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フォンターナ・ドーロ子爵領へ…そして出会い

いよいよ子爵領での行動が始まります。

領地での新たな出会い…。


数日後、王都のタウンハウスに母と兄を残し、私は父とともに、領地へ帰った。


フォンターナ・ドーロ子爵領は、山ばかりの小さな領地で、何もないけど、景色だけは綺麗なところです。

領主邸は、後ろを高い山に囲まれた、街から少し高い場所にあり、見晴らしは良い。

…いや…見晴らし良いのか???邸はちょっと高い所にあるのだけれど、眼下に街や川とか田畑が見えるけど…向かい側も山なのだが…。

つまりは谷間にあるというか…360度、見渡せば山!山!山!…。

まあ山の上に登れば見晴らしは良い…はず…。


あ、前世で中学生の頃に、学校行事で山へ登り…というか私の郷里、遠足は大半が山登りなんですよね、学校行事は山!山!山!そして地元の山の頂上周辺を歩きながら、遠くの山間に見えた集落を、隣の市かなと思い込んで、同級生に「あそこに見えるのって、隣の市かなぁ?!」と言いましたら、何と、私の住む市でした。


そのくらいに山だらけなのですよ。


現世での領地も、そんな感じで山だらけ…。



そして領地では、ついに家庭教師による淑女教育?が始まりました。


家庭教師のオルカ先生は、とても優しい先生で、何となく魂が、前世の幼稚園の先生に似ている気がしました。

よく前世の漫画とかで異世界転生ものとかでは、教育とかは、前世の方が高度とか聞きますが、淑女とかそんな教育だけは別ですね。

現世の方が厳しいです。

7歳でもダンスとか歩き方とかマナーとか。

前世なんて、幼稚園ではお遊戯会で、ペンギンの仮装をして「ぺ!ぺ!ペンギンさん!ぼくたちぺんぎんさん!」と手足をパタパタさせて踊っていたというか、歩いていただけだったし。

小学校へ入ってからも、盆踊りとかそんな類のばかりで。

そうそう!フォークダンスなるものもあったけど、非常に緩いものでした。

この世界の紳士淑女のダンスは、そんな優しいものじゃない。

というかあれね!前世の社交ダンス!

一歩間違えたらスポーツじゃないかというくらい大変なやつですよ。

この時代のお貴族様、それを幼少期から学ぶってホント凄いですよね。



それはともかく、私の最初のミッションは、勉強の合間を縫って、未来のための情報収集です。

それには街へ潜入しなくてはいけない。

この世界で、平民として平穏無事に暮らすにはどうしたら良いか。

単なる平民として…別に裕福に暮らしたいわけではないけど、貧民になって、今日を生きるのに精いっぱいという事態にはなりたくない。

だからどうすれば良いのか、この世界の情報が欲しい。


でもねぇ…“お嬢様”が一人でのこのこと街を歩くことはさせてもらえないし、出来たとしても、そこからは様々な見るべき事は見えてはこないわけです。

なのであくまでもその辺の子供の一人として、潜入しなくてはならない。

更には最終的には、様々な街の噂話とかを耳に出来るように、街の人と親しくならなければいけない。


それには!お嬢様には見えず、普通のその辺の子供に見える衣装が必要!

実は私、前世の記憶から、洋服とかある程度は自分で作れてしまいます。

前世では私、デザイン系の学校を卒業し、最初の就職先だけは、某DC系アパレルの企画部でしたので。


若しくは持っている服を改造しても良いけど、でも素材がね…どう見ても裕福な家の子仕様の素材なのよね…改造程度では、良い所のお嬢ちゃんだとバレてしまう。

お金持ちの子供ってすぐにバレて、ヘタすれば誘拐されて売り飛ばされて終わるよね。

そんな人生は望んでいない。

今生は平穏無事な人生をって決めたんです!


