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サラサラのアイスブルーの髪を揺らし、こちらへと足早にかけてくるのは――レイン!
これがクロ……人間のレインなのね……!
凛とした眉に、長い睫毛、そしてその瞳はクロの時と同じ。
サファイアのように煌めている。
鼻がとても高く、シャープな輪郭に、血色のいい唇をしていた。
スラリとした長身に長い手足。
水色のシャツに、コバルトブルーのセットアップ、純白のマント。
腰には立派な剣が見えている。
すごいわ!
絵に描いたような王子様。
クラウンを頭にちょこんと乗せたくなる。
「チェルシー、僕が誰だか分かる?」
ああ、なんて甘い声なのかしら。
いつものクロの声ではない。
でもこの口調はクロだ!
「うん。クロ……レインなのね」
「そうだよ。ようやくこの姿でチェルシーに会えた」
向き合ったレインは、クロの時とはまったく違い、背が高く、その顔を見上げることになる。
「チェルシー、触れてもいい?」
「? え、ええ、勿論」
遠慮がちに伸ばされたレインの手が、私の頬に触れた。
細く長い指には、桜貝のような整った爪も見える。
いつも触れていたクロの肉球は、ぽかぽかだった。
でも今、私の頬に触れているレインの指は、心地よくひんやりしている。
「チェルシーの瞳に、僕がちゃんと映っている。もう、もふもふじゃない……」
その瞬間、そのサファイアの瞳がウルウルと震える。
それを見ると、私の鼻の奥もツンとなり、涙がせりあがってきた。
泣きそうになるのを堪えようと、少し冗談めかして私は、レインの髪について言及する。
「もふもふではないけど、レインの髪はサラサラとして、触り心地が良さそうよ」
「僕に触れて、チェルシー」
甘々なレインの声だけど、どこかクロを感じさせる。
自然と手を伸ばし、その髪に触れていた。
その瞬間、レインとの距離が近くなり、涼やかな香りを感じている。
クロの時は、香ばしい匂いがしていたのに。
これは香水かしら。とてもさっぱりしていい香りだわ。
触れたレインの髪は、想像通りだ。
サラサラとして、指の間からアイスブルーの髪が、こぼれ落ちていく。
レインが私の手を掴み、手の平に自身の顔をこすりつけるようにする様子は……。
「なんだかクロみたい!」
「チェルシーがいつも額の辺りをこうやって撫でてくれるのが、気持ち良かった」
「……人間になったのに、まだ気持ちいいの?」
すると私の手の平に、自身の顔を押し当てたまま、まるで流し目をするかのように、こちらを見る。見慣れたサファイアの瞳なのに、心臓がドクンと大きく反応していた。
「うん。チェルシーにだったら、どこに触れられても嬉しいし、気持ちいいよ」
とても素敵な人間の姿で、とんでもなく甘々で、もふもふな猫みたいなことを言うのは……反則では!
「……人間というのは、随分とまどろっこしいのですね。再会を喜び、ハグをするのかと思ったのですが」
セフィラスの指摘に、ギクッとしてしまう。
ハグこそしていないものの、レインはまだ私の手を掴んだままだった。
それを見られた……。
それだけではないわ!
今、レインとなんだかふわふわした会話をしている様子を、セフィラスや他のエルフの騎士にも見られていたのかと思うと……。
猛烈に恥ずかしくなる!!!!!
そこで視界の端に捉えた人物に、心臓が大きく反応した。
そんな私の様子に、レインも手を離し、視線をそちらへと向けた。
「! お父様!」
エルフの騎士に連れられ、父親がこちらへと歩いて来た。
「チェルシー!」
本日二度目となる、父親との再会を喜ぶハグをしていた。
「お父様、怪我はないですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
「父さんがクローゼットに閉じ込められている間に、なんだかいろいろあったようだが……。そちらの貴公子は……どこかの王族の方かな?」
父親がレインを見て、キョトンとしている。
「話せば長くなるわ」
「ではわたしの館へ皆さん、どうぞ。……サール王太子と男爵令嬢、お二人はどうされますか?」
セフィラスに問われたサール王太子は、ルナシスタの肩を抱き寄せ、快活な笑顔になる。
「私は馬車を待たせている上に、村に軍の兵士が待機しているので、このまま村へ向かいます。……バークモンド伯爵。また王都へ戻ったら、話をしましょう。チェルシー、レイン殿下、お幸せに」
こうしてサール王太子達は森を離れ、レインと父親と私は、セフィラスと共に、森の中へ戻った。
























































