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第7話 支える者とその願い

2022年2月 Vandits field

 年に一度のファン感謝イベント『大評定祭(だいひょうじょうさい)』。今年に関してはサポーターは皆興奮してこの日を迎えていた。昨年・一昨年と大評定祭は規模を縮小した形で行われ、第一回を上回る規模での開催はまだされていないと言う印象だった。


 しかしだ。今年に関しては大規模が予想される要因が様々に考えられる。まずは男女トップチームが共に『JFL』『なでしこリーグ2部』への昇格を決めた事。そして『戦場の改修工事終了』。最後に最大の要因となるのが、Vandits高知の『第二部』と銘付けた今シーズンの出発である。


 チーム発足のキーマンであった及川司が引退し、設立当初のメンバーで残ったのは八木和信・大西悟・和瀧登の三名のみとなった。メインとなるメンバーもほとんどが若返りを果たし、チーム発足五年目にして初めての世代交代を果たしたと考えて良いだろう。


 新体制発表会の最後に紹介された動画に誰しもが胸を熱くした。

~・~・~・~・~・~

 真っ暗なグラウンド

 センターサークルを挟んでスポットライトが二本差している


 それぞれに男性と女性が二人一組で立っている

 男性は山伏のような格好だが全体的に動き易そうな衣装

 女性は着流しのような衣装だが軽く羽織っているだけで腰から下は生地が斜めに切り破られているような衣装だ


 どちらも衣装の下にはサッカーユニフォームの下に着るインナーシャツとパンツユニフォームを穿いている


 一組は八木和信と山口葵

 もう一組は成田雅也と五百城彩羽


 八木と山口はサッカーボールを片足で踏んでいる

 八木が乗せた足に腕を置いて成田に向かった人差し指をクイッと折り挑発する

 山口もまた腰に手を当てて五百城を上から見下ろす


 音楽はドラムの音が響く重低音のハードロック


 成田と五百城は二人を見て不敵に笑う


 八木と山口のアップ テロップが爆音と共に表示される

 【壁の高さを教えてやる】


 成田と五百城のアップ

 【世代交代の覚悟は出来たか】


 成田が八木へ、五百城が山口へ、ボールを奪いに走る


 互いに譲らない攻防は音楽も相まって激しさを増す


 『努力する事は小学生までに覚えた(五百城)』

 『仲間を信頼する事は高校までに覚えた(成田)』

 『応援してくれる皆と歩む事を教えて貰った(山口)』

 『さあ、今こそ....(八木)』


 『『『『本能を覚醒しろ!!!!』』』』


 『『『『2022年、本能覚醒』』』』



 選手の声と共に八木が画面に向かってシュートする映像で終わる

~・~・~・~・~・~

 イベントの開始を今か今かと待ちわびるサポーター達に向けて、大型ビジョンで動画が流されるとサポーター達の声援と熱が一段上がったように感じる。

 今シーズンのトップ2チームの共通スローガン【本能覚醒】。

 新たなステージを進む両チームに求められる新たな力。それを表す為のスローガン。今まで以上の成長と選手の個の力を求められるシーズンになっていく。


 夕方のピッチに照明が当てられる。イベントの開始を告げる光にサポーター達は自然発生の手拍子を始める。


 『本日は成長を遂げたVandits field戦場にお越しいただき、誠にありがとうございます!本日の進行を務めます有澤有紀と....』

 『阿部桜でございます。』


 サポーター達の声援が爆発する。有澤が放送席からチラリとスタジアムを見下ろすと、空席が見られないほどの観客を確認出来た。間違いなく観客動員最多となっているだろう。


 『それでは皆様に我々の両チーム選手・監督・全スタッフの入場です。(有澤)』


 入場ゲートから選手達が入場してくる。所属全選手と監督・コーチ・全スタッフがピッチに現れる。選手達が試合と同じようにセンターサークルを挟み、ヴァンディッツ・シルエレイナに分かれて並ぶ。そして監督がセンターサークル内で並び立つ。

 ヴァンディッツは今シーズンも百瀬が率いる事になっている。シルエレイナも変わらず原田が監督を務める。


 コーチ陣・スタッフは選手達の後ろに並ぶ。スタッフ陣の中には中堀などの姿もある。育成部門のコーチではあるが、今回は育成スタッフも一緒に整列している。


 『続きまして、(株)デポルト・ファミリア取締役社長常藤正昭がご来城の皆様へ挨拶をさせていただきます。』


 常藤が登場しサイドライン際で四方に頭を下げてラインを跨ぐ。そこで大きな拍手を受ける。昨年の冴木和馬の運営部長就任挨拶の時と同様に、常藤がピッチ内に足を踏み入れるのはこれが初めてだった。

