62話 第一村人発見
「お、見えてきた」
熊さんと別れて1時間ほど飛んだところで、川の先に人里が見えてきた。
規模は思ったより小さく、民家のようなサイズ感の建物が十数件あるのと、周りに農地が広がっていた。さながら昔ながらの農村といった様相だ。
「とりあえず近くに着陸して歩いて行くかな。前回は飛んで行ったせいで門番に追い払われたっぽいし」
大体村まで歩いて5分程の辺りに着陸して歩いて行くことにした。前回は着陸地点が遠すぎて歩くのが大変だったので、結構近付けた形だ。もしかしたら見ている人がいるかもしれないが。
着陸して少し歩いたところで、農地に肥料を蒔いている人がいた。見た目にして60代ぐらいのおじさんのように見える。ちょうどいいので声をかけてみることにした。
「こんにちはー」
「こんにちは。旅の人かね?」
おじさんは物腰柔らかな雰囲気で、作業の手を止めて返事を返してくれた。
「そんな感じですねー。今晩泊まれるところを探しているのですが、この先の村にそういう場所はありますか?」
「それならここから村に入ってすぐ右手の赤い屋根の建物が宿になっとるよ」
「ありがとうございます。行ってみます」
感謝を伝え、村に向かって歩き出す。
一先ず教わった赤い屋根の宿屋に向かうことにした。
「それにしても、ちゃんと話が出来てよかった…」
この世界に来て、今度こそ初めてのちゃんとした人との会話だったが、特に違和感無く話せて一安心だった。
また、私の様子を見て旅の人と聞いてきた辺り、この世界ではこんな風に旅をするような人達がいるようだ。
自分もそういった旅人の1人であると振る舞っておけばこの世界に馴染めるだろうか。
異世界から来た来訪者と言っても頭がおかしいと思われるのがオチな気がするので、旅人という形で誤魔化して活動をしていこうと思う。