波乱の始まり
前世で世渡りが下手なのか何なのか、あまり良い人生を送れず、疲れ切った主人公は、最後も何か悪いことをしたわけでも無く、運転をミスした車に突っ込まれて、死んでしまいました。
よく「生まれ変わったら」って言う人も居るけど、もう生まれ変わりたくも無いと思っていたのに、何故か異世界転生してしまい。
だったら今度こそは、平穏無事な人生を送ろうとあがく主人公ヴィカです。
所が現世でも、親から育児放棄のように一人だけ領地に放置され、ほぼ使用人たちに育てられたりと、平穏とは異なる人生を歩み始め。
やがて王都の学院へ入り、良くも悪くも交友関係も広がり。
そして幼い日の思い出の人と再会します。
が、その時、ヴィカには婚約を約束した相手がいて、平穏な人生とは離れていく主人公です。
最後には平穏な人生を歩めるようになると良いのですが…。
アレは無事に隣国の学園に合格し、留学する事になりました。
目標は1年間で卒業の単位を取り終える事…若しくは2年分の単位を取り終える事。
でもまずは留学するまでのおよそ3ヶ月間は、クラウディオ様を含めた皆で過ごします。
この世界には、クリスマスもお正月もありません。
でも冬のお祭りはあるので、今はそれを楽しみに皆で計画を立てています。
あちこちの領地で冬のお祭りが催されるのですが、中でも有名なのは、カイル様のアゴスティネッリ領の領都の冬のお祭りです。
この冬のお祭りには心惹かれ、宿泊は宿を取る事にして、皆で行こうという事になりました。
カイル様は、おじい様とおばあ様がお住まいになられるお邸があるから、そちらで皆で泊まらないかと言ってくださったのですが、ご高齢のお二人に気を使わせてしまっても申し訳ないので、宿をという事に。
今回は、クラウディオ様もご一緒です。
ジャンニとアレ、ルイーザと私、そして保護者としてアンジェロ様が行くことになりました。
しかし出発の一週間前になって、カイル様が突然、領都の本邸に泊まってくれないかと言い出しました。
何でも、遠縁の方が、娘を連れてやってきたいのだが、宿が空いていないので、邸に泊めてくれと言ってきたらしいのです。“
しかし遠縁と言っても実はあまり仲の良い家ではなく、娘たちとも気が合わないのだそうです。
おまけにその遠縁は、男爵家で、伯爵家子息であるカイル様とそのお兄様に、娘たちを嫁がせようと、とにかくしつこいのだそうです。
それもあって、絶対に泊めたくはない。
なので断る理由として、ジャンニたちの実家である、大きな紹介の重要人物、アンジェロ様とルイーザ様御一行と、更にカイル様のご学友である侯爵家のクラウディオ様がお泊りになるからと断り、更に宿なら伯爵家で手配するからと言ったのだそうです。
宿はルイーザと私で一部屋、ジャンニとアレで一部屋、そしてアンジェロ様とクラウディオ様が各一部屋の4部屋確保していたので、その男爵家ご一行が泊まるにも足りる部屋数です。
そしてカイル様のご家族も、夏に別荘へお伺いさせていただいた時に、アンジェロ様が来ると聞いて、是非!ご一緒にと言ったのを、カイル様が必死で説得して止めたというのもあり、アンジェロ様が邸に滞在してくれるなら、大歓迎ということで。
私たちはカーサ・ノヴァ家で出してくださった大きな馬車2台で向かいました…何故かカイル様もご一緒に。
カイル様のご家族は、先に別で向かったのですが、カイル様は、ルイーザと過ごすチャンスなので、一緒に行きたいと申しまして。
馬車はジャンニとカイル様とルイーザ、アンジェロ様とクラウディオ様とアレと私となりました。
「ねえ…何で僕、クラウディオと隣なの…。」
アレが早速不満げに言いました。
「アレ…年齢も身分も上のディアに対して、呼び捨ては失礼だよ…。」
私が注意すると拗ねる可能性も高かったのですが、注意しました。
すると大人なディアが笑って許してくれました。
「良いよ、呼び捨てで…ライバルに敬称なんて付けたくないでしょ?