 センターサークルを中心に並ぶ選手達の前に立ち、再び四方に頭を下げてメインスタンド側に向かって挨拶を始める。


 『皆様、常藤でございます。(株)デポルト・ファミリア代表取締役を《《預かって》》おります。日頃よりの皆様からの熱い声援とあたたかいご支援に対しまして、全従業員・全選手・スタッフを代表しまして御礼申し上げます。』


 深々と頭を下げる。サポーター達からの大きな拍手が起こる。


 『今シーズンより始まります新たな闘いに向けて、今一度皆様と心を一つにする為の大評定祭でございます。イベントに先駆けまして行われました安芸高校サッカー部の皆様とのフレンドリーマッチも非常に盛り上がっていただけましたが、ここからは皆様に更にギアを上げていただき、楽しんでいただければと思います。』


 そこで運営統括部長の冴木和馬が呼び込まれる。冴木も常藤の隣に並び挨拶を始める。やはり今シーズンからは新たな挑戦が始まる事を強調し、スタッフも選手達同様に最後の最後まで気を抜く事なく全力で臨む事を誓った。今までの冴木、いや、運営統括部復帰前の冴木の印象とは違い、非常に熱く感情的にサポーター・来城者に訴えるその姿にサポーター達もクラブの並々ならぬ気合を感じていた。


 二人の挨拶が終わり、両チームキャプテンと監督の挨拶が行われる。Vandits高知は中堀が出場していない時にピッチ上でキャプテンマークを巻く事の多かった大西が今シーズンより正式にキャプテンに就任。副キャプテンは岡田と伊藤。チームのまとめ役に経験豊かな二人がサポートすると言う布陣になった。

 両チームともに新体制発表会でも話した通り、目標は昇格しかなく、Vandits高知であってもJFL残留と言う達成可能目標ではなく、しっかりと最大目標を口にしてそれをサポーターと共有していきたいと話した。

 シルエレイナ高知の監督である原田は「ここで躓くようなチーム作りはしていない。」とハッキリと明言した。「1部昇格以外に達成目標は無いと思っている。自分自身を追い込み続けるシーズンになる。」と話した。


 大西は及川や中堀から教えられたヴァンディッツらしさ、自分達の譲れない部分をしっかりとこれからチームに加わってくれたメンバーに伝えていく事を目標とし、そしてサポーターにもそれをしっかりと発信し続けていく事を約束した。

 山口は今のチームの勢いは一時的なモノでない事を強調。これがシルエレイナ色なのだと言う。このままなでしこ2部でも勢いを維持したまま昇格を目指していく事を誓いながらも、やはり足元を固める事を忘れず強固なチーム作りを目指していく事を約束した。


 チームからの頼もしい言葉にサポーター達はコールと手拍子で応える。今シーズンからサポーター応援団は、Vandits高知は『向月(こうげつ)』とシルエレイナ高知は『百花(ひゃっか)』と言う私設サポーター応援団に分かれた。


 『向月』のリーダーは変わらず三原洋子。向月はその名の通り向日葵(ひまわり)から取った。どんな時でもチームと言う太陽と向き合い続けると言う願いを込めて採用した。

 『百花』はことわざにある【梅は百花の(さきがけ)】から取った。梅は寒さの厳しい中、その年のどの花より先立って咲くことから、優れた人は誰よりも先に秀でるものという意味がある。どんな状況でも必ず花咲かせる選手達を支える願いを込めて採用した。こちらはリーダーを三田希美が務める。


 力強い声援を受け、スタッフ・選手が下がっていく。そして、会場の照明が全て落とされた。スタジアム中から「おぉぉぉ~~~~!!」と何かを期待する声が上がり始める。


 そう、後に大評定祭の毎年、この時間帯が『出陣式』と呼ばれる事となるエンターテインメントの始まりだ。


-・-・-・-・-・-

※動画の描写がありましたが、某国民的バスケ漫画の映画で使用され、バスケ日本代表戦でも流れた事で爆発的な人気となった某曲を頭の中に流しながら書きました。もし宜しければ皆様もその曲を聴きながら読んでいただけると少し楽しんでいただけるかと。

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