第5話 祭り前のワクワク
2022年2月末 Vandits field <柿倉 翠>
確認を終えて次の場所へ走ります。サポート部全体で仕事を振り分けてはいますが、さすがに今日は忙しく走り回る事になりました。
(株)デポルト・ファミリアのサポート部に採用になって二年が経ちました。今までは常に雪村さんが付き添ってくれるか、サポート部のメンバーが二人一組で仕事をする事が決まりでした。
まだ一人で判断させるには早い。雪村さんにはっきりそう言われた一年前を今でも覚えています。サポート部はデポルト・ファミリアの血管。それはファミリア時代から雪村さんが心がけていらっしゃる事で、今ではデポルト・ファミリアサポート部の心得のようなものになっています。そして私とつぐみ(池)はこの四月から正式に(株)Vandits所属になる事が決まっています。
次の現場は当日警備の人員配置の確認と警備員さんのシフトなどの確認をする為に警備会社の担当者さんと打ち合わせです。警備員さんの配置場所を歩いて確認しながら実際にどのような警備計画になっているかを事前に取り決めた計画書と照らし合わせながら確認していきます。
明後日は待ちに待った『大評定祭』。しかもVandits高知がJFL昇格、シルエレイナ高知がなでしこリーグ2部加入となって臨む記念すべき年に向けた大評定祭となります。事前に社内全体の会議で全体の流れは教えていただいていますが、間違いなく今までに行われた大評定祭の中でも一番大掛かりで盛大なモノになるのは間違いありません。
警備会社の皆さんも会社同士ではもう五年の付き合いになりますので、こちらの要望はしっかりと把握してくれていますし、修正点や計画よりも警備を厚くするべき所などはしっかりとアドバイスもいただけます。
確認を終えて一度スタッフゾーンの事務スペースに行きます。ここは今日・明日の間だけ大会議室内に作られたスタッフ専用の控室兼ミーティングルームです。
スタジアムの改修を経て、今まで空き部屋として区画ごと閉鎖していたバックスタンド側の部屋が全て解放されて、今までメインスタンド側にあった警備員控室や倉庫スペースなどをバックスタンド側へ移した事で、今まで構えられなかった記者室やスタッフ専用の部屋を構える事が出来ました。
「柿倉戻りましたぁ!」
「お疲れ様。どうでした?」
「問題なしです。やっぱりメイン入り口側は二名体制を三人二班にして細かく休憩取る形でお願いしてきました。増員も大丈夫みたいなので、そのままお願いして有ります。」
「ありがとう。お弁当来てるからそのままお昼入って良いよ。」
「有難う御座います!!」
雪村さんから仕出し店のお弁当を受け取り、メインスタンドへ出る。今日は業者さんや社員達が作業してる場所で無ければ、どこで食事を取っても良い事になっています。当然ですが一番人気はメインスタンド。この風景を見ながらゆっくりご飯食べられるなんて、運営側にいたらこんな時くらいしか経験出来ませんから。
メインスタンドには何人か同じようにお弁当を広げている人達がいました。私は加奈(雨宮)さんに手招きされてお隣に座らせてもらいました。
「ごめんね。先に貰っちゃって。」
「全然! 食べれる時に食べとかないと時間取れませんもんね。」
ピッチからボールの音がします。選手の何人かがピッチのコンディションを見ていました。
「あれ? 今日使う予定ありましたっけ?」
「明日のフレンドリーマッチ前に芝の状態見に来たんだって。東部園芸緑地さんが30分なら良いって。」
「いやぁ~。サッカー小僧、サッカー少女ばっかりですねぇ~。」
「明日が楽しみだね。」
「はい!!」
今年からは(株)Vanditsの主催に変わりましたが、デポルト・ファミリアのイベントはサプライズがある意味観に来る皆さんのお楽しみになっています。今年も当然用意はされてるんですが、間違いなく予想も出来ないでしょうし度肝抜けるはずです。
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2022年2月末 香美市某スーパーマーケット <望月 尊>
「はい。確認出来ました。お預かりします。」
「よろしくお願いします。」
従業員の方から納品書控えをいただき、今日の分の野菜の納品を終える。今回で三回目。売れ行きは良かったと聞いている。
「前回の分、ほとんど残らなかったのよ? やっぱり状態が良いからかしら?」
うちの野菜を褒めてくれている。非常に嬉しいが、長く農家をやられている方達から比べればうちの農園の野菜の出来はまだまだだ。良い状態の野菜が安定的に育てられるようにならないと。そう言った意味ではまだ不安定だ。
「ありがとうございます。皆、喜びます。」
「明後日、芸西村のスタジアムでイベントなんでしょ?」
「はい。今準備でバタバタしてるみたいです。」
「うちも息子がヴァンディッツのファンだからさぁ。一緒に行こうと思ってるのよ。私みたいなおばさんが行っても楽しめる?」
「飲食出来るスペースもありますし。一度サッカーをゆっくり観ていただいて、どんなもんか知って貰えるだけでもうちは嬉しいですから。ぜひ楽しみにしててください。」
「そぉ? それもそうね。じゃあ、ご苦労さま!」
「ありがとうございます! 失礼します!」
納品用のコンテナを両手に軽トラックに戻る。この時間は他の農家さんや配送トラックも来るので、あまり長時間車を停めてると睨まれる。
さっさと車に乗り込み駐車場を出る。
今回のサンライズさんとの取引があった事でうちの農園は本当に助かった。先月までかかったスタジアムの改修工事の影響で2021年は練習試合などのホーム戦を一切行えなかった。その為、それを観にいらっしゃる方々の宿泊も無くなり、一昨年に比べると野菜の納品量は下がった。
当然、改修工事が計画された時点でこちらにも相談・打ち合わせはあり、収穫量の調節などはしていたのだが、畑を遊ばせておく事も出来ず在庫を抱えるのを覚悟で植え付けをした野菜もあった。
問題は夏前からだ。夏休みが近付けば県内の小中学校のクラブ合宿の予約が入り始める。そうなるとサンライズさんとえんがわの事も合わせてうちの農園の野菜の納品量はグッと上がる。年明けから準備には入っているが、さすがに相手は自然。どれだけ頭で考えていても、軽く吹っ飛ばすことをしでかしてくる事はこの数年間で学ばせてもらった。
農園に帰ったらもう一度、茂さんと相談しよう。そろそろ芸西村外の畑を確保する事も考えなければいけないのかも知れない。
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Vandits garage <冴木 和馬>
「和馬さん、現地のリハOKだったそうです。明日の通しで最終確認になるそうです。」
「分かった。ありがとう。」
サポート部の富田がVandits fieldでのリハーサルの様子を伝えてくれた。(株)Vanditsのサポート部所属になる予定の池と柿倉は現地で調整と確認をしてくれているので、今日一日はデポルト・ファミリアのサポート部が事務作業を助けてくれている。
二つの会社で所属が分かれているとはいえ、そこは柔軟に対応出来るようにはしている。
「楽しみですね!! (富田)」
「去年はフレンドリーマッチと和馬さんの復帰報告のみで、一昨年は出来ませんでしたからね。本格的な開催は久しぶりですから。(登島)」
「その両年の原因となってる本人としては申し訳ない気持ちで一杯だがな。」
「っ..っそっそんなつもりで言ってません!」
「分かってるよ。冗談だ。」
こうしてサポーターやスポンサーの皆が楽しみにしてくれているだけじゃない。準備をしている自分達も楽しみなんだ。
何が何でも成功させなくては。