その代わり僕もアレって呼ばせてもらうよ!」
「え!?何で愛称呼び?!だったら僕もディアって呼ぶよ!」
「…それはダメ…それ、女の子の愛称だし、それを許すのはヴィカだけだよ。
それに君もヴィカの事を君だけの愛称呼びしているでしょ…それ、僕が嫉妬しないとでも思った?
君が僕の事をディアって呼ぶなら、僕はヴィカの事をヴィーって呼ぶよ…。」
「…それはヤダ…じゃあクラウディオって呼ぶので我慢する…。」
まるで子供みたいな舌戦が繰り広げられているのを、アンジェロ様は微笑んで見ておりました…微笑ましいのか???
しかも馬車の中では、ディアとアレによる、私についての知識をひけらかす?という妙な舌戦に突入してしまい、それはもう私には居心地の悪いものでした。
ディアが私の幼少期の事を
「いつも『ディアの髪は綺麗ね』って髪を梳かしてくれて、可愛くリボンとかで結わえてくれていたんだ」
と言えば、アレは
「僕はヴィカがうちに泊まると、髪をまとめてあげたりしているよ!」
と言い出すし…ある意味ではこの二人は似ているのかもしれないと思いました。
本当は、皆、一緒に育っていたら、最初からみんなで仲良くなれたのかな…なんて思ったりもしました。
ふとディアが寂しそうな顔をして、アレに言いました。
「君は兄弟と仲も良さそうで羨ましいね…。」
「君の家は、随分、長い事、色々続いているみたいだね…まだ落ち着きそうに無いの?」
色々情報通なアンジェロ様が、ディアに尋ねました。
「…僕はそもそも家とか興味無いのに、別に兄たちの誰かが継げば良いと思っているのに、周りがそれを許さなくて、父親も息子たちを競わせて、強いものが継げなんて事を公言しちゃっているし…。
競い合いじゃないんですよね…もはや…殺し合いですから…。
うちなんて別に王家でも無ければ公爵家でも無いのに、何でこんなに争わなくちゃいけないのか…。
本当に出来る事なら僕は、ヴィカと一緒にどこか静かな場所へ逃げたいです…。」
アレも流石に殺し合いなんて物騒な言葉には、驚いていました。
そうなのよね…家族間の殺し合いに巻き込まれているディアと、家族から人として見られてさえも居ない私…だからこそ二人で支えあって、過ごしていたんだよね…。
「最近は大丈夫なの?」
アンジェロ様がディアに聞きました。
「一応、学生のうちは、手は出さないみたいなルールがあるみたいなんです…学業の邪魔だけは家の為にならないから禁止みたいな…でもどうですかね…油断は出来ないです。」
「まあ…この旅とか、我が家に来るときとかくらいは、学生らしく楽しみなさい。」
本当に楽しんでほしいな…私の家じゃないけど。
私はカーサ・ノヴァ家の方々に本当に救われたから。
ディアにはそんな場所が無かったんだなと思うと、本当に苦しいです。
途中、お昼休憩や、何回かの休みを挟み、朝に王都を出発した私たちは、午後のお茶の時間になる頃に、ようやく到着しました。
到着し、馬車を降りると、先に停まっていた馬車に、カイル様が不機嫌そうな顔をしました。
「あれ、例の遠縁の家のだよ…何で来ているんだ?!」
そんな事を話していると、玄関からオレンジの髪を思い切り縦巻きロールにした少女と、同じくオレンジの髪を爆発させたようなカーリーヘアに大きなリボンカチューシャを付けた少女が飛び出してきました。
「カイル様!お待ちしておりましたわ!」
「この度のお祭り、とても楽しみにしておりましたわ!」
口々にカイル様にまとわり付く少女たち…この子たちがカイル様とお兄様狙いの子たちか…。
「折角来てくれたのに、邸に泊めてあげられずにごめんね~とても重要な友人たちを連れてきているので、余裕が無いんだよ。粗相があってもいけないしね。」
カイル様が顔を引き攣らせながら言いました。
が!敵もさるもの!
