表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

第3話 クラブではなく企業

2022年2月 新体制発表会 <笹見 徳蔵>

 クラブとしての在り方ではなく、企業経営の中の一つの事業としてクラブがある事をサポーターに理解して貰うと言う事か。この辺りに関する坊や常藤の考え方はこれまでにも何度か説明をされ、納得もしておるしそれが本来の企業経営の形であるべきだと言う考え方は正樹も含め笹見建設としては理解しておる。


 しかしサポーターからすれば勝ってJリーグ、出来ればJ1に行けばクラブの赤字は解消出来るくらいに儲かるはず、くらいの知識しか無いものも多々おる。それほど経営は甘いものではない。

 現にJ1のクラブですら親会社補填などが無ければ赤字と言うチームがあるのが現状じゃ。親会社からすれば年間の運営にあり得ない金額を投入したにも関わらず、年間途中でクラブから「今年赤字だからこの分は親会社で賄ってください」と開き直られては呆れるしかないじゃろう。いくら経費で落とせて税金対策になるとは言え、払わなくて済むならそれに越した事は無いはずじゃ。

 挙句の果てには連敗などしようものなら親会社に責任を求めるサポーターまで現れる始末じゃ。それだけ金銭投入して勝てんなら下のカテゴリーから体制を見直して出直せと儂なら言うがの。


 この事は譜代衆の中でも何度も説明会や勉強会が行われ、高知県の中小企業スポンサーの経営者は挙って参加しておった。坊達は自分達だけでなく、正樹や宇城君などにも講演をお願いして譜代衆としてスポンサー企業としての在り方を理解して貰う努力をこの数年続けておる。それはJFL入りを果たした今年になって大きく結果を出した。

 プロ契約に関する説明も事前に譜代衆には実施されたが、ほぼ全企業が異論なく了承したと聞いておる。


 (株)デポルト・ファミリアの営業部におる秋山君からデポルト・ファミリアの全ての事業の説明とその中での活動理念や目標が発表されていく。

 これはデポルトを立ち上げる時に笹見建設に来て坊達が説明したものと同じ内容がサポーター達に説明されている。ヴァンディッツとシルエレイナのサポーター達の意識を変えていきたいのじゃろう。


 その中で選手達のセカンドキャリア・デュアルキャリアの説明を行った時には一部のサポーターから拍手が起こったほどじゃった。企業としての取り組みを少し理解して貰えたのかも知れん。

 確かにVandits安芸時代に引退した選手のほとんどがデポルト・ファミリアまたは(株)Vanditsで雇用継続されている事を考えれば、この事業は少しづつ結果は出せている事にはなるのじゃろう。これが地域の企業にまで広がっていくと更に良いのかも知れんが。そこは今後の課題か。


・・・・・・・・・・

<冴木 和馬>

 経営方針の説明を終えての会場の雰囲気は上々だろう。まぁ、赤字の不安が無いと言う事が一番大きかったのかも知れない。ヴァンディッツに関してはこれだけのスポンサー収入に入場料・グッズ収入があって、JFLクラスで赤字になるようなら間違いなく経営陣の怠慢としか考えられない。

 その部分ではサポーターの皆さんには一定の理解は得られたのだろうと言うのがこちらの判断だ。


 ここでやっと両トップチームの今シーズンの新体制を発表する事が出来る。


 ヴァンディッツに関しては百瀬が今年も指揮を執る。板垣に関してはアシスタントコーチ兼テクニカルアドバイザーと言う形で運営に参加して貰っている。アシスタントコーチではあるが試合には帯同しない。練習に参加する事と運営会議に参加して貰うのが今年の条件だ。それ以外は特に勤務的に縛りは作っていない。


 シルエレイナはスタッフ陣は新たな人材が加わる。今まで四人で動かしていたのだ。あまりに無理があった。今シーズンからはフィジカル面のコーチとアスレティックトレーナーが加入した。


