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超克の艦隊  作者: 蒼 飛雲
二正面艦隊決戦
25/57

第25話 隠し球

 「全空母ともに索敵機の発進準備が整いました」


 航空参謀の樋端中佐の報告に、第二航空艦隊司令長官の小沢中将は首肯をもって了解の意を伝える。

 インド洋で大暴れした第一艦隊それに第一航空艦隊が索敵に零式水偵を使用したのに対し、二航艦のほうはそのすべてが九七艦攻となっている。

 二航艦に水上機を運用できる艦が重巡「筑摩」と軽巡「川内」の二隻しかなかったからだ。

 それに両艦合わせても六機にしか過ぎなかったから、この程度の数では対潜哨戒や接触維持に充てるのがせいぜいだ。


 索敵に使用する九七艦攻だが、こちらは零戦や九九艦爆とは違って大型爆弾や魚雷の運用が可能な機体で、主力艦を撃沈するには必須と言ってもいい存在だった。

 だから、九七艦攻を索敵に充てれば、その分だけ攻撃力が低下することになる。

 少し前までの帝国海軍であれば、そのことを嫌って索敵機をケチろうとしたことだろう。

 しかし、海軍甲事件で情報の重要性を知った今では、そのようなことを考える者は少数派となっている。


 それと、二航艦だが、こちらはマーシャル沖海戦の時は第五航空戦隊とそれに護衛一個戦隊で編成されていた。

 五航戦は三隻の「翔鶴」型空母から成り、運用する航空機は補用機を含めれば二五〇機余にのぼる。

 護衛のほうは重巡と軽巡がそれぞれ一隻に駆逐艦が八隻の合わせて一〇隻となっていた。


 だが、この陣容で太平洋艦隊を撃滅しつつ、さらにポートモレスビーの基地航空隊まで相手取るのは、戦力的にいささかばかり不安があった。

 特に戦闘機の少なさは致命的とも言えた。

 そこで、軍令部と連合艦隊司令部は一計を案じ、隠し球とも言うべき存在を極秘裏に編入することにした。

 「龍驤」と「瑞鳳」それに「祥鳳」から成る第四航空戦隊だ。

 これら三隻の空母には常用機だけで七二機の零戦と一五機の九七艦攻が搭載されていた。

 このことで、二航艦の戦闘機は一〇八機から一気に一八〇機へと増強された。


 それと、空母の数が三隻から二倍の六隻に増えたこともあり、それに対応するために「秋雲」と「夕雲」の二隻の甲型駆逐艦をその編成に加えている。

 また、二航艦の前方三〇浬には水上打撃部隊の第八艦隊が展開している。

 さらに、それら後方二〇〇浬にはポートモレスビー攻略にあたる陸兵を乗せた輸送船団とその護衛部隊の姿があった。



 第二航空艦隊

 「翔鶴」(零戦三六、九九艦爆一八、九七艦攻一八)

 「瑞鶴」(零戦三六、九九艦爆一八、九七艦攻一八)

 「雲鶴」(零戦三六、九九艦爆一八、九七艦攻一八)

 ※「龍驤」(零戦二四、九七艦攻九)

 ※「瑞鳳」(零戦二四、九七艦攻三)

 ※「祥鳳」(零戦二四、九七艦攻三)

 重巡「筑摩」

 軽巡「川内」

 駆逐艦「朝雲」「山雲」「夏雲」「峯雲」「朝潮」「大潮」「満潮」「荒潮」※「夕雲」※「秋雲」

 ※は臨時編入


 第八艦隊(臨時編成)

 重巡「鳥海」「青葉」「衣笠」「古鷹」「加古」

 駆逐艦「海風」「山風」「江風」「涼風」「村雨」「夕立」「春雨」「五月雨」


 MO攻略部隊

 空母「鳳翔」(九六艦戦八、九六艦攻六)

 重巡「妙高」「羽黒」

 軽巡「夕張」「天龍」「龍田」

 駆逐艦「白露」「時雨」「有明」「夕暮」「漣」「曙」「潮」「睦月」「弥生」「望月」「追風」「朝凪」

 輸送船一二

 他に特設水上機母艦、特設砲艦、特設掃海艇など



 二航艦による索敵だが、こちらは三隻の「翔鶴」型空母からそれぞれ三機。

 「龍驤」から四機、それに「瑞鳳」と「祥鳳」からそれぞれ一機の合わせて一五機。

 さらに三〇分後にも同じ数の九七艦攻が発進することになっている。


 索敵開始命令の発出と同時、旗艦「翔鶴」が回頭、風上へとその舳先を向ける。

 他の五隻の空母もまた同様に舵を切り「翔鶴」に続く。

 風上に艦首を向けた六隻の空母はそのまま直進、発艦速度に向けて加速を開始する。

 十分な速度に達するとともに、索敵の任にあたる九七艦攻が爆音を響かせ飛行甲板を疾走する。

 珊瑚海を舞台にした戦いが今、始まったのだ。

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