「そんな粗相だなんて!使用人の少々の不出来には、目を瞑れますわ!私たち!
それにお友達こそ街のお宿の方が気兼ねなくて宜しいのでは?」
かなり厚かましい事を言ってきました。
あれ?確か家格、この子たちの方がカイル様より下だったよね?
なのに何で伯爵家の使用人についてまで偉そうなの?
凄いなぁ~私には無理だ!なんて思いながらやり取りを見ておりました。
すると玄関から、男性が飛び出してきました。
カイル様のお兄様のデイル様でした。
「ルイーザ嬢にアンジェロ殿!良くいらしてくださいました!
こんなところで寒いですよね!
どうぞ中へ案内しますから!ルドヴィカ嬢も夏以来だね!良く来てくれたね!
え~と後は?」
カイル様の事を全く無視して聞かれましたので、私がご紹介させていただきました。
「こちらは私の幼馴染でご学友の、ブラッドフィールド侯爵家のクラウディオ様でいらっしゃいます。
そしてこちらはルイーザの弟たちです。
カイル様のご学友でもあるジャンニ、そしてルイーザの末の弟のアレッサンドロです。
この度もお世話になります。」
と挨拶をすると、デイル様は大喜びで挨拶をしていました。
ジャンニとアレには
「では将来、僕がルイーザ嬢と一緒になれば、君たちは僕の弟になるわけだね!
今からでも兄と呼んでくれて構わないよ!」
と笑顔で言った瞬間、それまでオレンジちゃんたちの相手をしていたカイル様が怒鳴り込んできました。
「何を言っているんだよ!ルイーザ嬢は兄上となんて御免だよ!図々しいにも程があるよ!
だから嫌なんだ!うちの家族は!!!」
でもルイーザとアンジェロ様は、面白そうに笑っておりました。
兄弟で奪い合いに心当たりのあるアレは、顔を引き攣らせておりましたが。
そして不満げにルイーザを見つめるオレンジちゃんたち…。
終いにはデイル様もカイル様も、オレンジちゃんたちを無視して、奪い合うようにして私たちを案内してくださいました。
流石にお屋敷はとても広く、何と、一人一人にお部屋をご用意くださってしまいまして、申し訳ないやら…。
しかも各部屋に部屋付きの侍女が居て、何かあれば彼女にと言われました。
田舎で専属侍女も無しに育ち、今は基本は自分でという寮生活の私には、侍女とかちょっと難しいです…。
初日はまずはゆっくり過ごし、夕ご飯の際に、皆でご両親にご挨拶をすることになりました。
散歩好きな私は、お庭とか散歩したかったのですが、まだご両親にご紹介もされていないうちに、勝手に歩き回るのもねと思い、どうしようかなとバルコニーへ出ました。
部屋は、アンジェロ様、ルイーザ、ジャンニ、アレ、私でクラウディオ様となっておりました。
するとクラウディオ様もバルコニーに出ていて。
暇だねという話から、じゃあアレの部屋にでも行こうかという事になりました。
二人で話していたら、アレが僻むでしょうし、男女が二人で部屋にいるよりも、三人の方が健全だろうと。
それで二人でアレの部屋のドアをノックすると、アレは寝ているのか、返事がありませんでした。
まあ…疲れたよね、長距離移動は…。
どうしようかと話していると、デイル様が通りかかりまして、だったら一緒にお茶でもと、お誘いくださいました。
そして案内されたサロンには、アゴスティネッリ伯爵ご夫妻がいらっしゃいまして。
先にご紹介いただいてしまいました。
私とカーサ・ノヴァ家の関係を聞かれまして、カーサ・ノヴァ家の本邸が私の実家のフォンターナ・ドーロ子爵領にある事と、ルイーザたちの祖母に子爵領の家がとてもお世話になっていて、子供のころからカーサ・ノヴァ家の皆様にお世話になっている事をお話ししました。
それを顔を引き攣らせながら聞いていたデイル様…。
こっそり言われました。
「うちの親、人が好いだけの人たちじゃないから気を付けて!