さてどうしようかな…道具(着るもの)を手に入れるには、誰か大人を一人、協力者にするか…。

う~ん…オルカ先生は、もしも前世の幼稚園の先生であれば、信用できるかも。

あの先生は、私とお別れする日、泣いてくれたし、凄く可愛がってくれた記憶があります。

遠足の時とか、何故かいつも先生の隣でお弁当を食べていました。

良い先生だったなぁ。


それでも暫くは様子を見ることにしました。

オルカ先生が信用できるようだったら、今後、時々頼らせてもらおう…。

親兄弟が頼れなくて、他人をってのも、どうかと思うけど、仕方ない。


先ずは街へ出る準備は、ハンナとオルカを巻き込もう。

勿論、迷惑は掛けない程度に。


先ずはいずれにしても、父の許可を得ないと街へとか、そんな簡単ではない。

まだ小さい私には、どうしても付き添いが必要だし…。

私には比較的甘い、父に頼むことにした。


「お父さま、領民の方々を知るためにも、何回か街へ視察に行きたいのですが。」


が、父からはあっさりと


「お前は別に跡取りじゃないし、まだ小さいんだから、そんな必要は無いよ。」


と言われてしまいました。

我が家は特に母が、「お前は跡取りじゃないんだから」的な発言が多かったなぁ。

前世でも「お前はどうせ出ていくんだから」って、凄い何回も言われた…だったら子供を二人も作るなよとも思ったけどね…二番目は辛いです。


しかしそれで諦めるわけにいかない。

父は母よりはマシ…多少は私のことも見てくれている。

だからめげずに訴えました。


「でもお父さま、行けるのはこの歳の今だけですよ。

もう少し大きくなれば、王都の学院へ入らなければいけません。

王都のような大きな街では、ここよりも治安も難しいでしょうから、更に行けなくなります。

それに私は跡取りでは無いけど、どこへお嫁に行っても、領地や領民のこととか分かっていた方が、役に立てます。

そしてこっそり行きたいと思っているので、ハンナに頼んで、ハンナの娘さんのお下がりの服とか貸して頂いて、オルカに親戚の子のふりをして連れて行ってもらうのは如何ですか?」


そこまで言ったら、お父さまも許してくれました。


というわけで、ハンナとオルカに頼みました。

父の許可を取り付けていた事もあり、ハンナもオルカも快く了承してくれました。

ハンナは、今後も山を駆け回ったりとか出来るように、娘さんのお下がりの服を、何枚かプレゼントしてくれました。


そしてついに街へ行ける日になりました。

その日は午後のお勉強は、オルカと一緒に街へのお出掛けとなりました。


裕福ではない家の子を装うために、ハンナの娘さんが着倒した上に、色もおとなしめな薄茶色の無地のワンピースを着て出掛けました。

髪もサラサラな金髪が目立たないように、ポニーテールにした上に、三つ編みにして。


次は街での協力者を作らなくてはいけない。

街での協力者を作る手段は…どこかの大人と親しくなれれば一番良いが、そうでなければ歳の近そうな子供と友達になれると良いんだけどなぁ。


良い出会いがあると良いなぁ。


期待しながら出掛けたんですよ。

出掛けたんですけどね…それこそスキップしそうな勢いで!

でも…世の中そんなに甘くは無かったです。


その日、邸からは街の外れまで馬車で送ってもらいました。

お嬢様という事がバレないように、街はずれからは徒歩で潜入しました。

正方形のブロックみたいな石を並べた感じの石畳の道は、流石、街という感じです。

邸の周辺は、普通に土が丸見えの道なので。

面白いなと思ったのは、王都では見かけなかったのですが、領の街では、建物と建物の間に、ロープが渡されていて、洗濯物が干されていました。

流石に下着まで干すのはどうなのよ?!と思いましたが。

道を歩いていて、オジサンのパンツとか落ちてきたら、凄くイヤ…。


そんな道を過ぎて、中心部の方へ向かうと、お店が増えてきました。

広場まで出ると、広場の中心部には、前世でローマの街の橋で見かけたような天使像があり、広場を囲うようにして、教会と、様々なお店やカフェ、食堂が並んでおりました。

広場へは四方向からは入れるようになっておりました。


色々なお店を眺めたり、散策は楽しかった!

しかし!まず子供をそんなに見かけなかった!

子供たちってどこに居るの?!何をやっているの???


色々なお店を覗きながら、チーズのお店やカフェ、それに屋台のチーズ屋さんや、屋台のフレッシュジュース屋さんへも行きました。

チーズ、美味しかったですよ~。

広場に面したところにある、大きなチーズ屋さんでは、試食もさせてくれました。

美味しかった!本当に!

広場の屋台のチーズ屋さんでは、唐辛子入りのチーズとかもあって、本当に美味しかった!

ちょっと子供が好む味ではないけど、前世では大人だった私には、

「良く冷えた白ワインが進みそう!ビールでも良い!!!」

とか思ってしまいました。

まあ…今は子供だから、良く冷えた白ワインもビールも駄目ですけどね。

フレッシュジュースは…口に合わなかったです。

お店のお兄さんが、ザクロジュースをお勧めしてきて、前世で私は、ザクロを生で食べた事とか、ザクロジュースとか経験が無かったので、好奇心で飲んでみました。

文字通りのしぼりたて!目の前で絞ってくれるの!

が!!!全然美味しくなかった…う~ん…まあ良い勉強になりました。


まあこれを足掛かりにじゃないけど、時々、街へ足を延ばして、知り合いとか作りたいって思うし、出来れば子供の友達を作りたいなぁ~。



しかし何と!私がオルカと街を散策している間に、ついには父まで王都へ行ってしまいました…領の屋敷には、使用人と私だけを残して…もしかして私、父からも忘れられられた?!

