今のはなし①
某年某月某日
二人の男女が話していた。
魔王、死神、星の人などと呼ばれる存在との最後の戦いまでもうあと5年を切ったこの時代。
この二人は人類の生存をかけて星の人と戦う者のうちの二人だった。
「俺は力を返すだけですよ。莉奈さんは心配しないでください」男のほうはそう言っていた。
同年代か男のほうが少し年上に見えるけれどこの星ではある程度で体の成長が止まる。見た目と年齢は必ずしも一致しない。莉奈は実際には6つ年上だった。莉奈は悲しそうな顔をしていた。
力を返して元に戻るだけだというけれど、かつては弟のように思ってきた、そして大げんかをして、ようやく和解したけれど前のように気兼ねなくは話せなくなった青年には多くの敵がいた。今は強いから表立っては何もおこらない。
力を返して平穏無事なのか、
その不安定な状況の最大の要因が自分であると自覚していたけれど、それだけに相手の事情によっては自分には手を出すことは難しいこともあると感じていた。
「まぁそれしかないよね。流、あんたならきっと大丈夫だよ」と莉奈は答えた。それでも莉奈は悲しそうな顔をしている。流は穏やかに、何かあきらめたように微笑む。莉奈が悲しそうな顔をした理由の一つは流の決断があきらめによるものだったことが関係あるのだろう。
莉奈の言葉を受けてのほほえみはそういう風に見えた。二人の和解は流のほうが追い詰められたに追い詰められたのちにどうしようもなくなってのものだった。今の最強の存在として祀り上げられる莉奈とのけんかは、流のほうもなまじ5位前後の実力を持っていたことで多くの人を巻き込むことになった。勝つための条件を整えているといって流は決着を先延ばしにしていた。実際には流はまともに戦えば負けることがわかっていたから決着を先延ばしていたといわれている。流は決着を先延ばしにするために様々な思惑に進んで利用されるようにする。
けれども結局流と莉奈が直接戦うことのないまま、周りを巻き込みながら、二人の不仲は1年以上尾を引いて、傷口ばかりが大きくなり、切り替えるための最後の決着もなく、勝っても何も意味がなくなり、流が白旗をあげたのだ。
結果として流ががたくさんのものを失っただけになったというのが多くの人の意見だろう。
流と莉奈共通の知り合いで敵にまわったものは和解しても以前のようにはできないし、味方だったものはもう先延ばしもできなくなって、負けが決まった戦いの決着に巻き込みたくなかったという流の考えがわかっていたけれど、決着の前に突き放された末に、結局流と莉奈が戦わずに和解したという事実はのこった。
莉奈の悲しげな表情に気づいた流は話題を変えるために
「星の人との戦いに勝つ方法がわかりました」といった。
魔王、死神、星の人と呼ばれる存在は、それ以外にも様々な呼ばれ方をし、どう呼ばれるかはその時の流行による。今は星の人と呼ばれ、その存在は30年に1度人々を殺していく。
30年に1度の代表者が魔法を用いた戦いを行う。今まで一度も勝てずに多くの人が殺されてきた。
星の人自身も望んで行っているわけではないことだが、被害は回を増すごとに大きくなっていた。
自分たちの先祖がこの世界にきて10年目から戦いが始まり1000年目の次が最後といわれている。
それは当時この世界での生き方を先祖に教えたという、星の人自身が先祖たちに告げた言葉でもあった。
番外編を先にかいてます。今のやつをちゃんと終わらせて、次のやつも書いてからスタート予定です。数話だけ書く予定