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吉と出るか?はたまた…?

やがて少しお腹が空いてきたように見え、クラウディオがお乳をねだってきたので、あげるようとしつつ、アルバートくんを見ると、アルバートくんも欲しそうに寂しそうに見ているので、クラウディオにアルバートくんにもあげて良いか聞くと、いつもエマからケネスと一緒にお乳を貰っているクラウディオは、笑顔で「あい!」と言ってきたので、二人にあげていた。


すると小さな音でノックが聞こえ、ドアが開けられてしまった。

しまった!鍵を掛けるのを忘れていた!


「ヴィオラ殿、アルバートの着替えとかあった方が良いかと思って持ってきた…あ!」


「す!すみません!少しあっちを向いていて下さい!!!」


アリステア様は真っ赤になって固まってしまった。

私は身動きできずに顔は赤くなっているだろうと思ったけど、一生懸命飲んでいる子たちを止めたら泣くので、私が泣きたくなるのを選ぶしか無かった。


「あ、あの…少しこちらを見ないで頂きたいのですが…。」


もう一度言うと、ようやく我に返ったアルバート様は、背を向けてくれた。


先ずはクラウディオが飲み終えたので、抱え直して背中をトントンと叩いてゲップをさせ、更に飲み終えたアルバートくんを同様にした。

お腹いっぱいになった二人は、ウトウトし始めたので、そのまま寝かせ、私は服を整えた。


「あの…もう大丈夫ですよ…。

クラウディオがお乳を欲しがって、アルバートくんも欲しそうだったので、勝手にあげて良いかとも思ったのですが、あげてしまいました。申し訳ございません。」


アリステア様は、意を決したようにこちらへ向き直り、真っ赤になりながら言った。


「いえあの、こちらこそ図々しく申し訳ないです…。

あのヴィオラ殿は普段、どちらにお住まいなのでしょう?

アルバートには歳の近い友人が居なくて、乳母と乳母の子は居たのですが、少し前に家の事情で郷里へ帰ってしまいまして。

周りはもう乳離れ始めても良いと言うので、新たな乳母は探さずに居たのですが…。

それでも時々でもクラウディオくんと遊ばせてあげられたらと…。」


「申し訳ないです、私達は隣国に住んでおりまして、この国へは主人の兄の結婚式のために戻ってきただけなのです。」


そこまで話していた時でした。

控えめなノックとともに扉が開き、アレが顔を覗かせた。


「ヴィー、ダメだよちゃんと鍵を掛けておかなくては!クラウディオはどうしてる?」


そこまで言って、私が一人では無いことに気が付き、けげんな顔で足を止めた。


「そちらは?」


「アレ、たまたまジャンニのパーティーにおいで下さっていた方のお子さんと出会ってしまって、その子とクラウディオを一緒に遊ばせていたのよ。

クラウディオは、こちらのアリステア様のお子様のアルバートくんと一緒に今、眠ったところよ。」


説明をしていると、アレの後を追ってきたマクラクランの父とクローゼ、そしてレンが入ってきて目を見開き、父が慌てたように膝を折り、挨拶をした。


「アリステア殿下におかれましては…」


「いやいや、堅苦しい挨拶は抜きに!マクラクラン伯爵であったな。なぜそちがここに居る?」


殿下と言う言葉に、私とアレは驚いてしまい、父を見つめた。


「…私の養女がこちらのカーサノヴァ家のアレッサンドロ殿のところへ嫁いでおりまして、この度、アレッサンドロ殿の兄上が結婚ということで、孫の世話を口実に、息子の方の孫たちとともについて参りまして…。

