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悪役令嬢は嫌われることにした ~嫌われても辺境で黒字を出す~  作者: 桐谷ルナ


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第15話 穀物の値段

 異変は、数字から始まった。


 王都からの定期報告。

 穀物市場価格、三週間で二倍。


 私は報告書を読み直す。


「誤記ではないの」


「ありません」とセドリック。


「王都で買い占めが起きています」


「理由は」


「王家の備蓄不足。人気政策の影響です」


 私は目を細める。


 減税と公共事業。

 民衆支持は高い。

 だが備蓄は削られた。


「そして?」


「王都が辺境から穀物を徴発する可能性が高い」


 沈黙。


 レヴァンはようやく黒字に転じた。


 備蓄は最低限。


 ここで徴発されれば——


 冬を越せない。


「正式通達は」


「まだです」


 だが時間の問題。


 私は机を叩く。


「市場封鎖は」


「商人が反発します」


「教会は」


「中立を保つでしょう」


 つまり、孤立。


 数日後。


 王都から勅令が届く。


 “非常時特別徴発令”。


 辺境各領より穀物を供出せよ。


 供出率、三割。


 ハロルドが蒼白になる。


「三割出せば、春前に枯渇します」


 私は即座に計算する。


 備蓄量。

 人口。

 消費量。

 冬の残日数。


 答えは明確。


 出せない。


「拒否は反逆です」


「承知している」


 セドリックが静かに言う。


「あなたは選択を迫られています」


 私は立ち上がる。


 窓の外、吹雪が近い。


 ここで供出すれば、王都は救われるかもしれない。


 だがレヴァンは死ぬ。


 供出を拒めば、王都と敵対。


 私は呟く。


「王都は人気を選んだ」


 そして今、代償を払う。


「私たちは何を選ぶ」


 セドリックが問う。


 私は答える。


「レヴァンを守る」


 静かな決断。


 彼は目を細める。


「王都と戦う?」


「戦わない」


「では」


「制度で止める」


 机に広げる地図。


 交易路。

 他領の備蓄。

 商人ネットワーク。


「単独では拒否できない」


「連合を組む?」


「ええ」


 辺境諸領と連携し、供出率の再交渉。


 中央と対峙。


 国家規模の交渉。


 セドリックの声が低くなる。


「これは内政ではありません」


「知っている」


「国家戦です」


 私は微笑む。


「ようやく舞台が整った」


 嫌われることには慣れた。


 次は恐れられる番だ。


 吹雪が窓を打つ。


 第2部が、静かに始まった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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