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悪役令嬢は嫌われることにした ~嫌われても辺境で黒字を出す~  作者: 桐谷ルナ


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第16話 辺境会議

 吹雪の前触れのような灰色の空の下、レヴァン城館の大広間には重い空気が沈んでいた。


 長卓の両側に、三領の使者が座る。


 北の山岳領主グレアム。

 東の河港領代官エルヴィン。

 南の乾燥地帯を治める女領主サラ。


 いずれも顔色が悪い。


 王都からの勅令は、同時に届いていた。


 三割供出。


「まず確認したい」


 山岳領主が低く言う。


「レヴァンは拒否するのか」


「拒否ではありません」


 私は即座に答える。


「再交渉です」


「言葉遊びだ」


「生存戦略です」


 沈黙。


 河港領代官が帳簿を叩く。


「三割出せば春まで持たない。だが拒否すれば反逆だ」


「単独なら」


 私は地図を広げる。


「共同なら違う」


 視線が集まる。


「辺境四領で足並みを揃え、一割供出を提示する」


「無理だ」


 サラが即断する。


「王都は譲らない」


「譲らせる」


「どうやって」


 私は答える。


「数字で」


 大広間が静まる。


「王都の備蓄は既に不足している。価格高騰が証拠です。三割を強行すれば、辺境が枯渇し、来年は供出どころではなくなる」


「理屈は通る」


 グレアムが腕を組む。


「だが王都は理屈で動かない」


「ならば動かす材料を作る」


 私は続ける。


「交易です」


 エルヴィンの目が細まる。


「河港を使うのか」


「王都への穀物流通を調整する」


「封鎖か」


「調整です」


 言葉は柔らかいが、意味は同じ。


 供出以外の流通を市場経由に限定すれば、王都の価格はさらに上がる。


 王太子は支持を失う。


「危険だ」


 サラが言う。


「暴動が起きる」


「起きるでしょう」


 私は否定しない。


「だが三割供出でも暴動は起きる。場所が違うだけです」


 沈黙が落ちる。


 山岳領主がゆっくりと問う。


「お前は王都を揺さぶるつもりか」


「制度を揺さぶるつもりです」


「違いは」


「感情でなく構造を変える」


 私は地図の中央を指す。


「徴税制度は中央に偏りすぎている。備蓄義務は曖昧。人気政策に歯止めがない」


「そこまで踏み込むのか」


「踏み込まなければ、毎年同じことが起きる」


 サラが静かに言う。


「あなたは嫌われる」


「慣れています」


 エルヴィンが笑う。


「王都だけでなく、我々にも」


「それでも冬は来る」


 長い沈黙。


 外で風が唸る。


 グレアムが立ち上がる。


「一割供出。条件付きで同意する」


 エルヴィンが頷く。


「河港は協力する。ただし全面封鎖はしない」


「十分です」


 サラが最後に言う。


「裏切れば、あなたを切る」


「当然です」


 私は視線を返す。


「裏切らなければ、守る」


 四領の視線が交錯する。


 これは同盟ではない。


 利害の一致だ。


 だが十分だ。


「正式文書を作成する」


 私は命じる。


「王都に提出する」


 会議が終わる。


 セドリックが隣に立つ。


「国家規模です」


「ええ」


「失敗すれば終わります」


「知っている」


 私は窓の外を見る。


 吹雪が近い。


「成功すれば?」


 彼が問う。


「国家が変わる」


 私は静かに答える。


 辺境は、初めて一つになった。


 王都に対して。


 冬の風が城壁を叩く。


 嫌われる覚悟は、領地だけでは足りない。


 次は国家だ。


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