白い門
これは高校生の時に思い立って書いたものです。
粗末な文章ですが、温かい目で見てやってください。
ここにいるよ……?
こんなに大きい服を着せて、僕を隠そうとしているの?
こんなに裾の長いズボンで、僕を逃がさないようにしているの?
歩きにくくて躓いて。
誰もいない広いお城に閉じ込められて、とってもさびしいよ。
どんなに部屋を散らかしたって、片づけるのは僕一人。
お昼過ぎまで寝てたって、怒られることなんてないけれど。
毎日いつの間にか決まったご飯が、机の上に置いてあるだけ。
外に出たくても、窓もドアも鍵がかかってて出られない。
柵のある、換気用の窓から見える外は、花も咲いていないただの野原だけど、誰かが手入れをしているのかな。いつになっても草はボーボーにならない。
昨日気になってたほこりがあっても、今日はピカピカの奇麗な床になってたり。
僕を独りにして何をしようというの?
僕は何も知ることができない。
昨日着ていた服なんて、洗濯されて広間に干されていたりすると、次の日まで夜中見張っていようと思うのに。
やはり僕はまだ子どもで、ずっと起きてなんていられない。
僕の服をだれが選択するんだろう。
僕のご飯をだれが作るんだろう。
このお城をだれが掃除するんだろう。
木のドアをどんなに強く蹴り飛ばしたって、弾みで僕が後ろに転がるし。
ボールを投げて窓を割ろうとしても、へろへろの球しか投げられないし。
火のつけ方もわかってきたけれど近づくのはちょっと怖い。
どうやったってまだ子どもの僕には、ここから出ることはできないんだ。
やっとそんなことを理解して、大人になるのを待っていたら……。
柵の一本がさびて壊れたの。
今の僕は、前の僕より少しくらい大きくなったけれど、そこから抜け出すことは簡単だ。
でも
今になって怖くなった。
外に出て何をしようというの?
このままずっと城の中で暮らしたって生きていける。むしろ、城の中の方が安全なんじゃないかな。
外に出て、怖い化け物に出会ってしまったらどうするの?
独りで生きてきた僕に、外の人と話をすることはできるの?
そんなことより、外に人が居るかどうかもわからない。
――――やめよう。
このままでいい。なにも知らなくていい。
僕はここで、この城でずっと一人で生きていくんだ。
そうだよ。
独りで……。
もう平気なんだ。
平気なはずなんだ。
でも……。
どうしてだろう。こんなにも胸が苦しい。
涙が止まらないよ。
いやだよ、こんなの。
あんなに外に出たかったのに。
あんなにも、外に出られる日を楽しみにしてたのに。
どうして僕はこんなに憶病になったんだろう。
転んだって、泣いたって、怖くなったって、
だれも側に来てはくれないんだ。
だれも助けてはくれないんだ。
いやだ。
僕はここにいるのに、どうしてだれも気付いてくれないの?
僕を見つけて。
僕はここにいる。
だれか。
たすけて。
僕をここから出して。
「———————―———————-っっ!!!」
僕は、冷たい石造りの床に寝そべっていた。
そこは、ぽっかりと開いた空間のようで、床と同じ石造りになっている壁は、高くそびえ立っていた。
間にいくつか窓がある。天井も、ステンドグラスのようで奇麗だ。
窓から光が差し込んで、頬に照って暖かい。
「あら、やっと起きたの?こんなところで寝ていると風邪ひくわよ」
後から懐かしい声がした。もう何年も聴いていなかったかのようだ。
体がやけに重い。床にそのまま寝ころんでいたからだろうか。
だらりとしながら声のした方を振り向くと、そこにはもう誰も居なかった。
ただ、遠ざかる足音だけが響いている。
僕は、まだ伸びたままだった体を起こし、近くにあった鏡でそこにある自分の姿を見た。
大きい、体格のいい、だけど均整の取れたものだった。
だらりと伸びた半袖の白いシャツに、ひざ下までの深い緑色のズボンを履いていた。
外から子どもたちの笑い声が聞こえる。
僕の周りには、幾重にも散らばった紙がある。
紙には、それぞれ絵が描かれている。
これには見覚えがある。僕が描いた絵だ。
無造作に口の端を上げて、笑いを含んだ声でつぶやいた。
「下手な絵……」
そうか、僕はずっとここにいたんだ。
いつでも自分の思いで出ていける、ここに。
いったい自分は何を書きたかったんだろう?
と思いながら書いて読み直し。それでも訂正する箇所は見当たらなくて、これが自分の中の拘りなのだろうかと思いました。