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超克の艦隊  作者: 蒼 飛雲
二正面艦隊決戦
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第22話 「大和」咆哮

 先に動いたのは第一艦隊の側だった。

 東洋艦隊の水上打撃部隊、彼らの言うところのB部隊を相手に、命中率の低い長距離砲戦をこのままダラダラと続けていれば、セイロン島に展開する航空機の傘の下に逃げ込まれてしまうかもしれない。

 時間の制約を受けているのは、明らかに第一艦隊の側だ。


 その第一艦隊を指揮する高須長官の命令一下、「大和」と「長門」それに「陸奥」が加速を開始、B部隊との間合いを詰めにかかる。

 彼我の距離が近づくにつれて、双方の狙いも正確になっていく。


 先に命中弾を得たのはB部隊のほうだった。

 「レゾリューション」それに「ラミリーズ」の放った三八センチ砲弾がそれぞれ「大和」を捉える。

 多数の水柱が立ち上る中、「大和」の中央部に二度続けて爆煙が湧き立つ。

 「大和」は基準排水量七八〇〇〇トン、その全長は二八〇メートルを超える世界最大の戦艦だ。

 逆に言えば、世界で最も被弾面積が大きな艦だともいえる。


 命中した二発の三八センチ砲弾だが、それらはいずれも装甲を貫くには至らなかった。

 しかし、二基の八九式連装高角砲を完全破壊し、さらにその周囲にあった機銃群にも甚大な損害を与えた。

 さすがに戦艦の主砲弾を食らえば、いかに「大和」といえども無傷では済まない。


 さらに二発を被弾したところで、「大和」もまた「レゾリューション」に対して待望の夾叉を得る。

 そして、その四〇秒後、一二ある砲門のそのすべてが火を噴いた。


 高須長官らが見守る中、一一本の巨大な水柱が「レゾリューション」を包み込む。

 その水の檻が消えたとき、「レゾリューション」は後方に猛煙をたなびかせながら徐々に速度を落としていった。


 「どうやら、機関部に命中したようですな」


 小林参謀長のつぶやきに首肯しつつ、高須長官は新たな命令を下す。


 「目標変更、敵二番艦」


 高須長官の命令に異を唱える者はいなかった。

 脚を失った戦艦であれば、後でいくらでも料理できる。

 だから、ノーダメージの敵二番艦を叩く。

 なにより、敵二番艦はすでにこちらに対して命中弾を得ているから、なおのこと急いで始末する必要がある。

 いくら「大和」が世界一の防御力を誇っていようとも、三八センチ砲弾による被害が累増すれば、間違いなくやられてしまう。


 敵二番艦への照準をつける間に「大和」が被弾することは無かった。

 敵二番艦もまた、脚の衰えた一番艦を回避するために舵を切らざるを得なかったからだ。

 仕切り直しの後、相手をその散布界に捉えたのはほぼ同時だった。

 敵二番艦は射撃管制システムの優位を、「大和」の側は観測機が使える有利をもって夾叉を得たのだ。


 その後の展開はある意味において常識的とも言えるものだった。

 三万トン級の旧式戦艦と七万トン級の新型戦艦がまともに撃ち合えばどうなるのか。

 そのようなことは海軍軍人でなくてもすぐに分かる。


 敵二番艦、英海軍で言うところの「ラミリーズ」は「大和」に少なくない三八センチ砲弾を浴びせた。

 しかし、一方で自らもまたほぼ同じ数の四六センチ砲弾を食らってしまう。

 これらのうち、「大和」のほうはその分厚い装甲によって三八センチ砲弾からバイタルパートを完全に守りきった。

 逆に、「ラミリーズ」の装甲は四六センチ砲弾を受け止め切れない。

 三八センチ砲弾の七割増しの重量弾のことごとくが「ラミリーズ」を貫き、そして彼女の艦内でその爆発威力を解放していった。


 短時間のうちに「ラミリーズ」を戦闘不能に追いやった「大和」は、やり残した宿題を片付けるかのごとく、這うような速度で避退を図る敵一番艦にその砲門を向けた。

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