 そして両チームに大きく関わるのがホペイロのチームを新たに会社内に設立した事。これに関してはチーム担当のホペイロがいる訳では無い。両チーム分を一つのホペイロチームが担当する。総勢8名。ホペイロとしてシューズ管理や道具管理の専門知識を持っているのは3名。それ以外は将来的にホペイロを目指している専門学校の卒業生やシューズメーカーからの転職組で構成されている。これで少しは選手達の負担を減らしてやれるはずだ。


 もう一つ、一番の変更点は両チームにメディカルスタッフが入った。これは偶然に偶然が重なっただけなのだが、移住事業で相談を受けた大阪のご夫婦がまさかのご夫婦で医師免許を持っていた。旦那さんである山本大輔さんのご両親が高知県南国市出身と言う事があり、高知県で診療所を建てたいと言う夢があったそうだ。

 ここからはオフレコの話なんだが、俺と常藤さんは山本さんご夫婦にある提案をした。それは数年後、恐らく4年以内にオープンするであろうVandits field内のホテルに外部からも来てもらえる形のテナントを構えるので、そこで診療所をしないかと提案してみたのだ。それまではチームと会社のメディカルドクターをお願い出来ないかと。


 答えは即決だった。もちろんだが会社の定期検診や普段の診療もお願いする形になるのは当然だったので、山本さん達は開業すぐに150名近い新規のお客様リストを手にする事になる。それまでは社員扱いでクラブハウス内に簡易診療所を構え、選手と社員の健康相談はもちろん怪我や病気の治療もしていただく予定だ。安芸病院にも相談し、難しい症例などに関しては安芸病院に送る形を取る事も話し合えている。


 サポーターの皆さんにはこのような裏事情は一切お話はしないが、チームにメディカルスタッフとホペイロが入ったと言う報告だけでもチームが充実してきている実感を持って貰えたはずだ。


 そこから新ユニフォームのお披露目、新加入選手の紹介へと続いていく。ユニフォームに関してはヴァンディッツは深緑色、シルエレイナは紅梅色がメインカラーであると言う事は変わりない。今回のデザインも有澤が担当してくれた。今シーズンのデザインのスケジュールに関しては、昨シーズンが練習試合などでのホーム戦の仕事が無かった事もあり、日程的に楽だったと言うのは本人談だが、今シーズンからは本人とも話し合って有澤におんぶに抱っこの状態から脱却しなければいけないと感じている。


 ヴァンディッツ新加入選手は7名。ほとんどが大学卒の即戦力を願って交渉した選手ばかりだが、2名だけそうではない選手がいる。


 まずは藤村雄平。二十歳。Vandits高知として初めての育成型《《期限付き》》移籍での加入となる選手だ。アルビニス新潟からの加入で高卒で新潟に加入するがまだ出場機会に恵まれない為、出場機会を求め当クラブへの打診があちらからあった。


 そしてもう一人が石井正司(ただし)。十八歳。安芸高校から二人目の育成型加入となる。御岳さんと中堀、成田、司の推薦があっての加入となった。しばらくは農園で働きながら基礎体力と体幹・基礎技術を固めていく事になるが、高校からサッカーを始めてこの成長は異常だと御岳さんが若干引いていた。司と中堀も中学、出来れば小学校からサッカーを始めていたら、もしかしたら高卒でプロ入りも有り得たかも知れないと評価が高い。


 シルエレイナの新加入選手は5名。大学卒の選手が3名。なでしこリーグに所属していた選手が2名。今回はヴァンディッツ以上に即戦力重視で補強した。

 シルエレイナユース選手は全員が安芸高校へ入学したが、試合はクラブユースとして出場するので高校主体の大会には参加出来ない。これはコーチ陣も相当悩んだらしいが、選手達自身が話し合って決めたらしい。クラブユース日程だと高校のクラブ活動とは試合日程が被らないので、練習試合などで高校にお願いしやすい事もあり高知県ではそれのほうが練習試合を組みやすいのではないかと選手達自身が意見を出してくれたらしい。良く考えている。


 様々な発表などもありながらではあったが、無事に新体制発表会を終える事が出来た。いよいよJFL、なでしこ2部での挑戦が始まっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