支持は制度の代わりにならない」


「私は民に選ばれたい」


「民は明日を食べたい」


 視線が交錯する。


 外で再び怒号。


 衛兵が報告に飛び込む。


「西区でも衝突!」


 エドガーが目を閉じる。


 彼は優しい。


 だが優しさは今、刃だ。


「……一割で合意する」


 室内が凍る。


「徴税制度の再設計、評議会に諮る」


 宰相が息を呑む。


「殿下!」


「今は火を消す」


 彼は私を見る。


「あなたの条件を飲む。ただし」


「ただし?」


「王都の安定に責任を持て」


 私は頷く。


「持ちます」


 ——


 翌日、勅令が改定される。


 供出率一割。

 市場安定基金創設。

 備蓄義務の法制化準備。


 価格は即座には下がらない。


 だが上昇は止まる。


 群衆は散り始める。


 小さな火は、鎮まりつつある。


 城館へ戻る馬車の中、セドリックが言う。


「王太子は譲りました」


「ええ」


「あなたは勝ちました」


「違う」


「では」


「国家が一歩進んだ」


 彼は静かに頷く。


「傷は残ります」


「知っている」


 王都では、私を非難する声もある。


 “辺境の冷血令嬢”

 “王都を揺さぶった悪役”


 それでいい。


 レヴァン城館に戻ると、吹雪は止んでいた。


 配給の列は短い。


 市場は落ち着きを取り戻しつつある。


 私は塔に立つ。


 遠く、王都の方角を見つめる。


 嫌われた。


 だが制度は動いた。


 エドガーは決断した。


 国家は初めて、人気よりも構造を選んだ。


 セドリックが隣に立つ。


「あなたは正しくない」


「知っている」


「ですが」


 彼は静かに言う。


「あなたは必要だ」


 私は目を閉じる。


 悪役のままでいい。


 だが今、その悪は——


 国家に届いた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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