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それぞれの思い

前世では世渡りも下手で、あまり良い人生を送れず、疲れ切った挙げ句に運転ミスの車に突っ込まれて死んでしまった主人公。

もう生まれ変わりたくも無かったのに、異世界転生してしまい。

せめて今度こそ平穏無事な人生をと考えていたのに、何故か今生でも苦難ばかり。

帰宅後、私は孫以外の家族を居間に集めた。

そしてカーサ・ノヴァ家での話について、先ずは説明した。


ルイーザ嬢に、クラウディオを彼らから奪い取ろうと話しているところを聞かれてしまったことに始まり、彼らの逆鱗に触れた事。

そして彼らはもう、子供の曾祖母である妻や、大叔父・大叔母である我が息子夫婦に会わせるつもりはない事、更に強引な手に出るようだったらあちらも黙ってはいないと言われたことも。


案の定、妻は激怒した。


「あなた!隣国の貴族とはいえ、別に爵位も高くなく、領地さえも持たず、こちらの国では一介の商人ごとき者たちにそんな事を言わせて黙っていたのですか?!」


「確かに彼らはあちらの国でも別に上位貴族ではないし、こちらの国では商人ではあるが…彼らはただの会貴族、一介の商人ではないのだよ…。

あちらの国でも、この国でも、上位貴族にさえも牙を向けることが出来るだけの力を持っているんだ…。

彼らを敵に回したら、我が家はこの国の貴族社会ではやっていけないんだ…。」


「何を仰っているの!商人は別に彼らだけではないじゃないですか!彼らが居なくて困る貴族なんて居ないでしょ!そんな大きな顔をする商人は、我が国から追い出せば良いのです!」


妻は…良くいる貴族の奥方同様に、社会とか分かっていないとは思っていたが、それでもこんなに物事を知らないとは思いもしなかった。

元々はよくある貴族の政略結婚だった妻だが、それでも上手くやってきたつもりだった。

しかし今、考えると、私の思う上手くやってきたというのは、面倒だからと妻の言いなりになって、妻の好き勝手にやらせた事で、妻が私に何も文句を言わなかっただけだったのだろう。