まあね…何となく家族揃っていた時の、母や兄を見ていて、私はどうでも良い子なんだろうなと気が付いていました。

そういえば私、前世でもそうだったし…。


前世では、こういうのを長男教と呼び、ご長男様は崇め奉られて、常に親や場合によってはそのほかの親族からも、優先されるのです。

ご長男様以外は、おまけでしかない。

勿論、家庭にもよるし、地域によってその度合いが異なる場合もあるのですが。

でも現世では、下手するとご長男以外の兄弟は、本人の意思関係なく、駒として政略結婚に使われるため、ある意味では前世よりも過酷かも。


そんなある日、再び父が領の邸へ戻ってきました。

しかし今度は私と同じくらいの年の女の子を連れて。

父に呼ばれて客間へ行き、その子を視界に入れた瞬間、

(え?!お父様の隠し子?!愛人の子???)

なんて考えていると、父から紹介されました。


諸事情により我が家で暫く預かる事になった、遠縁の子で、名前はクラウディア、私と同じ歳という。

夏の間だけになるか、年単位での滞在になるのかは分からないが、常に一緒に居て、お相手をするようにと。

そして淑女教育の始まっていた私でしたが、クラウディアを守るために、剣術や護身術、果ては何故か男装出来るようにと男子の礼儀作法まで二人で学ぶ羽目になりました。


クラウディアに、何で男装が必要なのかとか、何故に護身術がとか聞いてみましたが、良くは分からないけど、クラウディアの故郷で、彼女が攫われそうになったり、殺されそうになった事が何回かあり、そもそも匿うために連れてこられたことと、この先もまた逃げる必要が出来たりしたときのために、常日頃から、様々な知識を身に着けておくように言われたとの事でした。

まあ…私は元々木登り好きだったり、お転婆が過ぎるほどだったので良いのだけれど。


そんな事もあり、元々考えていたほどには、家を抜け出し街へ行って、あれやこれやと企む時間はあまり無いほど忙しくなってしまいました。

しかも父は、クラウディアを置いたら、再びさっさと王都へ帰ってしまいましたし。


それでも私は、同じ歳の友達が出来て、嬉しかったです。

何せ街で友達を作る事、失敗していたし…(苦笑)


クラウディアは、最初こそはあまり話さず、私が話しかけても、なかなか会話が続かなかったのですが、一緒に過ごすうちに、すっかり仲良くなりました。

クラウディアは緩いウェーブの掛かった栗毛に少しだけ釣り目の金色の瞳の大人びた子でした。


流石に街まで行く時間はなかなか出来なかったけれど、少しでも時間があると、二人で木登りをしたり、邸のすぐ裏にある山を散策したりしていました。


その日は、先生の都合で、いつもよりも早くレッスンも終わり、私たちはいつもよりも少し長く遊ぶ時間が出来ました。


なので折角だからと、邸の裏の山をいつもよりも奥まで散策する事に。

いつもは、木々の隙間から邸が見える範囲しか遊び場にしていなかったのですが、折角だから冒険をしようと企みました。


「冒険を目指すからには、道なき道を進まなくてはね!」


とわけの分からない事を言い出した私。

クラウディアもにこにこと笑いながら


「そうだね!誰にも知られていない、秘密の場所を見つけたいね!」


と乗ってくれました。

後から思うと、(うん、誰かストッパーが必要だったね…暴走していたね、私たち…)と。

普段は人一人通れるくらいの山道を歩く事しかなかったのですが、少なくとも邸が見える範囲の山道は、幼少期から遊んでいて、覚えてしまっていました。

それでは新たな発見は無いという事で、山道を逸れて山を登っていきました。


途中、私たちの背丈を超えるほどの高さのススキのような草が生い茂った中を突き進んだその先に、急に開けて木登りに丁度良い木があるのを見付けて登ったり、急勾配な山の斜面を、生えている草を掴みながらよじ登ったり、およそ貴族令嬢らしくない事をしながら、最終目的地も無く、進んでいきました。


そして今度はススキのような草や低木が生い茂っている中をかき分けて進んだ先に、急に大きな岩があるのを発見しました。

岩の上はよじ登ると、幼い私たち二人が寝転がれるくらいの大きさで、凹凸も少なく、青空も見えて、気持ちの良い場所でした。

大きな岩の上に寝転がっていると、とても静かで、小鳥のさえずりと、風で木立がざわめく音しか聞こえず、本当に気持ち良かったのです。


私たちは、気が付けばそのまま眠ってしまいました。



こんにちは。恵葉です。

初めてのそれなりの長さの作品へのチャレンジで、悪戦苦闘しながら書いております。

まだまだペースも掴めずなので、更新も定期的には出来ませんが、いつかどなたかが読んで楽しいと思っていただけるような作品に出来たらと思います。

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