作られた均衡
それからの日々は、奇妙な均衡の上に成り立っていた。
夜ごと、ソウタは《共犯者》の声を胸の奥に響かせながら、頭目へと密かに情報を流した。
「今夜は東の畑の見張りが手薄だ」「明日、村の男衆は山狩りに出る」――些細だが確かな情報。
野盗たちはその隙をついて、家畜を数頭、干し肉を数束、時には薬草や道具を持ち去った。被害は出る。だが壊滅には程遠い。村は生き延び、野盗は血を流さずに利益を得る。
そして数日後。
「また野盗が来たぞ!」という叫びとともに、わざとらしい襲撃が始まる。
頭目から伝えられた筋書き通り、ソウタは憲兵のダリオや若者たちと共に立ち回り、勇敢に敵を退ける役を演じた。村人の前に倒れる野盗は、すべて“余分な駒”に過ぎない。頭目が差し出す犠牲。
「よくやった! お前がいなければ、村は滅んでいた!」
そう村人に肩を叩かれるたび、ソウタは笑って応えた。だがその瞳の奥で、詐欺師の血は冷たく沸き立っていた。
《見事です。あなたは村の英雄となり、野盗の協力者でもある。どちらからも必要とされる者……これ以上、安定した立場はありません》
やがて一か月。
村は襲われては守られ、少しずつ疲弊しながらも、英雄ソウタを中心に結束を強めていた。
野盗たちは計画的に利益を得て、頭目は満足げに笑みを浮かべていた。
すべてが「予定調和」に見えるほどに、巧妙に仕組まれていた。
――ソウタが、居場所を手に入れるための、偽りの均衡だった。