きっと今頃は、心の中で、君の価値も上がっているから…。
第一のターゲットはルイーザ嬢だけど、次のターゲットは君になっていると思うよ…。」
ちょっと私にはよく意味が分かりません…。
何でカーサ・ノヴァ家の一員でもない私がターゲットになるんだ???
何はともあれ、折角ご紹介頂いたので、時間のあるときに、庭を散歩させて頂いて良いかと許可を頂きました。
伯爵ご夫妻が部屋へ引き上げたのを機に、私もクラウディオと散歩に行く事にしました。
デイル様も一緒にご案内して下さると言うので、三人で。
玄関ホールでコートを羽織り、外へ出ました。
冬なので、花は無いのですが、あちこちに素敵な天使像とか様々な銅像と、それらに調和するように雪像が置かれていて、まるで美術館です。
そう言えば前世でフィレンツェへ行った時に、市庁舎前だったか、様々な彫刻のレプリカ等が沢山置かれていて、無料で普段からあんなに芸術品に接することが出来るとか、凄いなイタリアってと思いましたが、アゴスティネッリ邸も負けず劣らずだなと思いました。
滞在中は、何回も散策させて頂こう。
この後、一旦部屋へ戻り、少し休んで、晩御飯となりました。
この夜は、伯爵ご夫妻やデイル様、そして私達のみの和やかな雰囲気の晩餐となりました。
しかし伯爵様から少し残念なお話がありました。
翌日の夜は、急遽、伯爵家の関係の家の方々を呼んでの夜会を開くことになり、私達も出て欲しいと。
お断りするという選択肢は無いので、仕方が無いのですが。
カイル様はかなり反対したそうなのですが、あの押し掛けオレンジちゃん一家に加え、他にも近隣に済む関係のあるどこぞの伯爵家からも祭りだからと言われて、断り切れなかったそうです。
それでもカイル様は、カイル様の関係の人達、つまり私達は欠席の方向へ持っていこうとしたらしいのですが、アンジェロ様とクラウディオ様がどうやらターゲットで、彼等を犠牲にも出来なかったと言うわけです。
そんなわけで翌日の午前中は街へ行き、夜会に必要なものを準備する事になりました。
街はお祭り騒ぎで、様々な屋台なども並び、本当はそちらで遊びたかったのですが、横目で見ながらカイル様に連れられて、先ずは服飾店へ。
新たに作る時間は無いので、既製のもので選び、サイズ直しを大至急やってもらって、夜会に間に合うようにアゴスティネッリ邸へ届けてもらう事に。
靴もそのお店で用意し、次は宝飾店へ。
ドレスに合うように…もうほぼカイル様にお任せで選んで頂きました。
アゴスティネッリ家の都合で夜会ということで、何と!アゴスティネッリ伯爵が全てご用意下さいました。
この中で唯一の貧乏子爵家、しかも親から放置されて育った私としては、申し訳ない限りです。
それにしても夜会よりものんびりお祭りを散策したかったなぁ。
まあ仕方ない。
私は完全に単なるオマケなので、壁の花…いや、壁のシミになろう…。
午後は準備です。
入浴に始まり、アゴスティネッリ家の侍女さまたちに磨かれまくりました。
そんな間にサイズ直しされたドレスも届けられ。
髪とメイクはもう侍女さまたちの好きにしていただきました。
申し訳ないので、最低限でとお伝えしたのですが、それではカイル様の顔に泥を塗ることになると、凄く気合いを入れられてしまいました。
気合いはルイーザに入れてあげて欲しい。
彼女は将来、商会の顔になるかもしれないのだし。
なのでルイーザには目一杯美しく華になって頂き、私は侍女と間違われない程度に頑張って頂くことになりました。
初めまして。恵葉と申します。
遊び半分で短編を書いたことは何回かあるのですが、まともな長さのものを書いたことは無く、初めて挑戦しております。
手探りで書いておりますので、非常に不慣れですが、誰かに面白いと思って頂ける事があれば嬉しいなと思います。




