山椒の佃煮と帝釈天と着流し
帰宅し、父が着流しの着物を着ていると、あぁ、またやってしまったんだな、と思う。
何をやったかというと、ギックリ腰。
重症の場合は横になってぴくりともしないのだけれど、ある程度回復してきたり、軽症だったりすると、こうして着流しの着物を着るのだ。
一見粋に見えるけれど、帯をコルセット替わりににしているだけだったりする。
ギックリ腰になると必ず行くのがかの有名な柴又帝釈天の目と鼻の先にある(らしい)老舗の佃煮屋さん。
本来の目的は柴又帝釈天の近くにある鍼療所なのだけれど。
着流しの着物を着て、白米にたっぷりと山椒の佃煮をのせて食べ、満面の笑みを浮かべる姿は、どう見てもギックリ腰で苦しむ姿ではなかった。
山椒の季節。
以前は舌がピリピリとして苦手だったけれど、大人になったからなのか食べられるようになった山椒。
今では加減を教えてもらいながら自分で佃煮にして食べるようになった。
実山椒を買い、小枝をハサミで切り落とし、青々とした緑色の山椒の実をサッと煮る。食べられるようになったとはいっても、ある程度は水にさらしていないと私には刺激が強すぎる。
四時間ほど水にさらして、消毒した瓶に山椒の実と塩を入れ、混ぜる。エキストラバージンオイルをひたひたになるぐらいに注ぎ、蓋をする。
半日から一日程寝かせれば山椒のオイル漬けの出来上がり。パスタに使ってよし、魚や肉を焼く時に使ってよし、冷奴にのせてもよし。
残りは大匙一杯ずつ分けて冷凍しておく。
美味しく出来たら、父にお供えしよう。
おかわり、と言ってお茶碗を差し出す父の笑顔を鮮明に思い出した。
今年も、山椒の季節になったね、お父さん。