殿下はなぜこのようなところに?」


「あ~私は学生時代からの友人の妹君が結婚するから、息抜きに遊びに来いと言われて、息子を連れて来ているのだ。

息子は侍女に見て貰っていたのだが、一瞬の隙に部屋から逃げ出してしまって、こちらのヴィオラ殿が見てくれていたのだ。

…ということは、ヴィオラ殿がそちの養女なのか?」


「あの…失礼を承知で伺いたいのですが、お話が見えないのですが…。」


何と、アリステア様は、私たちが今、住んでいる国の第二王子でした。

だから父やクローゼ、レンは、顔を知っていた。

でも私や隣国へ行ってから、ひたすら勉強にのみ集中していたアレッサンドロや私は、貴族社会とも無縁でしたし、知りませんでした。

えーと…私、その第二王子に子供達の頭である程度は隠れていたとはいえ、胸…見られちゃったんですけど…。

しかも知らなかったとはいえ、王族にお乳をあげちゃったんですけど…。

もう羞恥心で消えたいのですが…。


「ん?ということは、君たちは今、我が国の王都に住んでいると考えて良いのかな?」


何か、王子の目が輝き始めた…。


「私は王都の我が邸でクローゼとレンと暮らし、ヴィオラはアレッサンドロ殿とクラウディオ、それにカーサノヴァ家の親族の方々と一緒に、王都のカーサノヴァ邸で暮らしておりますが…それが何か?」


「そうか、それは良かった!」


「「「???」」」


「あの…どういう意味かお伺いしても宜しいでしょうか?」


「皆が入ってくる直前、ちょうどヴィオラ殿にお願いしようとしていたのだが、我が子、アルバートは少し可哀想な子でね。母親が居ないのだ。

それでただでさえ寂しい思いをさせている上に、同じ年頃の遊び相手も居なくて。

それを探そうとしても、王家というのが災いして、下心を持って近付く者ばかりで、子供の頃からそんな中に、身を置かせたく無いんだ。

しかしクラウディオくんとは最初から気があったみたいで、ヴィオラ殿の事も気に入ったみたいで、なので毎日とは言わないから、乳母として、一緒に過ごして貰えないか、子供同士を一緒に遊ばせて貰えないかと思ったのだ。」


「はあ?!何を言ってる?!だったらあんたが新しい嫁でも何でも見付けたら良いだろう!」


「アレ!落ち着いて!何も私に妾にとか言っているわけじゃないから!

それに不敬だから!」


父は自国の第二王子だし、オロオロしているし、アレは頭に血が上るし、もうどうしようと思っていると、ケイトのお兄様が突然やってきた。


「ステア!何やってるんだ?侍女が探していたぞ?!」


「ちょうど良かった!お前からも頼んでくれよ!」


結局、何が何でも状態の殿下と、喧嘩腰のアレ、うろたえる父に、子供たちも目を覚まして、流石にこの騒ぎに泣き出し、この夜は話し合う空気でも無いので、翌日にケイトの実家の王都邸へアレと私と父、それにクラウディオとクローゼ、レンも一緒に伺うことになった。

更に話を聞いたアンジェロ様が一緒に行くことに。


何も知らないジャンニとケイトは、そのまま新婚旅行へ出掛けました。

新婚の二人を巻き込みたくないしね…。


到着すると、クラウディオとクローゼ、レンは、アルバート殿下の部屋へ案内され、一緒に遊ぶことになっていました。

二人はすぐにニコニコしながら、遊び始めたらしい。

クローゼとレンは、二人を見守りながら、時々遊ぶ手助けをしてあげていました。


アリステア殿下は、私の顔を見ると、何故か頬を染めて目を見開いて見つめてきた…。


「先日お目にかかった時とはまるで違いますね!

あの時もお美しいと思いましたが、今日はまるで女神のようだ!」


瞬間、アレが私を背後に隠し、殿下を睨み付けました…。

…結婚式の時は、兄対策で、かなりキツイお化粧で化けていたのでした。

考えてみたら、あれで良くアルバート殿下が懐いたな…。

それにアリステア殿下も良く信用したな、私を…。

何てことを考えていたら、アレの導火線に火が付いてしまいました。


「ヴィオラは僕の妻ですよ!!!」


何とかアレを宥めすかせて、話し合いの席に着きました。

ケイトのご両親も同席したのですが、先ずはアリステア殿下の状況を可能な範囲で、改めてお伺いしました。


アルバート殿下のお母様は、産後の肥立ちが悪く、割とすぐに亡くなったらしい。

そしてずっと乳母が見てくれていたのですが、本当のところ、どうしても我が子と同じようにアルバート殿下に接することが出来ず、更には家の事情で郷里へ帰ることになり、辞めてしまったとのことで。