「…まず…この家の跡取りだが、今回、カーサノヴァ家を怒らせた原因を作ったお前には、二つから選択をしてくれ。

私と離縁してこの家を出ていくか、私と別居して、領地の外れにある別邸で暮らすか…。

今までお前の好きなようにさせてきた。

その結果、大事な娘を不幸に追いやり、可愛い孫さえも助ける事もせずにこんな早くに死なせてしまった。

更にはその孫の忘れ形見とまで遠く離れてしまう結果になった。

私はもうこれ以上、お前と一緒に暮らすつもりは無いし、お前の好き勝手をさせる気も無い。

別居なら最低限の生活は見よう…でも今までのような贅沢を許す気は無い。

離縁なら最低限の金は用意するが、後は完全に縁を切るからそのつもりで。」


さて次は息子一家だ…。


「お前たち夫婦については、孫も居るし、あの子には何の罪も無いので、猶予期間をやろう。

今まで通り、この邸や領地の邸で暮らして良い。

しかし次に何かあったら、跡取りからは外し、出て行ってもらう。」


「お待ちください!お義父様!跡取りから外すって、でも他に居ないではないですか!」


嫁が食い下がってきた。

確かに実子は息子が残っているだけだ。

だが跡取りは実子でなくてはいけないなんてことは無い。

親戚を探せば幾らでもいる。

それに私が幾つまで元気に暮らせるかだが、それ次第では、息子ではなく、孫に継がせても良いわけだ。


「別に跡取りは実子でなくてはいけないというわけではない。

私の従兄弟のところには、出来の良い息子たちが何人も居る。

その中から養子にしても良い。

跡取りは自分たちだけだと思ったら大間違いだ。」


息子は自分の嫁が言い出すのを止めもせずに項垂れていたが、そういう事なのだ。

まあでも息子の事なかれ主義は、私に似てしまったのかもしれない。

それでも私はもう取り返しのつかない一歩手前まできてしまって、ようやく間違いに気が付いたが、息子にはその前に気が付いてもらいたいものだ。

息子が可愛くないわけでは決してない。

寧ろ亡くなった娘よりも甘やかしてきただろうと思う…何せ跡取りのつもりだったし。

でもだからこそ、息子には私のような過ちは犯してほしくないと思う。


話し合いの末、カーサ・ノヴァ家へ誠意を見せるためにも、妻には10日以内にどうするのか決めるように言い渡し、更にその三日後には出ていくように言った。

離縁でも別居でも、いずれにしても妻には出て行ってもらうことになる。

正直言って、今回の騒動が決定的になり、私は疲れてしまった。

出来れば私もどこか、静かな場所で、一人静かに過ごしたい。

しかし領主という立場上、先の事をはっきり決めずに引きこもるわけにもいかない。

自業自得とはいえ、本当に疲れてしまった。



【クローゼの思い】


数か月前に、殆ど会った事の無かった従兄弟が亡くなったと聞かされた。

幼い頃に、数回会ったことがあるだけだが、優しいお兄さんだった事は覚えている。


お兄さんの家族はどうしたのかとか、お兄さんはどうして僕たちと一緒に暮らせないのかとか、そういったことは誰に聞いても教えてもらえなかった。

優しいお兄さんだったので、僕は好きだったのだけど…。


そしてそのお兄さんが亡くなり、祖父母や両親も、ショックを受けたのか、オロオロするばかりだったので、王都にいる誰かに連絡をという時に、僕が行くと名乗り出た。

僕はまだ子供ではあるけど、でもあと一年ほどで王都の学園に入る予定で、だからそのくらいの事は出来ると思った。

それにどうせ一人で行かせてもらえるわけではなく、従者がついてくるだろうし。

行先は王都の学園の寮でもあったため、初めて学園の中へ入った。

本当はゆっくり見たかったけど、それどころではない事も分かっていたので、言われていたとおりに学園の受付で祖父からの手紙と、もう一人知らない男性からの手紙を渡した。


案内された部屋で待つと、亡くなったお兄さんに少し似ているけど、でも髪や目の色が全く違うお兄さんがやってきた。

お兄さんは僕の顔を見るなり血相を変えた。

僕が誰かは知らないけど、でも僕の顔を見て、亡くなったお兄さんの関係者という事は分かったらしい。

僕と亡くなったお兄さんは、少し似ているから。


それからは慌ただしい日が多くなった。


よく分からないけど、あの優しかったお兄さんにはお嫁さんが居て、お腹には赤ちゃんが居て。

でもお兄さんが亡くなってしまったので、僕が王都から連れてきたお兄さんと結婚する事になったと言われた。

僕の従兄弟が亡くなったばかりなのに、何でそんなすぐに別の人と結婚するの?悲しくないの?と思ったけど、やはりうちの両親も祖父母も、誰も教えてはくれなかった。


やがて赤ちゃんが生まれた。

赤ちゃんは、僕に似ていて、とても可愛かった。

早く生まれすぎたとかで、大きくなるまではあまり会えないと言われ、本当に毎日は会えなかったけど。

でも僕の顔を見ると、笑ってくれた。

不思議な事に、僕の従兄弟のお嫁さんよりも、僕よりも、僕が王都から連れてきたお兄さんに懐いているようだった。

あのお兄さんは、誰なのだろう?


そしてある日、祖父母と両親が、何か話し合うから、僕は部屋へ行っているように言われたけど、行ったふりをしてこっそり話を盗み聞きしていた。

すると、祖母や僕の両親は、赤ちゃんを取り上げて、僕の従兄弟のお嫁さんと、僕が王都から連れてきたお兄さんを追い出す話をし始めた。

え?!赤ちゃんはお母さんと一緒にいるものでしょ。

何を言っているの?僕の両親たちは?と疑問に思った。

暫くすると、祖母が二階で叫んだ。

その後の祖父母たちの話を盗み聞きしていると、どうやら盗み聞きしていたのは僕だけではなかったらしく、僕の従兄弟のお嫁さんと、王都から来たお兄さんたちは、赤ちゃんを取られないように、赤ちゃんを連れて、逃げたらしい。

そりゃそうだよね…子供の僕が考えたって、祖父母や僕の両親が酷いって分かるから。


その翌日、祖父が謝りに行ったけど、すっかり意気消沈して帰ってきた。

もう僕たちは、赤ちゃんに会わせてもらえないらしい…。

僕、あの子の事、弟が出来たみたいで嬉しかったのに…。


あれから僕の家は、すっかり暗く、ギスギスした雰囲気になってしまった。

お嫁さんやお兄さん、赤ちゃんがいた頃は、明るくて穏やかで楽しかったのにな…。

お兄さんや、赤ちゃんに会いに行っちゃだめかな…。

大人に聞いたらダメって言うってなんとなく分かっている。

だから僕はこっそり行けないかと考えた。

それにはどこに行けば会えるのかとか、考えなくては…。

大人の事情は僕にはわからない。

でも僕には僕の思いだってあるんだ。

僕には兄弟も居なくて、従兄弟もたった一人だったのに、あまり会えなくて…。

しかもそのたった一人の従兄弟も居なくなってしまった。

せめてあの子に会いたいって思ってはダメなのかな…。

初めまして。恵葉と申します。

遊び半分で短編を書いたことは何回かあるのですが、まともな長さのものを書いたことは無く、初めて挑戦しております。

手探りで書いておりますので、非常に不慣れですが、誰かに面白いと思って頂ける事があれば嬉しいなと思います。


連日の投稿になる日もあれば、暫し間が開く日もあります。

実は皆様のいいねがモチベーションにもなっていたりします。

いいねと思っていただけたら、ポチしていただけると嬉しいです。

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