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超克の艦隊  作者: 蒼 飛雲
第三段作戦

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第46話 新型戦艦撃破

 被弾損傷のため、一気に脚を衰えさせた先頭艦。

 衝突を回避するため、後続艦は舵を切らざるを得ない。

 そのことで、整然としていた単縦陣は乱れに乱れる。

 そして、それは他艦からの支援が受けられないかあるいは受けにくい状況になることを意味していた。


 連携をズタズタにされた第一任務部隊の隙を突くべく、二七機の九七艦攻が中央列の最後尾に位置していた戦艦に迫る。

 「翔鶴」隊と「雲鶴」隊が右舷から、「瑞鶴」隊は左舷からの同時攻撃。


 一方、狙われた戦艦もまた自身を守るべく高角砲や機関砲、それに機銃を総動員して九七艦攻を叩き墜としにかかる。

 その対空砲火の激しさは、マーシャル沖海戦で戦った当時の戦艦とは段違いだ。

 吹きすさぶ火弾や火箭の中を九七艦攻は突き進む。

 近づくにつれて、おぼろげだった相手の輪郭がはっきりしてくる。


 (「ノースカロライナ」級だな)


 前に二基、後ろに一基の大ぶりな砲塔。

 それに二本煙突。

 攻撃隊指揮官兼「瑞鶴」艦攻隊長の嶋崎少佐が敵戦艦の正体を看破する。


 その彼の目に、眼前の敵戦艦が艦首を右に振りつつある姿が映り込んでくる。

 右舷からは「翔鶴」隊と「雲鶴」隊の一八機が迫っている。

 左舷のほうは「瑞鶴」隊の九機だけだから、敵戦艦の艦長は数の多い右舷からの攻撃に対して艦を正対すると決めたのだろう。

 転舵によって被雷面積を最小化するのは、魚雷を回避するための常套手段だ。


 それとともに、嶋崎少佐はなぜ敵の砲火が激しいのにもかかわらず、九七艦攻の被害が少ないのかを理解する。

 いかに、大量の対空火器を備え、さらに優秀な射撃指揮装置を持っていたとしても、艦が回頭している最中にあってはそれこそ命中など覚束ない。


 一方、敵戦艦が右舷からの攻撃を優先して回避したことは、逆に「瑞鶴」隊から見れば自ら横腹をさらしてくれたようなものだった。

 しめたとばかりに、九機の九七艦攻は敵戦艦に肉薄する。


 だが、接近するにつれて敵の狙いも正確になってくる。

 第二小隊三番機が機関砲弾か機銃弾の直撃を食らって爆散、さらに第三小隊長機もまたオアフ島沖の海に叩き墜とされる。

 九七艦攻は発動機を新型の一三〇〇馬力を発揮する金星五〇系統に換装し、その馬力の余裕をもって防弾装備を充実させていた。

 しかし、艦艇が搭載する機関砲弾や大口径機銃弾の直撃を食らってはさすがにもたなかったのだ。


 部下の死を悼む気持ちを心の片隅に押しやり、嶋崎少佐は理想の投雷ポイントへと急ぐ。

 その間にも被弾機が相次ぐが、幸い致命的なダメージを受けた機体は無かった。


 「撃てっ!」


 ほとばしる気迫とともに、嶋崎少佐は魚雷を投下する。

 六機にまで減った部下たちもそれに続く。


 魚雷を投下すれば、あとは九七艦攻に出来ることは無い。

 最後の任務である生還にその全精力を注ぎ込むだけだ。

 敵戦艦の艦首や艦尾を躱しつつ、海面に張り付かんばかりの超低空で九七艦攻は必死の逃亡を図る。


 だが、すべての機体が無事に逃げ切ることは出来なかった。

 嶋崎少佐の真後ろに位置していた第一小隊二番機が機銃弾のシャワーをもろに浴びてしまう。

 同機体は炎と煙を盛大に吹き出しながら海面に突っ込んでしまった。

 避退のための操縦に専念する嶋崎少佐だったが、その彼の耳に後席の部下からの喜色混じりの報告が飛び込んでくる。


 「目標とした戦艦の左舷に水柱! さらに一本。右舷にも水柱! さらに一本、二本!」


 どうやら敵戦艦に対しては五本の命中魚雷を与えたようだった。

 これが空母かあるいは旧式戦艦であれば、まず撃沈は間違いのないところだ。

 しかし、相手が新型戦艦であれば微妙だった。

 それでも、戦闘力を完全に奪ったことだけは確かだった。

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