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断罪終了後の悪役令嬢はもふもふを愛でる~ざまぁするつもりはないのですが~  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
【物語の始まり】

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「ほらっ、さっさと降りろ!」


乱暴に馬車から下ろされ、運悪く一人の令嬢は石に躓く。

ラベンダー色の美しいドレスを着ているのに、転んだ瞬間、繊細なレースはビリビリと破れてしまう。しかも膝まで擦りむいたようで、痛みで動けない間にも、彼女を下ろした馬車と兵士を乗せた馬は去っていく。


一人、森の手前に残されたのは、チェルシー・バークモンド。

バークモンド伯爵家のご令嬢である。


彼女は珍しい紫色の瞳の持ち主。そして小柄だが、メリハリが効いた体をしており、その髪は艶々ロング。しかもこれまたこの世界では珍しい、巻き髪ではなく、ストレートのホワイトブロンドなのだ。


そして彼女はただのご令嬢ではない。

乙女ゲーム『シュガータイムLove』の悪役令嬢なのである。

だがしかし!

彼女は日本人としてその乙女ゲームを楽しんでいた記憶が、覚醒していなかった。

このまま覚醒せずに終わるのかと思いきや!


伯爵令嬢としておとしやかに生きていれば、激痛体験とは限りなく無縁である。

だが今、彼女は乱暴な扱いを受け、大変痛い思いをした。

その結果。

まさかの断罪終了後に、前世の記憶が覚醒するのである。


そうまさにこの瞬間に。


「痛い……。なんでこんな目に遭わなければならないの? 悪役令嬢だからって、こんなの、ひど過ぎるわ」


ちょっ待って。悪役令嬢って何の事かしら?


「チェルシー、ようやく思い出したようだね。そう、君はボクを助け、乙女ゲーム『シュガータイムLove』の世界に転生してしまったんだ。ボクのこと、覚えている? クロだよ」


すぐそばにいるのは、チェルシーの飼い猫であり、名前はクロなどではない。大好きなロマンス小説に登場するアランという名前で……いや、クロ。


「クロ! あなた、あの突然天気が急変した時、うちの庭の木のそばで震えていた子猫よね? 数日前から見かけていたから、『クロ』って呼んで、鰹節をのせた猫まんまをあげていたわ……って、え、猫まんま!?」


「落ち着いて、チェルシー。君は突然起きた竜巻からボクを守ろうとしてくれた。家の中にいればよかったのに、庭へ飛び出して、ボクを助けようとしてくれたんだ。君がボクを抱き上げた時、トタン屋根が飛んできて、それは君の頭に直撃した」


クロの言葉に怪我などしていないはずなのに、後頭部が痛み、そしてクロの言う景色が脳裏に浮かんでいる。


「ボクを助け、君が天に召されるなんてひどすぎる。だからボクはもふもふの神様に祈った。彼女を助けてくださいって。そうしたら君のスウェットに入っていたスマホが突然輝いた。君はそのスマホで『シュガータイムLove』という乙女ゲームで遊んでいただろう? そのゲームの世界に君の魂は導かれたんだよ」


「つまりは……異世界ファンタジーへ転生した……わけね。どうしてクロまで一緒に?」


「それは……ボクが君のそばにいたいと願ったから、かな?」


「せっかく助けたのに……!」


するとクロは「えへへ」と笑う。

クロは長毛種と短毛種を両親に持つのだろう。

毛は全体的にもふもふなのに、手足はすらりと長い。

もふもふと言えば、可愛いにゃんこ。だがクロはもふもふなのに、キリッとしていた。


「待って。状況はなんとなく分かったわ。乙女ゲームの世界に転生しているということは。でもなぜ猫であるクロと会話できているのかしら? ゲームの世界観に多少のファンタジーはあったけど、まさかそのせいなのかしら!?」

お読みいただきありがとうございます!

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