離乳食も始まっていたので、以後、乳母は置かなかったとか。

しかし侍女たちにも、やはり何か違うのか、なかなか懐かず、文字通り単なるお世話係となっているのが、何故か私にはすぐに懐いたらしい。

それで本当は王宮へ上がって欲しいけど、そこまでは言わないから、週に何日かだけでも、クラウディオと遊ばせてやって欲しいのと、私にも一緒に過ごしてやって欲しいということらしい。

因みにアリステア殿下の結婚については、亡くなった妃殿下とは政略結婚で、最後まで心を通わせることは出来ず、また、アルバート殿下もなかなか他の人に懐かない事もあり、少なくともアルバート殿下がもう少し大きくなるまでは、誰かと結婚という気にはなれないらしい。


そしてこちらの状況も聞いて頂いた。

アレと私は、まだ学生であり、平日の日中は、カーサノヴァ家の商会の従業員の妻が、乳母として、その従業員の子供と一緒に見てくれていること。

私は学校の後と休みの日にのみ、子供を見ていること。

学校を止めるつもりは無いこと。


アリステア殿下を良く知り、同情しているケイトのご両親は、毎日では無くても、アルバート殿下のためにも、カーサノヴァ家でアルバート殿下を見てあげられないかと言うし、アレはアリステア殿下を疑わしげに見ているし。

アンジェロ様は、私のことも心配しつつ、ビジネスには広い付き合いが大切と分かっているので、全面的な反対はしないというか、むしろ無理のない範囲なら、助けてあげられないかと言って、アレにムッとされていました。


そこへアリステア殿下が、更なる条件を出してきた。

アリステア殿下は、第一王子の補佐として、主に外交を担っているらしいのですが、アレに卒業後、自分の補佐にならないかと言ってきたのだ。

それはアレ自身にとっても、カーサノヴァ家にとっても、非常に良い話である。

更には何なら私も卒業後、アルバート殿下の侍女長として、王宮へ上がらないかと言い出した。

クラウディオにはそのまま、将来のアルバート殿下の補佐役も視野に、遊び相手になって欲しいと。

それは…私たちが隣国の王家とかなり深く繋がる可能性もあることを示す。

万が一、クラウディオが亡くなったクラウディオのような目に遭いそうになっても、今度はそれは守りやすくなる。

しかし貴族社会に関わることも意味する…。

でも楽しそうに一緒に遊んでいるクラウディオとアルバート殿下を見ているとね…。


「あの…先ずは様子を見てみては如何でしょうか?

帰国してからになりますが、私が学校へ行っている間は、乳母のエマと、エマの子のケネスが一緒に居ることになります。

更には主人の姉のルイーザにも見て貰うことになります。

アルバート殿下と、エマやケネス、ルイーザとの、相性もあります。」


要するにお試しを提案したわけですが。


すると、ドアをノックする音があり、侍女の一人が顔を出した。


「クラウディオ様がお腹が空いたようなのですが、如何致しましょうか?」


「すぐ行きますわ。」


そう言って席を立つと、アレもついてきた。

そして何故か?殿下も…。


部屋へ行くと、クラウディオがグズっていた。

私の姿を見ると、クラウディオがすぐに手を伸ばしてきたので抱き上げ、見ると、アルバート殿下も羨ましそうな寂しそうな目で見つめていた。


「くーちゃん、アーくんも一緒に良い?」


聞くと、笑顔で頷き、アルバート殿下へ手を伸ばした。

するとアルバート殿下も私の膝によじ登ってきたので、両手で二人を抱きかかえた。


ん?これでは服を開けない?と気が付き、アレに二人を抱っこしていてと頼もうとすると、アルバート殿下も居ることに気が付き。


「殿下まで何でついてきているんですか?!殿下は背を向けていて下さい!!!」


そう言って服の前を開き、二人を受け取ると、二人とも嬉しそうに可愛い口に含んできた。

あ~本当に子供は可愛い!


