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86話 懐中電灯
「さて、そろそろ動こうか」
そう言ってライラさんは立ち上がる。
そして山の中へ入って行こうとした所で立ち止まった。
「しまった…光源になるような物を持ってきて無かったな…」
日も沈んでしまい、辺りは真っ暗だった。
今いる場所は月の光が当たるのでいいが、山の中に入っていけば木々に遮られてしまうので光源としては頼りないだろう。
「ネコミちゃんは何か持ってない?」
「あ、それならちょうどいいものがあります」
私はリュックから懐中電灯を取り出した。
電源をつけると眩しいぐらいの光が辺りを照らす。
「これで大丈夫ですか?」
「また謎な物が出てきたな…十分すぎるぐらいだが、もう少し暗くはできないかな?」
「やってみます」
パワー調整用のつまみを回して明るさを調整する。
ランタンよりはまだ明るいとは思うが、眩しくはないぐらいの程々の明るさになった。
「よし、それじゃあそれで進路を照らしてくれないか?」
「了解です」
ライラさんが進む先を後ろから照らす。
こういうとき普通は先頭の人が持つものな気がするが…。