「アレ、見て!見て!凄い可愛いの~!まるで双子みたいだよね!」


「ホントだねぇ~まるで二人とも僕たちの子供っぽくない?

クラウディオは僕に似て、ふわふわの髪だし、殿下はヴィーみたいな綺麗な金髪だし~」


二人で楽しそうに話していると、ドアの近くから殿下の声が。


「あの~私も少しだけ見ても良いかな?」


「「ダメ!」」


「だよね~やっぱり…。」


二人が飲み終えたので、アレがアルバート殿下を抱き上げて、アリステア殿下へ渡した。


「ん?!どうするのだ?!」


「え?!自分の子でしょ?!知らないの?!」


アレがクラウディオを抱き上げて、背中をトントンとして、ゲップをさせた。


「こうするんだよ。」


どうやらアリステア殿下は、子供をゲップさせたことは無かったらしい。

するとアルバート殿下はウトウトし始めるも、殿下の抱き方では眠れないらしく、ぐずり始めた。


「あ~もうダメだよ~!」


アレが同じくウトウトし始めたクラウディオを私に渡し、アルバート殿下を抱き上げて、軽くポンポンと背を叩きながら、揺らした。

するとアルバート殿下も瞼を閉じ始め。


「そちは上手いなぁ~まるでそなたがアルの父親のようだ…。」


「…努力しなくちゃ父親にだって母親にだってなれませんよ…。」


「…そうだよな…ところで…子供たちの事とは別として、私の補佐にならないか?

当面は学業の合間で良いから…。

本当はダンも連れて行きたかったんだ…でもこの国を離れる気は無いからと断られた…。」


ダンというのはケイトの二人いる兄の下のお兄様で、隣国に留学していて殿下と出会い、殿下と知らずに親しくなり、知った後も普通の友達として接してくれている、大切な友人らしいです。

それで卒業後、殿下の補佐にと打診するも、断られてしまったらしいです。

どうやら普段、にこやかに王族を演じているけど、実はアルバート殿下同様に、本当は人見知りが激しいらしく、なかなか親しい友人というのも作れなかったらしいです。

アレは子供の頃から要領は人並み外れて良いけど、気に入らなければ頑として譲らないし媚も売らないので、私についての要注意人物認定されてしまった殿下には、容赦が無いのでした。

しかしそれが殿下には好ましかったようで…。


「いやいやいや!補佐とか普通は自国の人間から選ぶでしょ?!

しかも僕は隣国どころか、この国においても平民ですよ!

一介の商人です!今はまだ学生ですが…。」


「身分が問題なのだったら、爵位を与えれば良いだけの話だろ?

流石に伯爵とかは、簡単ではないが、男爵だったら全く問題無いし、子爵でも何とかなるだろう…。

そうだな、帰国したらまずは爵位を何とかしよう…。

それに私は兄上の補佐として、主は外交を担っている。

カーサノヴァ家の者だったら、私の補佐として最適じゃないか。

一体何が問題なのだ???」


結局、話し合いは平行線で、根負けしたアレと、アルバート殿下に同情した私たちが、先ずは帰国後からお試しでという事になりました。


王都滞在中も、アルバート殿下にとっても、今は近くにケネスが居ないクラウディオにとっても、お互いが遊び相手に丁度良いという事で、何度かアリステア殿下とアルバート殿下が、カーサノヴァ邸を訪ねてくることになりました。


それにカーサノヴァのご両親やルイーザ、アンジェロ様は、この話にどちらかというと賛成で、殿下たちが訪れるのを寧ろ喜んでいるようでもありました。


でも…隣国の王家と親しくなるのが、どう転ぶのかが全く見えません。

貴族社会はきっと隣国でもあまり宜しいものではない気がするのですよね…。

どうしたら良いのだろう…。

こんにちは。恵葉めぐみ ようと申します。


遊び半分で短編を書いたことは、何回かあったのですが、今年初めてそれなりの長さのものを書きました。

かなり手探りで書いているので、突っ込みどころもあるかと思いますが、生温い目で読んでいただければ。

そして一人でも興味深いと思っていただける方が居れば嬉しいです。

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